ただ5周すれば良いわけじゃない?! 5ラウンドシステムの真髄に迫る【後編】

最終更新日:2023年12月21日

今回お話を伺ったのは、三重大学教育学部附属中学校の𠮷水慶太先生です。

𠮷水先生は、今年度Apple Distinguished Educator Class of 2023のメンバーに選出され、2023年6月末にはオーストラリアでのInstituteにも参加されています。Apple Distinguished Educator(ADE)とは、Appleのテクノロジーを活用して教育現場の変革に努める教育者であり、Appleが認定した教育分野のイノベーターです。前回の記事ではICTでの取り組みをご紹介いたしましたが、今回は、導入校が全国的に増えている注目の英語教授法「5ラウンドシステム」についてお話を伺いました。前編では詳しい実践方法をお届けしましたが、後編では導入の経緯や5ラウンドでの文法指導方法についてお伺いしました。

「やらない理由はない」導入の経緯

―――どんなきっかけで導入されたのですか?

(𠮷水)5ラウンドシステム考案者の西村先生の講演会に参加したことがきっかけでした。勉強のためにと軽い気持ちで参加したのですが、講演会やその後の懇親会で直接詳しくお話を伺ったところ、むしろ「やらない理由はないな」と思ったのです。特に「自分の思いや考えを自分の言葉で語る生徒を育成したい」という点に共感しかありませんでした。

年度末が近く、次年度は1年生の担当になる予定だったので、タイミングがちょうど良かったことにも背中を押されました。導入の準備段階で疑問点も出てきましたが、西村先生が親身に相談に乗ってくださり、無事に実施へとこぎつけました。

―――導入はスムーズでしたか?

(𠮷水)初めのうちは試行錯誤でした。生徒に何度もリスニングをさせたくても、当時は教科書の音源を聞けるのが学校だけで、生徒は家ではできなかったのです。まだタブレットは普及しておらず、付属CDは高くてほとんどの生徒は買わない、買ってもCDプレイヤーがない家庭も多かった。そこで、自信のない生徒向けに学校で放課後リスニング会を企画したところ、100人くらい集まりまして。教室に収まらず、体育館の床に座ってリスニングさせたこともありました。

使いながら学ぶ文法指導

―――5ラウンドシステムではあまり文法指導をするイメージがありませんが、文法指導はどのようにされていますか?

(𠮷水)文法指導は必要ですしやりますが、言いたいことを伝える方法の一つにすぎません。「厳守必須なものでもなく、知っていると便利だから使ってみよう」という感覚で教えています。文法を扱うときも「今日は “be going to” を教えるよ」のような文法主体では行いません。「登場人物のTinaがこう言っているのは、なぜ?」のように、実際に使っている状況を主体にして、「こんな場面でこんな風に言われているからこの意味になっている」が分かる流れで指導します

第二言語習得論的にも、人間の言語習得ルートに近い学び方が良いと思うのですよね。英語を使っているうちに理解は深まりますし、従来の英語教育では「すべてを覚えてから使わせる」でしたが、「使いながら学ぶ」を大切にしています。

中学生対象の教科書では、説明を簡単にするために “be going to” も “will” も未来を表すとの説明が一般的ですが、実際は意味や使う場面が違うのですよね。だからこそ、“be going to” と “will” という異なる言い方になりますし、前述の生徒は使い分けました。このような教科書の文法説明では分かりにくいところを少し嚙み砕いて、認知言語学のコア理論なども盛り込みつつ『英語科通信』にまとめ、生徒に配付することもあります

―――生徒がモチベーション高く取り組めるように意識されていることはございますか?

(𠮷水)教材や課題は、現実味がある内容にしています。生徒の現実に起こりうることをした方が、本気で取り組みますし、実際に対応する場面になったときに事前の経験として役立ちますよね。例えば、日本在住歴の長いALTに、「寿司」や「京都」といった定型的な日本の紹介をするより、ALTの海外に暮らす友達5人くらいにビデオレターで趣味や知りたいことを語ってもらい、「彼らにどんなことを伝えればいいかな?」といった課題にすれば、生徒は自分ならどの人の要望にどんな回答ができるか本気で考えますし、各自のリアルな回答を聞くことも楽しみになります。

生徒のモチベーションを下げないことも重要です。細かな文法チェックやマイナス評価をしていては、間違いを恐れて話せなくなってしまいます。3単現のsが抜けてしまっても「これは習得しにくいという研究結果が出ていて、ネイティブすら忘れることもあるから仕方がない」と知っていれば、ネガティブな指導が減りますし、間違いを恐れずに英語を使うことによって、生徒の間違いが減ってきました。

逆に良いところは拾い上げてしっかり褒めます。前述の、未来表現を使い分けた生徒を褒めて追加質問しつつ解説すると、周囲の生徒の理解も深まりました。その後にペアワークをしたところ、何人かの生徒は意識して未来表現の使い分けにチャレンジしていました。プラス評価は、本人だけでなく周囲にも良い波及効果を生むと思います。

(撮影されている𠮷水先生との関係性が伝わってくるような、素敵な表情の生徒さん)

―――お話全体を通して、生徒の皆さんたちが、授業を受けていたら自然に熱心に取り組んでいて、いつの間にか英語ができるようになってきているような印象を受けました。

(𠮷水)現任校着任時から受け持った生徒が3年目になり、そのような生徒が増えてきていてとても嬉しいです。目標としている「自律的な学習者」を育てられるように、今後もより良い授業を追求していきたいと思います。

(取材・構成:小林慧子/記事作成:松本亜紀)

𠮷水先生の前回の取材記事:Apple Distinguished Educatorが進める! ICTを活用した言語活動

参考:みつむらweb magazine『ラウンドシステムで英語の学力アップ!』

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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