受験指導で「個別最適な学び」を実現する、 ギャップ分析のフレームワーク

最終更新日:2025年2月14日

千葉県内有数の進学実績を誇る昭和学院秀英中学校・高等学校。学校として「生徒の自己実現を支える教育」を掲げるなか、ギャップ分析的なアプローチで教育理念を実現されている藤田 義人先生にお話を伺いました。

まるで数学?! (x, y, z)の3軸から英語力分析

――先生が育成したい生徒さん像を教えてください

自分で自分の学習をマネジメントできる生徒です。英語であれば、自分に必要な英語力を定義し、現在の自分の英語力と比較し、ギャップを解決するアプローチを検討・実行できるような生徒を育てたい。そのために、普段から英語力の構成要素についての私の認識を伝えています。

――先生は英語力の構成要素をどのように定義されているのでしょうか

中高の英語指導においては、「技能・領域」「レベル」「単位」の3軸で定義しています。1つめの軸である「技能・領域」は、リスニング、リーディング、スピーキング(やりとり、発表)、ライティングのどれに該当するかです。2つめの軸である「レベル」はCEFR(A1~C2)、英検、GTEC、TEAP、共通テスト、副教材などの難易度を指します。最後の軸である「単位」は文字、語、句、節、文、段落、文章などの長さの程度を示します。

この3軸を組み合わせることによって、英語力のなかでも「どの部分か」が共通言語化され、具体的な改善アプローチを検討可能になります。たとえば “リーディング、A2、段落”、“ライティング、英検2級、文章”のように、英語の何がどのレベルでどういう単位で理解できていないのかを具体的な課題として認識できるわけですね。

実際はさらに「技能・領域」にも文法、語彙、発音という下位技能があるので、その点も細かく分けて考えていきます。

たとえば、語彙学習において多くの生徒が目指している「英単語を見て日本語訳が思い浮かぶ」状態だけでは、リーディングには効果的であってもリスニング、スピーキング、ライティングには不足しますよね。

このように、とにかく1つひとつの学習行動の目的を細かく意識して取り組んでいこうという話はよく生徒にしています。

分析ツールを生徒が使いこなす → 教員には具体的なアドバイスが求められる

――非常に論理的かつ精緻なアプローチですね。一方で分析を細かくするほど指導の時間がかかりそうですが、過度の負担なく生徒1人ひとりのレベルを細かく把握する方法はありますか

育成したい生徒像で述べたように、教員がベタ付きで分析するというより、この分析手法を生徒自身に使いこなしてもらうイメージをもっています。本校では、所属学年以外の授業も担当することがあり、私はほぼ毎年のように助っ人で高3を担当しています。そういう際に、4月の頭に先のフレームワークの説明をします。それだけでも生徒は「いままでより効率的に勉強できそう」なんていいながら自分たちで活用してくれますね。

また、授業においては単元の冒頭でターゲットとなる(x,y,z)について説明をしています。「今週から来週にかけては教科書を使ってこういうことをします。それによってここの技能はカバーできるけど、それ以外のところは自分で考えて家庭学習で補いなさいよ」という声掛けですね。授業でできることは限定的・断片的であることを伝え、各々が自分の弱点やバランスを考えて勉強するように仕向けます。

それ以外には、教科担任面接によるサポートも定期的に行っています。あらかじめ面談用紙に志望大学や英語学習に関することなどを書かせておいて、それをもとに休み時間に1人あたり1~2分間でのやりとりを繰り返すんですね。そうすると3軸をベースに「こんなところで困っています」や「ここを目標にやっています」といった共通認識を持てるので、それを繰り返して成長を促しています。面談では教員側も試されていると思います。その生徒が志望する大学や学部のレベルに行くにはこれぐらいの英語力が必要だから、逆算してこの教材でこういう学習をしましょうという助言ができなければならないので。

――弱点や課題が把握できたあとに、具体的にはどのような学習を指示されるのでしょうか

先のフレームワークに対応するよう、練習内容も細かく分けて考えていきます。たとえばリスニングテストで成果をあげるためには以下の4つの力がそれぞれ必要と生徒に伝えます。高校3年生だと演習ばかりで「4.テキスト形式に対応する力」に偏った学習になりがちですが、それではいけないと。

「1.英語を聞き取る力」を伸ばしたいのであれば、音声的特徴(米、英、豪)への対応、連結・脱落・音変化への対応、スピードへの対応が必要です。また、「2.聞き取った英語を理解する力」ではリーディングと同様に語彙力、文法力、文の働き(主張、説明、譲歩など)の知識が求められます。

そこで、たとえば1の力を伸ばしたいとすれば、そのトレーニング方法として音読、シャドーイング、オーバーラッピング、ディクテーションを紹介します。とくに音読は、長く取り組んでいると練習自体が目的になってしまう生徒がでてくるため、なぜ音読すべきかのメリットあらためて考えさせることがモチベーション維持に重要です。そのうえで最終的にはテストの点数が上がったり、聞けなかった英語が聞き取れるようになる成長実感を積み重ねていってもらうことが大切ですね。

音読指導で大切なこと

――先生は「英語教育」(大修館書店)でも音読活動の取り組みについての実践報告をされていました。音読指導で他に気を付けているところがあれば教えてください

音読を10分でもすると、聴けなかった英文がクリアに聴こえるような気になるのですが、その状態から落ちるのも早いんですよ。そのため、授業中の時間を使って継続的に取り組ませることを意識しています。その際、授業中なのでクラス全体で取り組むのですが、練習内容は生徒によって異なるため、カオスな状況ではあります(笑)。教科書の本文全体を音読するのか、特定のパラグラフを繰り返し音読するのか、語句だけ音読するのかという単位は生徒が決めるわけですね。

もう1つ意識しているのは、必ず見本の音声を意識しながら音読することです。リスニングテストで成果をあげるには、テストで流れるようなモデル発音を真似できなくてはなりません。とくに連結や脱落は、真似しないとどうしようもないと思っています。そこを我流で音読しても効果はありませんよね。

――今後、先生がさらに充実させていきたい指導の方向性があれば教えてください

音読に関しては、成果を定量測定できていない点が課題と思っています。聴けるようになった、発音できるようになったという感覚が生徒にはあるんですけど、数字で見えると生徒にも教員にもさらにいいですよね。そういった点では、今後アプリの活用なども考えていきたいと思っています。

(取材・編集:小林慧子 / 構成・記事作成:小泉純)

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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