英語は楽しい!難しくない!英語の授業を通し自律した学習者を育てる方法とは

最終更新日:2025年1月21日

英語を「難しいもの」と捉えず、むしろ「ずっと携わっていたい」と思える学びの場を提供する――。同志社中学校・高等学校の皆川先生は、自ら学び、行動できる「自律した学習者」の育成を目指し、独自の授業スタイルを展開しています。

生徒中心型の授業や、英語を使う楽しさを実感させるプロジェクト型学習など、多彩なアプローチで生徒たちを惹きつけるその実践には、明日からの授業に取り入れたいヒントが満載です。皆川先生の教育哲学とその具体的な授業事例から、英語教育の新たな可能性を探ります。

英語を難しく捉えず、ずっと英語に携わっていてほしい

―――自律した学習者を育てるために、どのような授業を実践していますか?

(皆川)私は現在同志社中学校に所属しており、English Bを教えています。本校では、英語の授業を3つに分けています。

English Bを担当する中で、教材から哲学的な対話、いわゆる社会科の授業のように社会問題について考える授業を行っています。英語力の側面から言えば、発信力、表現力を育成する授業です。

―――具体的な授業の流れと内容を教えてください

(皆川)大抵の場合、下記の通りです。

①の単語学習では、1日10個ずつ学び、学期末には200個程度の単語を理解、読み書きできるようにしています。ここでは、QuizletやBlooketを使い、楽しく単語を覚えられるように工夫しています。

③の読解練習では、ジグソー法などを取り入れ、生徒同士が教え合い学び合う協働学習をすることが多いです。

④のプロジェクト学習は、学期に1~2個のプロジェクトを組んでいるので、その遂行に向かって準備をする時間です。

やはり教員としては、45分間の授業中、生徒には最初から最後まで集中してほしいですし、寝てほしくもありません。そのため、上記のタスクを10~15分程度でどんどん切り替えていくことで、生徒の興味を持たせ続けるように工夫しています。

また、英語の授業って、文法だったり語彙だったりを学ぶような、いわゆる「英語の勉強」と捉えられがちです。私はできるだけそれを取り払いたい。楽しく学んでほしいし、学習を継続してほしいし、難しく捉えないでほしい。さらには、できればずっと英語に携わってほしい――そうなってもらえるようなアクティビティやプロジェクトを用意するよう心がけています。

―――プロジェクトではどのようなことをするのでしょうか?

(皆川)まず、プロジェクトのコンセプトは習ったことを使って、それが伝わるんだという、「伝える経験」をしてもらうことです。学期に1~2個プロジェクトを組むのですが、その遂行を最終目的にして、授業の中でいろいろ準備をしていきます。

具体的なプロジェクトは、たとえばある時は、ドラえもんの秘密道具の中から1つ好きなものを選んで、ディベートしてもらいました。自分が選んだ秘密道具のいい点などを書き、グループでディベートをして、最終的にクラスで1人優勝者を決めて、図書券をあげました。とても好評でしたね。

普段の授業だと、「English onlyで話さなくちゃだめだよ」と言っても、なかなかすべて英語で話してくれません。そこに課題意識があったのですが、このようなディベートで「日本語を使ったらイエローカード」とゲーム要素を取り入れルールを作ると、面白味もあって英語オンリーで話してくれます。

またある時は、「クリスマスカードプロジェクト」と題し、自分の尊敬する人にクリスマスカードを贈りました。288人の生徒全員が思い思いに、直近習った関係代名詞を使って文章を書きました。

送り先は、海外のプロサッカーチームや海外セレブです。288人中20人弱は返事があったのには私も生徒も驚きました。ジョニー・デップやJ・K・ローリング、ビリー・アイリッシュといったそうそうたる方たちから返ってきました。ビリー・アイリッシュにいたっては、なんと直筆サイン入りだったのですよ。

またほかの時には、教材にアマゾンの環境変化によって動植物が絶滅の危険に晒されているという問題が掲載されていたので、「これを解決するためにはどうすれば良いか」を各々で考えてもらいました。しかし、中学生にとっては難しく、私も指導に苦労しました。

―――最近、このような「答えのない問い」の指導法に悩まれている先生方が多いのですが、皆川先生はどのようにアプローチされていますか?

(皆川)もちろん予備知識を入れた上で授業に臨みますが、上回ってくる生徒がいるのは事実です。私は「もうその生徒も先生にしちゃおう!」としてしまいます。笑

知識のある生徒が私では持ち合わせていない内容の発言をしたら、それを元に授業を修正していくなどして、どんどん乗りかかっていきますね。

―――授業を修正していくと聞くと大変そうですね

(皆川)大変ですが、私は生徒たちをリスペクトしたいのです。本校は、習熟度別や特定科目特化のコース制ではなく、みんな一律同じコースです。そのため、英語が得意な生徒もいれば苦手な生徒もいます。そのような中で、語彙学習や読解学習でのグループワークで教え合っているのです。お互い教え合うことで、教える側も教えられる側も学べるような、生徒一人ひとりの良さを尊重できるような授業を心がけています。

マーク・ザッカーバーグに憧れた自律した学習者

―――とくに印象に残っている自律した学習者に育たれた卒業生はいらっしゃいますか?

(皆川)マーク・ザッカーバーグに影響を受けて、「社会に貢献するために、起業したい」と言った生徒がとくに印象に残っています。彼が中学生だった約6年前に担任をして英語も教えていました。

本校には、一学期間カナダやアメリカ、オーストラリアやニュージーランドに行けるターム留学制度があります。一度も海外に行ったことのなかった彼が応募してきた時は、教員一同「大丈夫か?」となりました。しかし彼は、「マーク・ザッカーバーグのように起業して社会の役に立ちたい。それを実現する一歩として、海外に行きたいんです」と心配する教員の前で熱弁したのです。その熱量を見て「なんとかなるのではないか」と思い直し、送り出しました。とても成長して帰ってきて、「行かせてよかったな」と心底思ったのを覚えています。

高校に進学すると、中学にいる私の元へときどき相談に来てくれました。本校は内部進学で同志社大学に進学する生徒が多いのですが、彼は将来の夢を叶えるためにICUに行きたがっていたのです。受験英語の勉強法や、スケジュールのやりくりなど、アドバイスできることはしていました。その結果、無事ICUに合格し、来年留学するようです。

普通に過ごしていれば同志社大学に進学できるのに、それに甘んじることなく、自分の目標を成し遂げるために自分をコントロールする姿を見て、感動しました。自分で学習・行動していく「自律した学習者」ってこういうことなのだなと実感しましたね。そういう生徒を1人でも多く育てたいです。

理想の英語に対する姿勢は「出川English」

―――今後の展望を教えてください

(皆川)今後の展望は、たくさんあります。笑

まず、アプリなどを使って生徒たちがもっと学びやすい環境を整えていきたいです。今でもアプリを取り入れて単語学習などを行っていますが、さらに増やしていくとより生徒が学習しやすくなるのではと思います。

また、海外文化を知ってほしいので、国際交流を増やし、生徒全員に海外に行く機会を提供したいですね。

あとは、より良いプロジェクト学習の企画をしていきたい。ドラえもんの秘密道具ディベートでの生徒の取り組み姿勢が良かったので、同じように、生徒のモチベーションが上がって何か新しいものを考案したいです。

私は、英語学習は難しいものではないと思っています。学習しようという意欲さえあれば、どんどん自分で行動を起こしていけるのです。とあるテレビ番組での出川哲朗さんの、「出川English」はまさに理想的な英語に対する姿勢ですね。日本人が英語に苦手意識を感じてしまうのは、あの姿勢が足りないからだと思います。失敗を恐れず恥ずかしがらないマインドや、積極的に学ぼうと思えるモチベーションを培える授業をしていきたいです。

取材・構成・記事作成/大久保さやか

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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