Teaching

基礎を徹底し、英語力の土台をつくる。短いスパンで学習を繰り返す反復型の授業実践

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近年、英語学習の現場ではグローバル教育に重点が置かれ、コミュニケーション中心の授業が広がっています。一方で実際に文章を書いたり、読解したり、正確に伝えたりする場面になると、「基礎学習が十分に足りていない」と感じている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

滝中学校・滝高等学校の加藤吉博先生は、まさにそこに課題意識を持ち、中学の段階での徹底した基礎定着を目指して「反復学習法」を実践しています。反復学習を取り入れた授業設計や効果、生徒のモチベーションを保つ工夫について伺いました。

反復学習で、英語力の基礎となる土台を築く

――育成したい生徒像を教えてください。

(加藤)生徒たちには、世界のトップに立ってイニシアチブを取り、ボーダーレスに活躍できる人になってほしいと思っています。英語教員としては、英語力をきちんと身に付けてもらいたい。近年はグローバル教育の流れの中で会話中心の学習が主流になっていますがまずは基礎をしっかり学ぶことが大切だと考えています。

スピーキングやライティングの力は、あとからでも伸ばせます。ただ、そのためには土台となる英語の基礎力が必要です。将来、国際的な舞台でしっかりコミュニケーションを図れるよう、自分の言葉で語れる力やそのための勉強法を身に付けてほしいと思います。

――反復学習法を取り入れた授業を行っているそうですね。

(加藤)反復学習は、私が本校に着任した当時にいらっしゃった先生が実践していた方法です。その先生のスピリットを受け継ぎつつ、自分なりにアレンジを加え、短いスパンで反復させる現在の形にしました。

「反復」と聞くと、机に向かって黙々と文法を学ぶ授業を想像されるかもしれませんが、実際は違います。むしろ、普段の授業では、生徒たちが声を出して元気に活動していることがほとんどです。たとえば、“Go straight”という命令形の構文を学ぶときは、ペアになって道案内をしてみるなど、体を使ったアクティビティを積極的に取り入れています。

もちろん文法の説明も行いますが、それ以上に「習うより慣れろ」という姿勢を大切にしています。楽しくアクティビティに取り組みながら、演習問題や単語の書き取りなどを繰り返して定着を図る。これが、私の実践している反復授業法です。

[caption id="attachment_16497" align="alignnone" width="600"] <授業風景>[/caption]

――反復学習法を取り入れようと思った理由を教えてください。

(加藤)英語学習は「楽しい」だけではなく、地道な努力を重ねることが大切です。そのための勉強法を教えることも、私たち教員の役割だと思います。将来、生徒が勉強をやり直そうとしたときに思い出してもらえたらという願いも込めています。

また、高校3年生の授業を担当していて感じるのは、中学校で学ぶ内容の大切さです。たとえば、大学入試の長文問題で複雑に見える構文が、実は中学レベルの文法だったということは少なくありません。基礎が十分に定着していないと、思わぬところでつまずいてしまうこともあるため、中学生のうちにしっかり土台を固めておくことが必要です。

短いサイクルで何度も触れることで知識が定着

――反復学習は、どのような方法で行っているのでしょうか。

(加藤)基本は、教科書の内容を何度も繰り返し学ぶという方法です。単元内のセクションを先に進めながら、毎回、必ず前の授業でやった内容を復習します。大まかな流れは次の通りです。

・イントロ:単元の最初の授業。レッスン内で扱う文法を説明し、ペアワークやグループワークなどのアクティビティを行う。
・次回以降の授業:1日に1セクションずつ進みながら、同時に前回の授業の復習や小テストを行う。
・レビュー:レッスン内のすべてのセクションが終わったら、レビュー用プリントで再確認する。
レビューテスト:レビュープリントの内容から出題されたテストに取り組む。
・定期考査前:これまでの総復習プリントに取り組む。
・定期考査実施
・定期考査後:テストのやり直しをする。

[caption id="attachment_16492" align="alignnone" width="457"] <中1の英語授業予定表>[/caption]

この流れを各単元で繰り返します。生徒から「またこれか!」と言われるほど繰り返すのがポイントです。

使用している教科書は『New Treasure』です。レッスンごとに文法事項がまとまっているので、単元の前半で扱った内容を後半でもう一度扱い、最後に前半と後半をまとめて復習するようにしています。テストごとにおおよそ2ユニットずつ進むペースで、年間の計画もあらかじめ決めています。

――かなりタイトなスケジュールですね。

(加藤)そうですね。生徒にとってはかなり厳しいと思います。正直、自分が中学生の頃に同じことをやれたかといったら、無理だったかもしれませんね(笑)。それでも、生徒たちはみんな本当によく頑張ってついてきてくれています。もちろん全員が常に順調というわけではないので、小テストの結果が振るわない生徒には、朝や昼休みに声をかけたり、呼び出したりしてフォローしています。

――授業は、習熟度別のクラスに分けて行っているのですか?

(加藤)本校の中学校では、習熟度別にクラス分けしていません。帰国子女や、中学1年の時点ですでに英検準1級を持っている生徒、アルファベットから学び始める生徒などが同じ教室で学びます。

授業のレベルは、基礎から学ぶ生徒に合わせており、上級者の生徒には音読の手本を任せたり、「土曜講座」でハイレベルな授業を受けてもらったりしています。「土曜講座」とは、年間9~10回、特定の土曜日に開講される希望制の授業のことです。

また、英検準1級や1級の取得を目指す生徒には、英作文の添削などにも個別に対応し、それぞれのレベルに応じて学びを深められるよう工夫しています。

――短いスパンで反復することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

(加藤)記憶の定着に大きな効果があると思います。長い時間をかけて一度だけ学ぶよりも、短いスパンで何度も同じ内容に触れる方が、確実に頭に残るためです。よく生徒にも話すのですが、小さい頃に一度会っただけの人よりも、たとえすれ違うだけでも毎日見かける人の顔の方が、自然と記憶に残りますよね。

それと同じで、短期間に繰り返しながら同じ英単語や文法に何度も触れる方が、記憶に定着しやすいんです。生徒が「またこの単語か!」と思うくらいがちょうどいい。その反応が見られたときは「よし、うまくいった!」という気持ちになりますね(笑)。

基礎を身に付けることはもちろん、英語の楽しさも知ってほしい

――実際に、生徒さんの理解度が深まったと感じることはありますか。

(加藤)毎日小テストを実施しているので、「ちょっと調子が落ちているな」「今まで点が取れなかったのに最近はよくできているな」といった変化はわかりやすいです。単元を細かく区切って確認しているので、どこでつまずいているのかもすぐに把握できます。

そうした変化が見えるのも、短いスパンでの反復の良さですね。小テストの結果が全体的に悪いときは、全員が理解できていないということなので、復習の難易度を調整することもあります。

――近年は、小学校での英語教科化によって中学の教科書が難しくなっていたり、中学1年の早い段階から中学2年で習う単語や文法事項などに触れたりするケースもあると聞きます。授業をされる中で、指導の難しさを感じることはありますか。

(加藤)正直、あまり感じたことはありません。本校は中高一貫教育ということもあり、英語に限らず国語や数学でも「中学生だからここまで」と区切らず、高校の内容に自然と踏み込んでいます。

特に英語は、高校で扱う文法でも日本語では日常的に使っている表現もあり、中学生でもそこまで理解できないということはないはずです。基礎さえしっかり身に付けば、どんどん先に進んでいってもよいと思います。

ただ、授業そのものはかなり手間がかかりますね。小テストの作成や採点・課題のチェック・次の授業で使うプリントの準備・生徒のフォローなど、やらなければならないことが多く、空き時間はほとんどありません。まさにマンパワーだけでやっています。

――今後の展望について教えてください。

(加藤)実は来年度から、洋書を使った文法の授業に挑戦してみようと考えています。本校の英語の授業は2種類あります。検定教科書の『New Treasure』を使って基礎を学ぶ英I(週4回)と、文法や長文演習を行う英II(週1回)です。英2の授業では、毎年ほぼ同じ教材を使い続けてきたため、そろそろ新しい教材に変えた方がよいのではないかと感じていました。

洋書を使うことで、よりリアルでオーセンティックな英語に触れられます。また、文法を学びながら新しい知識や考え方も得られるのではないかと思います。生徒たちに、「リアルな英語を使って学んでいる」という実感を持ってもらえる授業にしていきたいですね。

 

取材・編集:小林慧子/構成・記事作成:白根理恵

この記事に登場する先生

加藤 吉博先生

加藤 吉博先生

滝中学校・滝高等学校

滝中学校・滝高等学校英語科教員。私立校での指導を志し、教員採用を機に現任校へ着任。中高一貫教育を見据えた英語指導を行う。英語コミュニケーションと論理・表現の授業を担当し、短いスパンで繰り返し学習を回す「反復型授業」で基礎定着を重視。生徒が英… プロフィールを見る →

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