Feature

英語で地域の魅力を発信!多国籍メンターと取り組む探究型プログラム「K-SEP」

公開:

春日部共栄中学高等学校では、生徒が主体的に学び、英語を実践的に活用する力を育む取り組みとして、K-SEP(Kyoei Summer English Program)を実施しています。本プログラムは、中学3年生全員が参加し、多国籍のメンターと協働しながら、地域の魅力を英語で発信する活動です。K-SEPの具体的な活動内容や生徒の反応について、英語科の赤松美由紀先生と田辺友美先生にお話を伺いました。

探究的な活動で、生徒の主体性や協働性を育む

――先生方が育成したい生徒像や、学校全体の教育方針について教えてください。

(田辺)本校では、中高6年間を3つのステージ(ファースト・セカンド・サード)に分けており、それぞれに「コース別活動」があります。この活動全体を通して私たちが目指しているのは、生徒自身が物事に対して問題意識を持ち、主体的に課題に取り組む力を養うことです。そして、その探究の成果を、他者に向けてきちんと「発信する力」を身に付けてもらうことも重視しています。

そうした取り組みの一つとして実施しているのが、K-SEP(Kyoei Summer English Program)です。

――「K-SEP」とは、どのようなプログラムですか。

(赤松)K-SEPは、本校の中学3年生全員が参加する学年行事のひとつで、英語科の教員が中心となって運営しているプログラムです。

昨年度から英語で学ぶことに加えて、探究的な要素を取り入れました。単に英語を学ぶための研修ではなく、探究的な活動を通して、生徒の主体性や協働性を育むことを目的としています。また、コロナ禍以降はJAAC(日米学術センター)を通じて、日本国内に留学している学生さんたちにメンターとして来ていただいています。

今年度は、シエラレオネ・アメリカ・ガーナ・ルワンダ・ケニア・ザンビア・ミャンマー・インドネシアなど、さまざまな国のバックグラウンドを持つ留学生がメンターを務めてくれました。

<海外からの留学生がメンターとして一緒に活動しています>

――具体的な活動内容を教えてください。

(田辺)毎年、5日間のプログラムとして実施しています。大きなテーマは、「春日部の魅力を、春日部を知らない海外の人に向けて英語で発信すること」です。そのテーマのもと、生徒たちはグループに分かれ、春日部市内で地域貢献活動をしている企業や人気のある店舗・施設などを取材しました。

市外から通学していて春日部のことをあまり知らない生徒も多いため、事前にアンケートを実施して「春日部市内でおもしろそうだと感じる場所」をいくつか出し、その中から訪問先を決めてもらいました。

その後、生徒自身が訪問先に電話をして、取材のアポイントを取ります。とはいえ、いきなり依頼するとお断りされてしまうこともあるので、事前に教員が訪問の了承を得たうえで、生徒が連絡をするという形にしました。

電話でのアポ取りは、4月に職業体験をした際に経験済みなので、生徒たちにとって心理的なハードルはそれほど高くなかったようです。訪問先は、温泉施設・公園・伝統工芸のお店・スーパーマーケットなど、多岐にわたります。クレヨンしんちゃんの「聖地巡り」をテーマに取材したグループもありました。

取材後は、撮影した映像やインタビュー内容をもとに動画を制作。最後は、動画を使いながら、取材した内容をまとめて英語でプレゼンテーションを行いました。メンターには、取材時の質問内容を一緒に考えてもらったり、動画撮影や制作に関してアドバイスしてもらったりしました。

英語が苦手な生徒ほど達成感を得られた、多国籍メンターとの協働

――メンターと英語でコミュニケーションを取ることに対して、生徒さんたちはどのような反応を見せていましたか。

(田辺)今回は、「どのような人物に向けて、どのようなコンテンツを作るのか」といった点について、事前に生徒同士が話し合ったうえでメンターに入ってもらいました。ですから、生徒たちも、今メンターと何を話せばよいのかがわかりやすかったのではないかと思います。

また、活動ごとにメンターを入れ替えていたため、さまざまな国の方と関わりながら、文化の違いに触れられたことも楽しかったようです。活動の最初に、メンターのバックグラウンドを紹介する時間を設けたことも良かったと感じています。

メンターと打ち解けやすくなったことで、たとえうまく伝わらなくても、身ぶり手ぶりを交えながら英語で話そうとする生徒が多く見られました。終了後のアンケートでは、英語が苦手だと感じている生徒ほど達成感を得ていたことがわかり、メンター制度を取り入れて良かったと感じています。

(赤松)これまでは、海外研修に向けて英会話を集中的に学習するといった形式のプログラムでした。しかし最近は、英語学習においても、単に言語を学ぶのではなく、共通語として使いこなせる力を身に付ける方向に少しずつシフトしています。

今回のプログラムでも、これまでに学んできた英語を実際に使ったり、「これは英語でどう表現すればいいのだろう」と考えたりする経験ができたと思います。メンターとの実践形式のワークショップを通して、普段の授業とは少し違った形で英語に触れられ、生徒も楽しみながら取り組めていたようです。

<取材した内容をもとに作った動画を使い、英語でプレゼンテーションします>

――アウトプットの場として、動画を選んだのはどのような理由からでしょうか。

(田辺)今回の活動内容を次の学びにつなげるために、アウトプットについても、技術的な部分も含めて、さまざまな方法があることを学べるよう意識しました。これまでも、スライドやポスターなど、行事ごとに異なる形式で発表する機会を設けています。

今回は、そうした形式の一つとして動画を提示しました。ただ、すべてを動画にしてしまうと、生徒が自分の言葉で発表する場面がなくなってしまいます。そこで、生徒自身が説明を行い、現地での様子やインタビューの場面などを動画やスライドで補足する構成にしました。訪問先の雰囲気が伝わりやすく、発表としてもわかりやすい形になったと思います。

――メンターと一緒に活動する中で、印象的なエピソードはありましたか。

(田辺)教室内の授業だけではなかなか体験できない、予測不能な出来事もたくさん起こりました。たとえば、動画撮影に出かけた際、事前に調べていたバスが来ず、目的地まで30分ほど歩かなければならなくなったグループがありました。

また、メンターにお願いして日本の食べ物を食べてもらうなど、その場でアイデアを出しながら撮影する場面もあったようです。

事前に用意したことを手順通りに進めるだけでななく、ハプニングがありながらもそれを乗り越えたことで、生徒たちは「自分たちでやり切った」という自信を持てたのではないかと感じています。

K-SEPでの経験を、次の学びや挑戦へつなげていきたい

――教科横断的な取り組みは行っているのでしょうか。

(赤松)特定の教科と明確に横断する形は取っていません。ただ、たとえば、歴史をテーマにした場合には社会科の視点で掘り下げるなど、内容によっては他教科との連携も可能だと思います。

(田辺)今回は、発表が終わった後に、K-SEPのことをまだよく知らない後輩への周知も兼ねて、広告文を書くという課題を国語科の宿題として出しました。広告文の書き方については、国語の授業で学んでいます。

また、修学旅行の前には、訪問先の京都について、教科ごとに関連する内容を学ぶ活動も行っています。将来的には、K-SEPの中でも、何らかの形で教科横断的な要素を取り入れられたらおもしろいですね。

――今後の展望を教えてください。

(田辺)探究学習に関しては、今回の活動で培った経験を、次のサードステージでの学びにつなげていきたいと考えています。一人ひとりが問題意識を持ち、主体的に探究して発信できる力を育てるために、必要な考え方や方法をしっかり提示していきたいです。

(赤松)本校では、高校に進学すると、ボストン・オーストラリア・イギリスなどで海外研修やホームステイを体験できる機会が広がります。K-SEPで多国籍のメンターと関わった経験が、「次は海外で挑戦してみたい」と思うきっかけになってくれたらうれしいです。

また、制作した動画は、著作権などの関係から現状では保存したままになっています。今後は、取材先のお店や施設の広告として活用してもらうなど、何らかの形で地域に還元できたらと考えています。

(田辺)実際に今年は、「動画を送ってほしい」と声をかけてくださったところもありました。これからさらに、地域とのつながりが広がっていってほしいですね。日本だけでなく、世界にも目を向けられる活動へと発展していけたらと思います。

 

(取材・編集:小林慧子/構成・記事作成:白根理恵)

メルマガで、新着記事を受け取る

授業実践・学びの理論・学校事例・教材レビューの新着を、まとめてお届けします。

配信はいつでも解除できます。