教育トーク : デジタルとアナログの両面から新学習指導要領の混乱を乗り越える

最終更新日:2022年10月27日

プロフィール

  • 坂井市立三国中学校 江澤隆輔

    公立中学校11年、公立小学校3年のご経歴。英語教師をしながら、英語授業の本を執筆。年10回ほどセミナーや講演にご登壇。YouTube等で英語授業の配信・中学英語の授業法や教育方法、働き方に関する著書・編著多数。 【活動実績】(一部) 2021.6『教師のライフハック大全』(明治図書)出版 2021.4「教師のバトン」(AbemaPrime)出演 2019.12「松岡修造の先生も悩んでます!」(テレビ朝日)出演 2019.5「タイムリーふくい」(福井テレビ)出演 2019.3『教師の働き方を変える時短』(東洋館出版)出版 2018.3『中学英語ラクイチ授業プラン』(学事出版)出版 2018.2『苦手な生徒もすらすら書ける!テーマ別英作文ドリル』(明治図書)出版

令和2(2020)年度から順次実施されている新学習指導要領では、小学校に外国語の授業が導入されるなど、英語科の指導に大きな変化が求められています。変革への対応に戸惑う声も多い中、オンラインサロンと書籍の2軸で積極的な情報発信・情報共有を促す先生がいらっしゃいます。

 

無料オンラインサロン「英語教員がちサロン」を運営し、2022年7月には『スピーキング活動アイデア&指導技術』を出版した江澤隆輔先生にお話を伺いました。

 

英語教員による英語教員のための無料オンラインサロン「英語教員がちサロン」

 

—— ご自身も公立中学校で英語の教鞭を執られている江澤先生は、全国の英語教員が気軽に情報共有できる無料オンラインサロン「英語教員がちサロン」も運営されているのですよね。なぜオンラインサロンを始められたのですか?

 

(江澤)学習指導要領の改訂によって、令和2(2020)年度から小学校でも英語の授業がスタートしました。当然ながら参考にできる前例もありませんし、指導計画案もイチから作らなければなりません。4技能5領域を意識した指導やオールイングリッシュの推進など、混乱は中学・高校でも起こっており、情報共有の場を求める声が多く上がっていました。

 

研究会や研修も盛んに開かれていますが、場の雰囲気などによってはざっくばらんに発言することが難しい場合も少なくありません。そこで、些細なことでも質問したり、誰でも気軽に情報共有をしたりできる場を設けたいと考え、オンラインサロンを開設しました。

 

自分の指導法は合っているのか、他の人はどのような評価方法を採用しているのか、そういった不安や悩みをオンラインサロンで少しでも軽減できたらと考えて運営しています。

—— サロンは2021年11月に開設されたと伺っていますが、現在どれぐらいの方が参加されているのでしょうか?

 

(江澤)SNSでの告知に始まり、またサロンメンバーからの口コミも相まって、今では全国から500名以上の先生方に参加していただいています。業での指導方法を紹介しあったり、自作のワークシートをシェアしたりメンバー同士でとてもポジティブな情報交換ができていますよ。

 

—— 1年足らずで500名以上も集まっているということは、いかに先生方が情報を求めているかということがわかりますね。コロナ禍を経て教育がオンライン化・ICT化したことで、オンラインサロンという手法がフィットしたのかもしれませんね。

 

(江澤)タブレット端末が配布されたり、オンラインツールで課題を提出したりと、授業環境もこの数年で大きく変わってきています。そこで、教員の情報交換の場にもチャットツール「Slack(スラック)」を使うことにしました。Slackは先生方でも普段から利用している方が多いと聞いています。

 

—— 「がちサロン」というネーミングも、教育系コミュニティではあまり聞かないユニークさがありますね。パンチが効いているというか(笑)。

 

(江澤)ありがとうございます。教員にはとても真面目で謙虚な方が多いので、遠慮せず肩肘を張らず気軽に参加してほしい、という思いから「がちサロン」と名付けました。ユーモアを込めたつもりなので、「がち」と聞いて怖がらないでくださいね(笑)。

 

少子化や社会の変化なども影響し、教育現場における問題や悩みは増える一方ですよね。英語の指導法に限らずさまざまなテーマについて話し合える場が、今の時代には必要だと思っています。課題を共有したり情報交換したりすることは、教員自身が自信を持って指導にあたることにつながり、生徒にとってもプラスに働くはずです。

 

「全国の教員が同僚」500名以上が集うオンラインサロンの内容とは?

 

—— 500人以上が参加するサロンとなると、運営も大変なのではないでしょうか?

 

(江澤)いえいえ、皆さんとても協力的ですよ。最近では、サロンのメンバーから自発的な提案もいろいろ頂いていますたとえば、「生徒でも歌える洋楽プレイリストを作ろう」「授業で使えるスモールトークの話題をシェアしよう」といった企画は、メンバーからの発案でかなり盛り上がっていますね。サロンを積極的に盛り上げてくれる方も増えてきて、運営としては非常にありがたいことです。

 

これだけ教員が集まると意見やアイデアも千差万別で、私自身も勉強になっています。いちメンバーとして、本当に情報共有に役立つサロンだなと実感するばかりです。

 

—— それは素晴らしいですね!英語の指導法だけでも話題が多岐に渡ると思われますが、Slack上で見落としたり情報が重複したりすることもありそうです。運営において、何か工夫されているポイントはありますか?

 

(江澤)そうなんです。メンバーがサロンをフル活用してくださっているおかげで、サロンでは本当にたくさんの話題が飛び交っているので、このような感じでテーマごとにチャンネル(掲示板)を分けています。

 

・小中連携と初期指導

・be動詞の授業・一般動詞の授業・命令文の授業・三単現の授業・疑問視の授業

・現在進行形の授業・助動詞の授業・比較表現の授業・受動態の授業

・現在完了経験用法の授業・現在完了継続用法の授業・現在完了完了用法の授業

・間接疑問文の授業・分詞の授業・パフォーマンステスト・スピーキング指導

・授業のちょこっとスキル・前置詞の授業・過去形と過去進行形の授業

・未来表現の授業・接続詞の授業・関係代名詞の授業・動名詞の授業・仮定法の授業

・ICTの情報や相談・評価について・ライティング指導・リーディング指導・リスニング指導

・中高連携・英語教員の仕事術・語彙指導

https://youtu.be/Vjr22U1j7W8

 

サロンメンバーは誰でもコメントできます。本当にさまざまなアイデアが出てくるので、チャンネル数はまだまだ増えそうです。必要な情報にいつでもアクセスしやすいサロンであるために、メンバーとも協力して環境を整備していきたいですね。

 

—— 「がちサロン」ではSlack上のコミュニケーションだけでなく、交流会も開催されているとお聞きしました。交流会とはどのようなものなのでしょうか?

 

(江澤)月に1回ぐらいのペースで、Zoomを使ってオンライン交流会を開催しています。Slackではテキストやスタンプでのやり取りしかできませんが、顔を見たり声を聞いたりすると、グッと距離が縮まるんですよね。

 

小規模校で指導している教員の方は、「同僚がおらずいつも不安だったので、サロンで情報交換ができて良かった」と言ってくれました。オンラインサロンという性質上、リアルで集まることはなかなか難しいのですが、勤務校や地域を超えて「全国に同僚ができる」というのはオンラインの醍醐味かもしれませんね。

 

江澤先生のスピーキング指導のノウハウが満載『スピーキング活動アイデア&指導技術』

 

—— ところで、江澤先生は2022年7月に『クラス全員が話せるようになる! スピーキング活動アイデア&指導技術』(明治図書出版)を上梓されましたね。

クラス全員が話せるようになる! スピーキング活動アイデア&指導技術 (中学校英語サポートBOOKS) | 江澤 隆輔 |本 | 通販 | Amazon

 

—— 学習指導要領の改訂に伴い、都立高校入試にスピーキングの追加が検討されるなど、この数年英語科におけるスピーキングの重要度はより一層高まっています。しかしその一方で、スピーキングは4技能の中でも特に指導や評価が難しいという声も聞きます。現場の先生方は頭を抱えるところなのではないでしょうか。

 

(江澤)まさにそれが今回の出版のきっかけです。スピーキングが受験でも必須要件になりつつあるなか、学校の授業においてスピーキングをどのように指導するか、またどのように評価するかという点で悩んでいる先生方は非常に多いようです。ちょうど出版社の方からお話を頂いたこともあり、私からできる限りの情報共有をさせていただこうという思いで、本書の執筆に至りました。

 

—— とはいえ、新学習指導要領への対応という意味では、先生ご自身も試行錯誤の渦中だったのではないでしょうか?

 

(江澤)新指導要領が施行された頃、私は英語科主任を務めており、スピーキングの指導や評価についても英語科で集まって話し合う機会を多く設けていました。他の先生方の意見を聞きながら私自身もさまざまな情報に触れ、試行錯誤を重ねながらスピーキングに対するアプローチを一冊に集約していった感じです。

 

—— 本書ではスピーキング指導に対する考え方だけでなく、授業に取り入れられる30の活動が紹介されています。これだけあれば、目的や生徒の理解度に応じて使い分けたとしても、継続的にスピーキングの活動を授業で実践できますね。30種類も考案されるのは大変だったのではないでしょうか?

 

(江澤)実は、本書に掲載している30個全ての活動をイチから考案したわけではありません。これまでに私が実践してきたスピーキング活動の中で特に盛り上がったものや、応用発展させたものもご紹介しました。そのうえで、いろいろな活動の中からクラスに合ったものを選んで取り入れていただきたいと思い、新しい活動もいくつか考えてみました。

 

新学習指導要領で告示されただけで、まだ実践例もない状況では教育現場の方々が混乱するのもやむを得ない部分があります。指導にしてもパフォーマンステストにしても、こうして実践例をいくつか示すことで、本書を手に取った先生方がそれぞれの実態に合わせて、方向性を見出す手立てにしてもらえればと思っています。

 

先生はとにかく忙しい! だからこそ、簡単・手軽に使えるアイデアブックを

 

—— すでに多くの先生方が手に取っておられると思いますが、どのような点に留意して執筆されたのでしょうか?

 

(江澤)日々現場に立つ教員はとにかく忙しく、限られた時間の中でより良い授業を作ることに苦労していますよね。私もそうです。せっかく現役教員が執筆するのですから、現役教員の大変さを踏まえて「簡単に」活動を展開できるような仕組みを数多く盛り込みました

 

先ほどご紹介した30のスピーキング活動も、ただ30種類を列挙するだけでなく、それぞれ見開き2ページの範囲で手順や指導のポイントを簡潔に補足しています。また、YouTubeやVoicyの解説動画・音声にも各ページからQRコードでアクセス可能なので、本を読む時間が確保できない先生方は通勤時間やスキマ時間を使ってインプットしていただけたらと思っています。特に、YouTubeでは私が実際に授業で行っている様子を見ていただけるので、授業のイメージを膨らませやすいと思います。

 

活動に必要なワークシートは巻末からPDFとWordの2種類でダウンロード可能です。PDFをそのまま印刷して使っていただいても構いませんし、オリジナルでアレンジしたい場合にはWordデータを書き換えて使っていただくこともできます。

—— ワークシートを自作しなくて済むというのはありがたいですね。パフォーマンステストや評価方法の紹介について意識された点、また本書を活用するためのポイントはありますか?

 

(江澤)評価は、明確化することが重要だと考えていますスピーキングの評価を「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」に分け、どのように評価すると生徒にも教師にも分かりやすい活動になるのかを重点的に説明しました。例えば、発音なら発音、受け答えできた回数なら回数というように、「これに絞って評価するよ」と生徒に提示すると生徒も取り組みやすくなりますし、教員も評価の基準が明確になると思います。

 

スピーキング力を定着させるためには実践を繰り返し、とにかく量をこなすことだと思います。例えば、サッカーの試合で勝つためには、蹴り方・ルール・戦術を全部頭に叩き込んでから試合に臨むよりも、ある程度ルールを覚えたらとりあえず試合をする。できなかった部分の練習を挟んでまた試合に出てみる。実践を繰り返したほうが強くなれると思いませんか? 私のこれまでの指導経験からも、実践を積みながら途中で少しずつ指導を加えていくほうが成果に結びつくと感じます。

 

本書で紹介している活動も、ポイントを絞った活動が幅広く揃っています。いろいろな活動を取り入れながら定期的にパフォーマンステストで成果を測り、その先の授業計画に反映していくのが良いと思います。

 

—— 本書を読まれた先生方にはぜひ授業で実践していただき、得られた気づきを「がちサロン」でフィードバックしていただきたいですね。今日はありがとうございました。

 

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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