勤務時間内で完結するためにフェリシア高等学校が取り組んできた「働き方改革」

最終更新日:2025年4月21日

東京都町田市にあるフェリシア高等学校は、建学の精神の基幹である「愛の教育」に基づき、生徒のペースに合った学習環境を提供しています。また、同校は教員の働き方についても長年にわたり改善の試みを重ねてきました。とくに、勤務時間内で完結するための施策は抜本的でユニーク。近年はDX化によってより効率的で働きやすい環境づくりに取り組んでいます。働き方改革のさまざまな施策と、その根底にある考え方について、杉田悠宇先生、中山正己先生、荒井亮吾先生にお話を伺いました。

部活もやって16時40分で終業、その秘密は?

―― フェリシア高等学校は1961年創立で、今年で64年目なのですね。

(杉田)私たちが所属する学校法人明泉学園には、高校だけでなく短期大学や保育園、幼稚園もあります。本校は鶴川高等学校という名称でしたが、一昨年度より「フェリシア高等学校」という校名になりました。フェリシアとは花の名前で、「幸福」「恵まれている」という花言葉があります。

―― 学校名が変わったことで校風やビジョンに変化はありましたか?

(杉田)愛の教育を重んじる建学の精神は変わっていませんが、生徒の実態に合わせてシステムなどの部分は変更を加えています。たとえば、1時間目は10時に始まり、40分授業になりました。

―― 1時間目が10時スタートというのは、どういった狙いがあるのでしょうか。

(杉田)本校には、朝が弱い生徒や中学生時代に思うように登校できなかった生徒も入学しています。一般的な全日制の高校のように9時から50分の授業を6コマというシステムに固執するよりは、まず学校に来ることのハードルを下げて、10時から1時間目を始めるようにしました。また、義務教育に立ち返り、高校での学習の土台を作るために、9時からは0時間目として学び直しの講座を実施しています。

―― 歴史ある学校ながら、かなり抜本的な改革に取り組まれているのですね。勤務時間内で完結するための挑戦は、いつから始められている取り組みですか?

(中山)残業をなるべくしないという取り組み自体は20年以上やってきていることです。授業が10時からなので、出勤時間は8時40分。先生方のスタートも他校に比べて遅いです。また、4時40分で業務時間は終了です。

正規の勤務時間を超えて仕事をされている先生方がよく課題に挙げられるものに部活動がありますよね。本校の場合は、授業が3時20分に終わり、部活動は3時半から4時半までの約1時間。正規の時間内で終了することとしています。

―― それは画期的な取り組みですね。業界内では「部活をなぜやるのか」という是非の議論にまで及んでいます。

(荒井)もっとも、部活動の時間が短いことで結果を目指すことが難しいという別の課題は出てきます。ですが、本校の部活動は、結果がメインというよりも、居場所やコミュニティを作ることに重きを置いています。まずは楽しく、他の高校とは違う位置づけかな、とは思います。

一長一短、DX化の推進により働き方は新たなフェーズへ

―― 働き方改革の一環として、近年はDX化に取り組まれていると伺いました。

(杉田)2020年頃からGoogle Workspace for Educationを使い始めたことでDXに手応えを感じ、昨年から今年にかけて、さまざまなクラウドサービスを導入しています。時間割作成はKOOMに移行したことで複数人で作業できるようになりました。また、デジタル採点や校務支援システムはクラウド環境に移行し、学習支援には記憶定着アプリを導入しました。

(荒井)ICTに取り組みたいと自発的に動く先生が増えてきたことは一つの契機だったと思います。本校では若手の先生が一気に増えたタイミングでもありましたし、ちょうどコロナ禍もその頃でした。オンライン授業を取り入れることでDX化の可能性が見えてきたり、生徒の学習状況もオンラインで見えるようになりました。

(中山)ペーパーレスを進めたり、連絡手段が増えたりしたことで、業務効率も上がってきていると思います。

全教員にGoogle Workspaceが浸透し、デジタルツールを活用する機会は増えました。DX化の先進事例とは言えませんが、多種多様なリテラシーをお持ちの先生方がいる中で、DXツールを取り入れる土壌づくりを成し遂げることができたように感じています。

すべては生徒のために。タスク管理の改善で業務の見直しを行いたい

―― 最後に、働き方に関する今後の展望や実現していきたいことがあれば教えてください。

(杉田)私はタスク管理の改善ですね。「兼任している業務が多く、誰が何に時間を使っているかよくわからない」というのは学校あるあるだと思います。タスク管理システムを導入するなど、一般企業で当たり前になっていることを学校にもどんどん取り入れていきたいですね。教員のタスクは多岐にわたるので、業務の効率化だけでは限界があると思うんです。

(中山)システムを活用することでタスクを見える化できると、業務負担を分散しやすくなって、一人ひとりがより働きやすくなるでしょうね。

(杉田)Google Workspaceを導入したことでクラウドで同時編集ができるようになったり、直接会わなくてもチャットで話せるようになったり、かなり効率化が進みました。今度は誰が何をやっているかの管理ができたらいいなと。

(中山)業務の見直しや再構築ができたらさらに働きやすくなると思うんですよね。ただ、仕事の中身を全員が把握しているわけではないので、誰がどのような業務を抱えているのか、どれぐらい時間を使っているのかを見える化するのが第一歩ですね。

(杉田)教員が働きやすくなることは、教員だけでなく生徒にとってもメリットが大きいと思います。より充実した教育活動を実施するために、改善を重ねていきたいです。

取材・構成:小泉純/記事作成:吉澤瑠美

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