これならうまくいく!? 英語の「家庭学習」を考える【後編】~実践研究の結果と考察:音読課題と交互練習の効果~
最終更新日:2026年2月18日
— 音読課題で成果をあげる実践のヒント —
家庭学習として宿題を出すだけでは、英語はなかなか定着しません。授業で教えた知識を、生徒が考えなくても素早く・正確に使える状態(自動化)に近づけるには、宿題の「質」が鍵になります。
本記事の結論は3つです。
1.授業だけで自動化まで到達させるのは難しい
2.効果の出る宿題は、短くても思考を伴い、反復できる設計になっている
3.音読課題は、交互練習を取り入れると成果が出やすい
大阪星光学院中学・高等学校の石原健志先生は、音読アプリを家庭学習に組み込み、中学1年生の文法テスト平均点を向上させました。本記事では、石原先生が行った家庭学習の具体設計(音読の手順、練習の組み方、フィードバックの考え方)と、「まとまり練習」と「交互練習」を比較した実践結果を前後編に分けて紹介します。前編では、自動化を促す家庭学習の考え方と実践研究の設計について、後編では、実践研究の結果と考察(音読課題と交互練習の効果)についてお伝えします。
(本記事は、2025年6月13日に実施された同テーマのセミナーを書き起こし・再構成しています)
結果:音読で全体が伸び、交互練習がさらに伸びを上乗せした
(石原先生)結果をまとめると、次の2点が見えてきます。
・練習タイプに関係なく、音読時間が長いほどスコアが高い傾向が見られた
・その上で、交互練習のほうが伸び幅が大きい傾向が見られた
音読自体の効果:両グループで平均点が上昇
1回目から2回目にかけて、まとまり練習グループ(24.51点→28.68点)と交互練習グループ(25.65点→32.76点)のどちらも平均スコアが上昇しました。さらに、上昇の大きさ(効果量)を見ると、まとまり練習は Cohen’s d = 0.56(中程度)、交互練習は d = 1.19(大きい)で、交互練習のほうが、伸びが大きいことが分かります。したがって、音読を宿題に組み込むこと自体が学習を支えつつ、練習タイプによって伸び幅に差が生じた可能性が示唆されます。

交互練習の上乗せ:伸び幅に差
スコアの伸びは、まとまり練習が平均+4.17点、交互練習が平均+7.11点で、交互練習のほうが約3点大きく伸びました。図1のとおり、1回目では両グループの差は小さい一方、2回目では交互練習グループの平均スコアがまとまり練習グループを上回り、その差は統計的に有意でした。以上より、練習方法の違いが学習成果に関わった可能性が示唆されます。

(図1:平均スコア比較グラフ )
一方で、「練習時間の差が原因ではないか」といった疑問も生じます。確かに音読時間の平均は、まとまり練習グループが205分、交互練習グループが270分で、約65分長いという結果となりました。しかし、この差は学習時間の散らばり具合(約200分)と比べると小さく、この時間差だけでスコアの伸びを説明することはできません。

(図2:学習時間と2回目スコアの関係(散布図))
そこで、音読アプリの利用時間と2回目のスコアの関係について調べました。この図2では、点は一人ひとりのスコア、その上に引かれた線はグループごとの傾向、グレーの範囲はその傾向が予想できる範囲を示しています。線が右上がりであることから、練習方法に関係なく、音読アプリを使う時間が長いほど、スコアが高くなる傾向が見て取れます。さらに、交互練習グループの線は、まとまり練習グループの線より常に上にあり、傾きもほぼ同じであるため、練習時間が増えても両グループの差は広がっていません。つまり、同じ時間練習しても、交互練習を取り入れた方がより高いスコアを出しやすいことが示されています。
表A ANCOVA:Score2 ~ Score1 + PracticeType + RepeatalkTime
RepeatalkTime は 100分あたり

表Aは、2回目スコア(Score2)を目的変数とし、1回目スコア(Score1)・練習タイプ(PracticeType)・音読時間(RepeatalkTime)を同時に入れて分析した結果を示しています。その結果、1回目スコアの影響を統制しても、交互練習はまとまり練習より2回目スコアが高い傾向が確認されました(PracticeType=interleaved:b=2.73, p=.005)。また、音読時間も独立に正の関連を示しました(RepeatalkTime:b=0.62[100分あたり], p=.011)。このことから、練習時間の違いだけでは説明しきれない形で、練習タイプの違いが2回目スコアに関わった可能性が示唆されます。
これは、練習タイプ(まとまり練習/交互練習)の違いが学習成果に関わるかを、学習前の到達度(Score1)や練習量(RepeatalkTime)と切り分けて検討した結果、交互練習の効果が「たまたま事前スコアが高かったから」あるいは「練習時間が長かったから」だけでは説明しにくいことを示しています。つまり、同程度の事前スコアと練習量を想定した場合でも、交互練習を行った学習者のほうが2回目スコアが高くなる可能性が残る、という点が今回の分析で確かめたかったポイントです。
ここで表に示した b(回帰係数)は、「ほかの条件が同じだと仮定したときに、2回目スコアがどれくらい変わるか」を表します。たとえば PracticeType=interleaved の b=2.73 は、1回目スコア(Score1)と音読時間(RepeatalkTime)が同程度の学習者同士を比べた場合でも、交互練習のほうが2回目スコアが平均で約2.73点高いことを意味します。
一方、SE(標準誤差)はこの b の推定値がどの程度ぶれうるか、つまり不確かさの大きさを表しており、SE が小さいほど推定は安定していると解釈できます。t 値は、効果の大きさ(b)がその不確かさ(SE)に比べてどれほど大きいかを示す指標で、概ね t=b/SE と考えてよいものです。実際に PracticeType の t=2.87 は、観測された差が偶然のばらつきだけでは生じにくい水準であることを示しています。最後に p 値は、「もし本当は効果がない(b=0)と仮定したときに、これほどの t 値が偶然に得られる確率」を表します。
PracticeType の p=.005 という結果は、練習タイプの効果がまったくないと仮定すると、この程度の差が偶然に出る確率は0.5%程度にとどまることを意味し、今回のデータでは交互練習の上乗せが0だとは言いにくい、という判断につながります。
表B 交互作用モデル:Score2 ~ Score1 + PracticeType * RepeatalkTime
RepeatalkTime は 100分あたり

表Bは、表Aのモデルに交互作用(PracticeType×RepeatalkTime)を加え、音読時間の効果(傾き)が練習タイプによって変わるかを検討した結果を示しています。交互作用は有意ではありませんでした(PracticeType×RepeatalkTime:p=.781)。これは、音読時間が増えたときのスコア上昇の傾きが、まとまり練習と交互練習で大きくは異ならない可能性を示します。
したがって、図2で見られるように、両グループの傾向線がほぼ平行である一方、交互練習の傾向線が全体として上に位置するというパターンは、「時間によって差が広がる」というより「同程度の時間でも差が残る」形として整合的だと言えます。
この結果をもう少し分かりやすく言うと、「音読時間が増えればスコアも上がる」という点は両グループで共通であり、その上がり方(右上がりの角度)がグループによって大きく変わったわけではない、ということです。したがって、交互練習の優位性は「たくさん練習した人ほど差がどんどん広がる」タイプの効果というより、同じ程度の練習量でも交互練習のほうが全体的に高い位置に乗りやすい、という形で現れていると解釈できます。つまり、図2の2本の線がほぼ平行で、交互練習の線が上側にあるという見た目は、表Bの結果と整合しています。
表Bの数値の読み方も確認しておきます。bは回帰係数で、他の条件が同じと仮定したときにスコアがどれだけ変わるかを表します。ここで最も重要なのは交互作用項(PracticeType×RepeatalkTime)の bで、これは「音読時間が増えたときの伸び方(傾き)が、交互練習ではどれだけ追加で変化するか」を意味します。
今回の交互作用項は b = 0.13(※100分あたり換算)で、値としても小さく、p = .781 でした。SE はその推定値の不確かさの大きさ、t はその効果が不確かさに比べてどれくらい大きいか(概ね t = B / SE)を表し、p は「もし本当は交互作用がない(b = 0)としたら、この程度の t が偶然出る確率」を意味します。
p = .781 という結果は、交互作用が0でも今回のデータのような差は十分起こりうることを示し、音読時間の効き方(傾き)がグループで大きく違うとは言いにくい、という結論につながります。
学力層別の傾向:低得点層で差が目立つ
(石原先生)生徒を1回目スコア(Score1)にもとづいて4つの層(上位25%/中上位/中下位/下位25%)に分け、各層で1回目から2回目への平均スコアの変化を比較しました(図3)。その結果、どの層でも交互練習グループの平均スコアは、まとまり練習グループより高い傾向が見られました。特に下位25%(低得点層)では交互練習の伸びが大きく、図から読み取れる範囲では平均との差が比較的目立ちます。以上より、学習開始時点の得点が高くない生徒ほど、交互練習の利点が現れやすい可能性が示唆されます。

(図3:学力層別の平均スコア変化 )
Repeatalkの強みは「家庭学習の見える化」にある
(石原先生)Repeatalkは、学習の実施量(音読時間)を記録できるため、家庭学習を「やった/やってない」という自己申告や印象だけで判断せず、取り組みを“量のデータ”として扱える点に強みがあります。家庭学習は、提出物があっても「どれだけ時間をかけたのか」「どのくらい継続できたのか」が見えにくく、教師側も声かけが抽象的になりがちです。
ところが、学習時間が見えると、指導の焦点が「気合い」ではなく「設計」に移ります。たとえば、同じ“音読した”でも、10分を1回やったのか、10分を毎日積み重ねたのかでは意味合いが違いますし、現場では「週のどこで崩れやすいか」「最初の3日間で止まりやすいか」といったつまずき方にも個人差があります。こうした違いを把握できるのが「取り組む時間を見える化すること」の価値です。
実際、本研究でもRepeatalkの使用時間が長いほど2回目スコアが高い傾向が見られました。もちろん、これだけで「アプリそのものが他より優れている」とまでは断言できませんが、少なくとも「家庭学習の量を確保すること」と「成果」のつながりを、授業外の学習でも確認できた点は重要です。
さらに、データがあることで、教師のフィードバックが具体化します。たとえば「もっとやりなさい」ではなく、「今週は合計○分を目標にしよう」「まずは平日3日だけ○分ずつで続けよう」「週末にまとめるより、短時間でも分散したほうが安定しやすい」といった形で、実行可能な提案に落とし込めます。つまりRepeatalkは、家庭学習を“気分や根性”ではなく、“記録にもとづいて調整できる学習”に変え、授業内の指導(設計)と家庭学習(実行)をつなげやすくするツールだと言えます。
まとめ:音読+練習設計で家庭学習は変えられる
(石原先生)今回の結果から、音読時間が長いほどスコアが高くなる傾向が見られたことに加え、練習方法を工夫することで、同程度の練習量でも成果に差が出る可能性が示唆されました。現場に即した形で「どんな宿題が適切か」を検討した結果、理論的な裏づけを持つ練習設計を、データに基づいて具体的に提案できたと考えています。先生方がご自身のクラスですぐに活用できるよう、無理なく回せる実践を意識しました。授業や家庭学習の設計に、少しでもお役立ていただければ幸いです。



