「授業や喋りそのもののレベルアップを」第37回チームキムタツ関東支部勉強会レポート
最終更新日:2024年1月31日
2023年12月3日(日)、英語科教員をはじめ英語教育関係者を対象としたセミナー「第37回チームキムタツ関東支部勉強会」が開催されました。「チームキムタツ」は英語教育の参考書を数多く著している作家・木村達哉さんが中心となって2005年に立ち上げた英語指導法の勉強会です。その輪は全国に広がり、各地で支部が発足し勉強会や講演が行われています。
昨今はウェビナーも多く開催されていますが、今回の対面のセミナーは満員で、会場となった多摩大学目黒中学校・高等学校は大いに賑わっていました。今回のセミナーでは、「参加者が実際の問題を解く⇨参加者同士で考えたことを話し合う⇨講師が解説をする」という実際の授業に即した授業方法を実践していただきました。
「高3の授業実践〜解説上手な先生になりましょう〜」
今回講師を務めるのは、佐藤仁志先生(聖光学院中学校高等学校 教諭)です。
1. 英文和訳解説
2. 和文英訳解説
3. 自由英作文
の3テーマで実際の授業をしていただきました。
1. 英文和訳解説で意識していることは
・左から右に読むこと
・結論ありきではなく、思考回路を説明する
・誤訳例とその理由を伝える
参考書を読めば、正答例やその和訳の文法事項が載っています。しかし、教室に教員がいる意味は正解に辿り着くまでの「思考回路の説明」にあります。生徒が問題を解いている間に、教員は生徒の誤訳を見つけて、つまずきやすいところを解説の時に説明します。
佐藤先生の授業は、「えー」「あのー」が非常に少なかったことに驚きました。これは生徒が授業に集中するための工夫で、日頃から「えー」「あのー」が出そうになったら、無言を意識して考えると克服できるとおっしゃっていました。無言になることで、生徒も自ずと「先生は大事なことを言う」という意識になります。そのためには日頃からの授業準備をしっかりすることが必要だそうです。この授業に限らず保護者会等でも生かせる技術ではないでしょうか。
2. 大意要約解説で意識していることは
・思考回路を説明する
=段落ごとの要旨
=全体としてどこが「中心」で、どこが「サポート」か
・訳読はしない
・自分の解答を見せる
・(受験期には)日本語の加工についても考えさせる
佐藤先生は中心となる箇所に下線を引いてメモをとること、段落が多くなってもなるべくすべての段落からエッセンスを引っ張ってくることをよく指導しているそうです。
先生は最初に、文章のどこに下線を引いたかをスクリーンで見せながら、文章のポイントを解説します。続いて、実際にまとめた解答と赤本や参考書の解答を生徒に見せて比較をし、それぞれの良いところを生徒が真似できるようにしていました。また、和訳を配ることで、佐藤先生が伝えたいことに時間をかけて説明できるよう工夫されていました。
とはいえ、説明に費やす時間は10分程度。生徒が集中して聞ける時間設定にも気を配っている点が印象的でした。また、学年に合わせて授業方法も変えており、高校2年生であれば、日本語でまとめた答案を生徒同士で見せ合っておかしいところがないかチェックする、というワークも取り入れていました。
3. 和文英訳解説で意識していることは
・「文法構文の知識で書けてほしい箇所」と「和文和訳するべきだった箇所」を分けておく
・「和文和訳するべきだった箇所」はその思考回路・アイディアを紹介
・ただし、直訳的な表現があればそれも教える(生徒の知識を増やすため)
和文英訳の授業も、他の授業同様にテンポ良く進みます。英作文の文法事項を確認してから、想定している答えをさらっと解説して、比較的簡単な問題は口頭ベースで授業をすすめていました。和文和訳では生徒の回答を取り上げ、アイディアを共有していました。
また、英訳する時に迷いそうな単語を3つほど例に挙げ、各単語の違いを説明して最も適切なものを教えていました。授業では、知らない表現は教えてあげる、驚きがある知識を入れてあげるなど、なるべく「この先生の授業を受けると新しい知識が得られるな」というお得感も大事なのだとよくわかりました。
先生よりコメント
実際に講演をやってみた感想
まずは、先生方が熱心だという印象を受けました。非常に興味を持って聞いてくださって、ありがたかったですね。「英語教育法をどうするか」「ICT・AIをどう使うか」というテーマの勉強会が最近の流行りで、授業の解説そのものをテーマにしたセミナーは少ないと思います。でも実は多くの先生方が困っているのは後者で、うまくいかないことが多いのではないかと思って今回やってみました。先生方は大変楽しそうに熱心に聞いてくださいました。参考にしていただけることが多かったのではないかと思います。
今回のセミナーで最も伝えたいこと(大切にしていること)
たとえば、音読の指導にしても「こういうやり方がいいよ」「ああいうアプリがあるよ」とかいろいろあります。しかし根本的には私たちの授業や喋りそのものがうまくないと、あるいは私たちの英語力そのものがないと何にもなりません。それを大事にしましょうね、とあらためてお伝えしたいと考えて実施しました。
英語教員へメッセージ
まずは授業力を上げていきましょう。いろいろなセミナーに出た方が成長すると思います。ただ、まるっきり形だけ真似るのではなく、自分自身の授業観、教育観とか、いわゆる信念を持ってやっていただくのが大切なのではないでしょうか。あまり流行に乗るだけにならないように私自身は心がけているつもりですし、ぜひ先生方も意識していただけると良いと思います。