多くの参加者で賑わった今春開催の「Cambridge Day 東京 2023」。秋開催の第二弾も好評のうちに終了!
最終更新日:2023年12月27日
英語科教員をはじめ英語教育関係者を対象とした実践型セミナー「Cambridge Day 東京」の第2弾が11月5日(日)に開催されました。今回は日本のGIGAスクール構想を牽引してきた武藤氏(文部科学省 学校デジタル化PTチームリーダー)が登壇。春のCambridge Dayで話題となった、Cambridgeが誇るアジアのスーパー・ティーチャートレーナーAllen Davenport氏の再登場も話題に。さらに各ワークショップも多数の参加者で賑わいを見せていました。
もくじ
・基調講演(武藤先生):なぜ令和の教育改革なのか、GIGAスクール構想なのか 〜英語教育関係者に知ってほしい教育改革の背景〜
・松本先生:世界が認める教授法 – CELTAのエッセンスを生かした授業づくり
・古川先生・大川先生:近大附属、激動の5年を楽しくオープンに振り返る
・Allen先生:The ゾウ in the room: Using Japanese in the English classroom
・佐藤先生・菅原先生:全国初の小・中・高一貫校での英語教育 ~12年を通して、どう子供たちを育てるか~
基調講演(武藤先生):なぜ令和の教育改革なのか、GIGAスクール構想なのか 〜英語教育関係者に知ってほしい教育改革の背景〜
武藤 久慶 先生(文部科学省 初等中等教育局 修学支援・教材課長、学校デジタル化プロジェクトチームリーダー、学びの先端技術活用推進室長、GIGA StuDX推進チームディレクター)
武藤先生の講演では、情報化が進んだことで変化が激しく、また人生100年時代となって働き方がマルチステージへ移行した現代において、求められる英語教育とデジタルの果たすべき役割が紹介されました。その内容は非常に緻密なデータに基づいていたことから、テーマへの理解が深まったという声を多く耳にしました。
後半の質疑応答も活況を見せていました。GIGAスクール構想の話を聞けたことにより、AIの進化によって英語教師の仕事がなくなる可能性が高いといわれるなか、英語教育への期待が持てたという参加者の感想もありました。
先生よりコメント
今回のCambridge Dayで最も伝えたかったこと
最も伝えたかったことは2つ。1つは、“GIGAスクールと英語教育は親和性が高い”ということ。もう1つは、これだけ多くのテクノロジーが誕生し、今後も生まれていくことを思えば、従来のモードからのアップデートが必要だということです。
英語教員へのメッセージ
教育現場は、どんどんオーセンティックではなくなると思います。一斉指導ではなく、もっと生徒個々に最適化された授業の展開を目指すのが良いでしょう。何より現代の英語教育の目的は、英語という手段の獲得を通して、生徒たちに国際的な舞台を含めた社会に羽ばたいてもらうことにあります。その目的を叶えるうえでGIGAスクールはとてもパワフルなツール。これを使わずしてどうするのかと。そのような時代に入っていることを意識されて、生徒さんと触れ合っていただくのが良いのかなと思います。
参加者の声
「来場の目的はGIGAスクール構想に関する講演でした。なかでも今回は英語教育に特化した内容ということで、非常に楽しみにしておりました。普段は教育委員会に勤めておりまして、現在まさに英語教育への学習用端末の活用に注力していきたいと考えているところです。そのため、生徒たちの資質や能力の育成といったところで、この先どのように両者を活用して授業を改善していくのが良いのか。そのヒントが伺えればと本日はお伺いいたしました。そしてお話を通して強く印象に残ったのは、やはりAIとの関わりについて。無関心でいるのではなく、アンテナを高くはって、英語教育について日夜模索し続ける必要があるのだな、ということでした」
「私が勤める学校では、『教員は生徒の勉強の伴走者である』という意見を持つ先輩が多くいるのですけれど、難しさを覚えるときがあります。日々の業務のなかでやりたいけれどできないと思っている人は先輩にも多くいますし、私もそう感じています。そのなかで今回の講演を拝聴して、ICTを活用することで、もっとできることがあるのではないか。そのような思いを抱きました」
「GIGAスクール構想に関する社会的な背景等の説明に説得力がありましたし、英語を教える教育者として参考となるお話が多くありました。そのうえで自分自身がどのように実践していくのかについて、しっかり考え、具現化していくことが必要だなと思った次第です」
松本先生:世界が認める教授法 – CELTAのエッセンスを生かした授業づくり
松本 悠暉 先生 (高槻中学校・高槻高等学校 – Cambridge Better Learning Partner、CELTA)
CELTA取得後、早々にオールイングリッシュを取り入れたという松本先生。先生のワークショップは、導入当初の経験を余すことなくお話されたこともあり、参加者も自分ごと化しつつ傾聴しているような様子が印象的でした。
また参加者によるグループワークも各テーブルで意見が飛び交い白熱したものに。一方、ときおり送られる松本先生からのアドバイスには、生徒に視線を合わせた授業展開を大切にされている姿勢が感じられました。
先生よりコメント
今回のCambridge Dayで最も伝えたかったこと
まずは、シンプルにCELTAの教え方を多くの人に伝え、共有したいと思いました。少なくとも個人的には、このような教え方が好きだなと感じていますし、興味関心を抱く方が増えることに期待したいです。CELTAはまさに言語を学んでいるという印象を抱ける教授法で、今後のスタンダードになっていくといいなと思っています。そのためのお力添えもできたらと考えています。
英語教員へのメッセージ
やっぱり思うのは、CELTAのような教え方に携わると、教員自身も学んでいく必要があるということです。ともするとルーティンワークに陥ってしまう可能性があるお仕事なのかなと思うと、仲間を増やして一緒に学んでいく教員になれたらいいですよね。
参加者の声
「今ちょうどCambridgeの研修を受けているのですが、たぶんに内容がオーバーラップして楽しく拝聴できました。あのときに教わった内容は、実際にこのように授業で活かされているのだな、という具合です。またCELTAのお話を聞くのは初めてでした。とても興味が持てて、学んでみたいと思いました」
「Concept checking questionsについての説明は、たしかにそうだなと思いました。わかっているだろうなと思いつつ、丁寧にやってあげる必要があるんだな、と。また、その質問を準備する、問いの質を上げることが、私たちに求められていることなのだなというのは、すごい感じました」
古川先生・大川先生:近大附属、激動の5年を楽しくオープンに振り返る
古川 英明 先生・大川 稔和 先生 (近畿大学附属高等学校 – Cambridge Better Learning Partner、CELT-S、CELTA、Train the Trainer)
Cambridge提供のテキストや教授資格、そして指針として根底に流れるコミュニカティヴ・アプローチを基軸とする英語教育の改革が本講演のテーマでした。近畿大学附属高等学校は西日本最大のマンモス校。改革推進には先生方との連携・協働が不可欠となるなか、失敗と挫折を重ねながら歩んできた取り組みを楽しくオープンに展開。参加者もリラックスしながら傾聴していました。
先生よりコメント
今回のCambridge Dayで最も伝えたかったこと
(古川先生)スチューデンツセンターでしょうか。本日はいろいろな取り組みを紹介させていただいたんですけれど、そのコアになっているのは、「生徒が本当に中心になっているか」というところ。そこを教員の方々に見つめ直していただく機会になったら嬉しく思いますね。
英語教員へのメッセージ
(大川先生)学び続けることがすごく大切で、教員の方たちには意識してほしいポイントです。また、1人ではやっぱり何もできないと思うんですよね。ですので、自分たちが核となり、できるだけ多くの先生たちを巻き込んでいくということを、頑張ってやっていただけたらいいのではないかなと思います。
参加者の声
「大変興味深く、大変勉強になりました。生徒を中心に考える英語教育というベースそのものや、さらにCambridge英検を取り入れていることなど、とても参考になるお話が多くありました。また心理的安全性の確保というところで、生徒のことを第一に考えて、発言・発問できるようなクラス内の環境を整えることもすごく大切なのだなと、改めて思いました」
「学校内での新しい動きをどのように起こせばいいかを考えている現状において、道標となる方法をいろいろと教えていただけ、参加して良かったなと本当に心から思いました」
Allen先生:The ゾウ in the room: Using Japanese in the English classroom
Allen Davenport (Professional Learning and Development Manager at Cambridge University Press & Assessment)
生徒の英語学習に母国語(今回の場合は日本語)を使用することの良い点と悪い点を共有し、「教育的トランスランゲージング」の重要性についてお話されました。これは学習を容易にするため英語と生徒の母国語の両方を使用する教育方法。生徒が英語をより良く学ぶために教員が行える数々の実践的活動が紹介されました。
先生よりコメント
今回のCambridge Dayで最も伝えたかったこと
最も伝えたかったことは、英語の授業に生徒の母国語を使う際には、意図的かつ適切な方法で使うことが大切だというものでした。それができれば生徒が英語を学ぶうえでの利点になりうるからです。英語以外の言語を使って良いかどうかの議論は日本だけでなく世界中で起きています。たとえば、もし生徒が英語の授業中に日本語を発してしまったら。教員はそれを咎める警察のような存在となり、生徒は萎縮してしまう。そのような状況も多く見受けられます。しかし英語との架け橋になるように使えたら、母国語は立派な学習のツールとなります。教員はそのような方向に導けるようにコントロールすることが重要なのです。
英語教員へのメッセージ
私のメッセージは「常に何か新しいことに挑戦してください」ということです。リスクを冒すことを恐れないでください。それがうまくいけば素晴らしい結果を生み出せます。うまくいかない場合でも、成功への道を切りひらく貴重な経験にすることができます。
参加者の声
「授業中に日本語をどれくらい使っていいのかや、生徒が勝手に日本語で話し始めたりするときに、どうすれば良いのかわからずにいました。その疑問をアカデミックな見地から説明いただき、『教員がコントロールして決めたらいい』という言葉には勇気づけられました。とても有意義な時間を過ごせました」
「母国語を少し英語の授業に取り入れてもいいという勇気をもらう内容で、とても勉強になりました。研究結果とかも盛り込んでいただけたので、すごく説得力がありましたし、参加して本当に良かったなと思っています」
佐藤先生・菅原先生:全国初の小・中・高一貫校での英語教育 ~12年を通して、どう子供たちを育てるか~
佐藤 正 先生・菅原 有依子 先生(東京都立立川国際中等教育学校)
全国初の公立小・中・高の一貫校である同校は各学年のうち30名が帰国枠。中国・ドイツ・マレーシアなどの海外で幼少期を過ごしたことから、英語がネイティブ並みの生徒がいれば、日本語が危うい生徒もいるといいます。そのような学校環境における12年間にわたる英語教育が本講演のテーマ。実際に使っている教科書や洋書を紹介しながらの内容に、参加者は熱心に聞き入っていました。
先生よりコメント
今回のCambridge Dayで最も伝えたかったこと
(佐藤先生)全国初の中高一貫校ということで、どのような教育現場なのかに関心を抱いて来てくださった方が多いだろうと思いましたので、まずは概要をお伝えしたいと思いました。小学校の授業の様子もお伝えできて、「何をしているのだろう?」という疑問にはお答えできたと感じています。
英語教員へのメッセージ
(菅原先生)最先端の教育現場だと思われているかもしれませんが、「私たちも結構もがいているぞ」というのはお伝えできればと思っていました。たとえば、どうしたら帰国生の英語をもっと伸ばせるか、どうしたら一般の生徒たちの英語力を帰国生レベルに近づけられるか、といった自問は常にしています。また大学受験での好結果を期待されるなか、一方で4技能をしっかりと伸ばしたい思いもあります。これはおそらくどの教員の方も感じていることだと思いますが、私たちも正解がないなかで試行錯誤しながら、より良い英語教育を模索し実践していきたいなと考えています。