速読目標時間や解答の制限時間の記載が良い!時間を意識して取り組むことで読解の精度とスピード両方の向上が目指せる長文問題集
最終更新日:2023年5月9日
- おすすめしたプロフェッショナル
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京都府私立中高一貫校 I先生 / 京都府私立中高一貫校
SKYWARD 最新入試英語長文20選 CLOUDS Course
桐原書店
- おすすめのポイント
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大学入試での読解の割合が高いため対策が必要だった。そこで本教材を使って、精読と合わせて時間を意識した速読や音読に取り組んだことで、読解の精度とスピード両方が向上したと思う。論旨展開の予測力も向上した。
Q. 対象としたクラスの特徴(学年、人数、授業目標等)
学年と人数:
高2の後期~高3の前期に、中高一貫の成績上位コースで使用。人数は、1クラス約30名で、3クラスあるので合計約90名。
英語能力のレベル感、動機付けの強さ:
レベルは、ほぼ全員が英検2級取得済で、準1級取得者が3分の1いるくらい。
授業目標:
正しい文法理解や豊富な語彙力に基づく読解を重視している。正しい読解ができるよう背景知識の理解を深め、さらに関連事項へと応用できる力を養成することが目標。
個人的に達成したいこと・こだわりたいこと:
学習中の教材を出発点に知的好奇心をさらに深め、理解した内容を適切に表現(スピーキング・ライティング)できるように指導すること。
Q. 課題意識、導入の経緯
各学年で使用する教材は、例年固定ではなく都度状況に応じて担当教員が選択している。昨年度は高2を担当しており、後期から大学入試対策を始める際に長文問題集として導入した。
対象コースの生徒たちが志望している大学の入試(共通テストの2次試験)で読解の割合が高いため、特化した問題集に取り組みたくて長文問題集を探し、扱っているテーマの興味深さと同時に最新の大学入試の傾向を反映しているために本教材を選んだ。
Q. 実際の使い方
授業における展開:
リーディングの授業にて、予習・復習段階も含めて使用している。
1.予習(前提)
生徒は授業までに音声を聞き、単語の意味を調べて、解答を作成しておく。音声はCDがあり、予習/復習で使うことが多い。
2.授業
1ユニットごとに、以下6つの手順で授業をしている。
(1)段落ごとに音声を再生し、意味の塊ごとにスラッシュ区切りを入れた教材(教員が自作)を用いて音読。文節で区切る場合、構造が複雑な場合は細かく熟語で区切る場合もあるなど、スラッシュの区切り方はケースバイケースで判断している。大体1文を2~3個くらいに分けている。習熟度に合わせ学年が上がるごとにスラッシュは減らしていく。
(2)音読に合わせて、概要を捉えながら全員でフレーズ訳をしていく。構造が複雑ならスラッシュ区切り、長くない場合は1文ごとに、音読と訳を繰り返す。
(3)出てきた重要語句、文法事項はその都度確認する。出てきた重要語は、派生形に広げたり文法事項に関しては応用について話すことがある。
(4)設問が出てくるたびに生徒を指名し予習内容を確認。本文中の穴埋めや下線部訳、内容理解に関する記述説明問題はその都度段落ごとに、全体の内容理解に関する設問は全て読んでから確認している。
(5)まとめとして、教員が段落ごとに要約。
(6)教材の内容に関連する記事や映像(教員が本教材外で予め探して用意する)を紹介し、グループワークでディスカッションし、結果を発表する。
3.復習
本文の音読。授業で解説した単語の意味や構文の話などを思い出しながら、自分で読めるスピードで音読し、理解/確認していく。自宅学習状況の確認までは高3では行わない。身に付いているかは定期考査で測る。
週5回ある担当授業のうち本教材を使うリーディングは2~3回で、残りは文法作文に充てている。1ユニットを1週間(授業2~3回)で終えるペースで進めた。ディスカッション(手順6)にしっかり時間を取る場合は3回だが、入試対策なので時間を充分に取れない場合もあり、その場合は2回。全20ユニットが、高2後期〜高3前期の1年弱で終わった。
グループディスカッションの際はICTを活用し、生徒が自分の端末で記事を探して発表資料を作る、その発表資料も教員が用意した関連資料も、プロジェクターで前に映し出して進行するなどしている。
Q.工夫したポイント
授業準備で工夫していること:
できるだけ英語の語順で理解しながら読み下せるようにスラッシュリーディング用の教材を作成している。
ユニット内容に関連した記事や映像を探し、関連したディスカッションテーマ設定も大事な準備の一つ。大学入試の問題を解けるようになることだけをゴールにはしたくない。知的好奇心を刺激して、理解を深めていく、あるいは関連する記事を自分で興味を持って調べるというところに繋いでいきたいという意図がある。
例えば、ユニット3「遺伝子組み換え食物」では、賛成判定両方の立場の映像を見せてディスカッションした。自分がどの立場なのか、生徒なりの論拠を調べて来るような準備が必要なものは、事前に宿題として課している。
ユニット15「坂口安吾の小説『桜の森の満開の下』」では、英訳の一部をカッコ抜きにしたものを準備した。日本語の原作を読ませて、その一部を英訳と対照させながら、カッコ抜きにした部分の翻訳に挑戦させた。各自で取り組んだ後は解釈や工夫をプレゼン発表。生徒たちは喜んでやっている。
評価で工夫していること(あれば):
定期考査で出題する場合には、正しい内容理解ができているかがまず大事だが、テーマに関連して自分の意見を表現する自由英作文の問題を入れたり、プレゼン発表への意欲・工夫なども総合的に評価している。
Q. 実施した結果
生徒の成績の変化等:
色々な取り組みをしているためすべて総合的な結果だとは思うが、時間を意識した速読や音読により読解の精度とスピード両方が向上したと思う。ユニットの最初に速読目標時間や解答の制限時間が書かれているため、復習段階で時間を測って速読した時に何分で読めたか、あるいは予習段階で解答する時にも時間を意識するからだ。
音読は、きちんと理解をした後で理解した内容のスピードアップを図る形で活用している。速読目標は、本当は音読のスピードよりももっと早く処理できるようになる必要があるとは思うが、まずは自分で声に出して読む速度で初見の文章でも理解できるようにということを目標にしている。
また、本教材で取り扱われている多様な題材に触れることで、初見の文書でも、論旨を推測しながら読む力がついたと思う。「以前読んだあれと似てるな」「このような一般論に対して筆者がこのような主張をしていたら、このような結論になるんだろうな」「この実験結果は筆者の主張に基づくとこんな結果になるだろう」のように、論旨展開を予測できるようになった。
授業目標や工夫の意図との対比:
具体的な数値目標立てや生徒一人一人の状況把握まではできていないが、概ね目標通りの結果が得られている。
Q. 今後に向けて
本校は非常に多様なコースがあり学年やコースにより状況が様々なので、教材選びは各教員の自由裁量の余地が大きい。そのため本教材を使って上手くいったということを他学年や他コースの担当教員とも情報共有し、それぞれ採用している教材で得られた力や工夫した点を広く学内で共有していくことが今後の課題になると思う。
使用教材自体は教科会で共有されているがより踏み込んだ内容、どんな成果が得られたか、模試の読解力のこの部分が伸びた、速読のスピードが上がった、リスニングの点数が上がった、など個々の能力がどう上がっていったかを、コースや学年を超えて共有していきたい。
本教材の活用法については、基本的には今までの方法が上手くいっていると思うが、授業は生き物なので目の前の生徒の理解度に応じてやり方を変えていく必要がある。共通テストの読解量が飛躍的に増加しており制限時間内の情報処理が非常に求められるようになってきているので、より速読を意識した使い方を徹底していきたいと考えている。具体的には、精読による穴埋めなど細かい理解を問うより、制限時間内で段落ごとの大きな理解を問う共通テスト形式の問題に作り変えるなど。
- 京都府私立中高一貫校 I先生
- 京都府私立中高一貫校