ロジカル・クリティカルリーディングと論理的な意見を発信する力を身につける!
最終更新日:2023年12月7日
- おすすめしたプロフェッショナル
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毛塚 邦知 / 山脇学園中学・高等学校英語科教諭
Logical English Reading
三省堂
- おすすめのポイント
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おすすめのポイント
文法力・英作文力の向上と社会問題などの知識の増進、生徒の論理的思考力や意見構築力を鍛えられる教材です!
Q. 導入の経緯と対象としたクラスの特徴
2022年度から高校3年生の選択授業のひとつである放課後講習にて導入した。本講習では、教員が生徒の状況に合わせテーマを決めて実施する。課題意識として、自由英作文や英検の面接試験などで自分の意見を明示し、論理的な理由付けをすることが難しい生徒が多いように感じていた。そのような力は受験だけではなく、社会に出た後に生きていくために必要な力だと考えているので、在学中に養いたいという思いがあった。
本来であれば、学年全員を対象として、ロジカル・クリティカルリーディングや論理的に意見を発信する力を身に付けさせるような授業を行いたいという思いはある。しかし、受験を控えた生徒は、志望校の受験に必要・不要で授業への参加度を決めてしまう傾向がある。
そこで、希望者対象の本選択授業にてLogical English Reading3に基づいたディベートベースの授業を実施。2023年度の受講者は6名。少人数だったからこそ、教員も生徒もさまざまな試みに挑戦できたと考えている。
Q. 教材の特徴・構成
文法力、英作文力の向上と社会問題や他分野にまたがる知識の増進、さらにトピックに対して生徒が自分の意見を構築し、論理的な思考に基づいてアウトプットすることを講習の目的としていた。論理的思考力の向上に焦点を当てたテキストがなかなかない中で、本書は本講座にぴったりだと感じ、採用した。
トピックは全部で8つ。「コンビニエンスストアの24時間営業を禁止すべきか」「使い捨てプラスチックは禁止すべきか」「SNSは益よりも害をもたらすか」「宇宙開発は中止すべきか」「児童労働を容認すべきか」「日本に女性政治家のアファーマティブ・アクションを導入すべきか」「ベーシックインカムを導入すべきか」「積極的安楽死を日本で合法化すべきか」という身近な話題からSDGsまで、さまざまなトピックが収録されている。
本冊は、ひとつのトピックに対して見開き1ページで扱っており、Warm Up!、Listening Practice、Dictation Practice、Reading Practiceの4要素で構成されている。
Warm Up!では事前情報なしでトピックに対する自分の賛成・反対意見とその理由を日本語で答える。Listening Practice・Dictation Practiceでは、トピックについての音声を聞き、内容一致の問題や英単語の穴埋めをする。Reading Practiceでは、トピックの情報や賛成・反対の根拠が含まれた140words程度の英文読解と2問の設問に回答する。それぞれ賛成・反対意見をサポートする具体例を選択させる形になっている。
別冊ノートには、語彙の確認や論理展開を表す語句の役割・意味の紹介がある。Writing & Speakingのセクションは、Argument(主張)・Reason(理由)・Example(例/説明)、Argument(再主張)の論理構成でライティングができる形式となっている。生徒は読解した内容をもとに意見を述べる自由英作にも取り組めるので、発信力の向上につながる。
Q. 良かったところ
これまで使用してきた英文読解の問題集などは内容一致の問題が主流だった。内容一致問題であれば単純に本文に記載されている内容を選択肢から選ぶに留まるが、本冊のReading Practiceでの問いは、本文で主張されている意見やロジックを理解していないと回答ができないものになっている。「本文の意見と同じロジックの具体例を1つまたはあるだけ選ぶ」や、「本文の意見に反論するにはどのように伝えればいいか」など、内容理解に加え、思考力が必要となる。
今回は希望者対象の選択授業だったので、少人数での授業となった。その結果、生徒同士がトピックについて意見交換をする機会を毎回設けることができた。他の生徒の意見を吸収しながら自分の考えを構築していく機会になった様子。さまざまな思考パターンや論理展開を知り、さらには自分の意見をまとめるという最終目標にリンクできる教材だと感じた。
Q. 実際の使い方
1回の授業は50分で1トピックを扱う。講習は全8回なので、本講習で1冊を終了するペース。新しい試みであり、また生徒に楽しみながら参加してほしいという思いがあったので、予習は課さず、生徒が主体的に取り組める環境づくりを心がけた。
Warm up!ではトピックへの知識・理解度をディスカッション形式で日本語で確認。Listening Practiceで本文をリスニングしてトピックについての情報を得て、内容を把握し、真偽判定問題を解く。Reading Practiceでの本文読解を通して、分からない単語や論理展開の確認をする。その後、設問を通して、トピックに対する賛成・反対意見への思考を深め、「自分だったらどう考えるか」を別冊ノートに英作する。
授業後は、別冊ノートを参照しながらロイロノートに英作文を書いて提出し、次の授業で添削したものを返却し、フィードバックを行う。
Q. 使ってみた結果
授業の冒頭、生徒が持っている情報を日本語で書き出してまとめるWarm up!では、どの生徒も同じ意見になる傾向が見られた。それが、Reading後のディスカッションでは意見が分かれることがしばしばあった。例えば「コンビニエンスストアの24時間営業を禁止すべきか」では、6人中5人が深夜営業に賛成、1人が反対意見を表明した。賛成理由としては、「便利」「いつでも買い物ができる」などだったが、「客が来ないのに開けているのは電気の無駄遣いだ」という反対意見が出た。その後、ディスカッションを重ねることでさらに意見が分かれ、「深夜に開いてると危険」「電気代が経営の負担になる」といったマイナス意見が出たり、逆に「危険があったときにすぐ駆け込める」といった安全面・安心感での主張が出るなど、多様な側面から考え、意見を構築できたようだった。講習全体を通して、生徒の主体性やモチベーションの向上、物事について考えたり興味を持つきっかけになったと感じている。
Q.授業を実施するにあたって工夫した点
希望者対象の放課後授業なので数字上の評価は付けなかったが、授業中に生徒を褒めることを意識的に行った。ディスカッションの中でいろいろな意見が出てくる度、「いい着眼点だね!」などと必ず生徒を褒めることで、生徒が安心して発言できる環境づくりを行った。
生徒の英作文については、大学入試を外部検定で受験する生徒も多くなっているため、受験対策として語数を英検をイメージした2級の80字から準1級の120字程度の間で書くように指導した。添削時に文法や論理展開などを指摘することで文法力やライティング力の向上につながるようにした。
今回はアウトプット活動が英作文に留まったが、英語によるディスカッションといったスピーキングの活動も少しずつ取り入れたいと考えている。今後は、高校1年生にはLevel1、2年生にはLevel2を、といった形で、適切な時期に適切な教材を採用できればと考えている。
- 毛塚 邦知
- 山脇学園中学・高等学校英語科教諭
プロフィール
山脇学園に2004年度から着任し、現在教員歴は19年。同校では留学や語学研修の担当にも長年従事してきた。生徒に論理的思考力や社会とのつながりを学んでほしいという思いから、英語学習のみならずさまざまな視点を授業に組み込んでいる。趣味は銭湯巡り。