4技能フル活用の授業実践!ラウンド制とトリオ・ディスカッションで教員・生徒がノーストレスで学べる理由とは?

最終更新日:2024年10月30日

「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「書くこと」という英語のアウトプットの強化を目的とした「論理・表現」の授業。英語でのコミュニケーション力を育成しつつ、意見や主張などを論理的に伝える力を養うために、さまざまな授業法を工夫している先生も多いのではないでしょうか。

新潟市立万代高等学校の鈴木啓先生は、論理・表現の授業に「ラウンド制」「トリオ・ディスカッション」を取り入れ、4技能をフル活用させる活動に取り組んでいます。また、授業外ではスピーキング力の向上を目指して、オンライン英会話サービスを利用した「放課後英会話レッスン」も行っているとのこと。「ラウンド制」「トリオ・ディスカッション」のメリットや具体的な取り組み内容のほか、英会話レッスンの効果などについて、お話をお聞きしました。

教員も生徒も焦らず学べるラウンド制授業

――まず、御校の1学年のクラス数や1クラスあたりの生徒数を教えてください。

本校には英語理数科・普通科合わせて1学年に6クラスあり、1クラスの生徒数は40人です。1学年を4人の英語科教員で担当しており、私は今年、高校2年の英語授業を受け持っています。

――ラウンド制とは具体的にどのような授業方法なのか教えてください。

ラウンド制とは、簡単にいうと1年間で教科書を3周する取り組みです。昨年は高校1年生を担当していたこともあり、1ラウンド目は中学校からの接続を意識し、文法を理解し、活用する授業を行いました。2ラウンド目は言語活動に重点を置いた授業、3ラウンド目はディスカッションなど、論理性や即興性が求められる活動をするというように、ラウンドごとにフォーカスする内容を変えながら教科書を繰り返し学ぶ授業法です。4月から始めて11月までに1周目、1月頃までに2周目、学期末までに3周目を終わらせるという計画を立てて学年全体で取り組みました。

――1年間取り組んだ結果はいかがでしたか?

非常によかったと思います。模試の成績が上がるなど、学習効果があったことはもちろんですが、それ以上に教員も生徒も焦らずに学べました。

今までは、テストの点数が悪かったり、ライティングの中で語法文法ができていなかったりすると、「授業でやったじゃん!」とか「今ここで覚えておかないと後で大変だぞ」というような声掛けをしがちでした。ところが、ラウンド制では、1周目の授業で定着していないことがあっても2周目・3周目と繰り返し学ぶ機会があるので、一度で完璧に理解しなくてもよいという心の余裕が生まれます。

「次のラウンドでディベートするときにこの表現が出てくるから、その時までに使えるようにしておこう」と言えるので、お互いにストレスを感じないんです。何度も同じ英語に触れながら理解度を深めていけるので、言語習得という観点から見ても良いやり方ではないかと思います。

また、繰り返し学ぶことで過去の学習の振り返りができるため、生徒自身が自分の学びをメタ認知しやすいというメリットもあります。たとえば、1周目・2周目と同じ箇所を間違えてしまったときに、「前も自分は同じところを間違えた」と気付けるんですね。

――自分ができるところとできないところが、客観的にわかるのはよいですね。2年生と1年生では活動内容が変わるのでしょうか。

1年生の教科書に比べて使用する単語や文法の難易度は上がりますが、基本的に活動内容は同じです。今はちょうど、1年生のときと同じように文法にフォーカスした授業から取り組んでいるところです。高校の英語教科書は、学年が上がっても文法の配列は大きく変わりません。ですので、2年生としては1ラウンド目ですが、実質的には4ラウンド目という感覚でやっています。

――ラウンド制の授業で難しいと感じる点はありますか。

どうしても1周目の負担が大きくなってしまうところですね。かなりテンポ良く進むので、生徒たちも一気に文法をインプットしなければならず大変そうです。とはいえ、「1周目でできなくても2周目・3周目があるからいいよね」と焦らずやっている感じですね。

――ラウンド制の定期考査はどのように行っているのでしょうか。

ラウンドの活動内容に応じて、テスト内容を変えています。1周目は、文法項目に重点を置いた内容にしています。観点別評価の比重でいうと「知識・技能」が60%、「思考・判断・表現」が40%ぐらいの割合です。2周目ではどの領域もバランス良く取り入れ、3周目は「思考・判断・表現」に比重を置き、ディベートなどに関する意見を書かせるようにしています。

授業で習得した内容を、トリオ・ディスカッションでアウトプット!

――トリオ・ディスカッションにも取り組まれていますが、こちらはどのような活動をしているのでしょうか。

上山晋平先生のご著書『英語トリオ・ディスカッション指導ガイドブック』を参考にして、3人1グループになって毎回3分間のディスカッションをします。英語コミュニケーションの帯活動として取り入れています。

自分なりに工夫しているのは、ディスカッションのテーマを毎回生徒に考えさせ、その場で発表してディスカッションを始めるという点です。さらに、ディスカッションだけで終わらず、3分間で自分や友達の考えをライティングし、生徒同士でフィードバックするところまでやっています。ゆくゆくは、ディスカッションのパフォーマンステストも実施しようと考えているところです。

――トリオ・ディスカッションにはどのようなメリットがありますか?

授業で習得した表現をアウトプットできることです。たとえば日常会話であまり使うことのない表現でも、ディスカッションの場があると、そこで使ってみようかなとなるんですね。それに加えてライティングも入れると、4技能をフルで活用することになります。

実は、スピーキング活動としてほかにもさまざまな方法を試したのですが、結果的に生徒たちが一番楽しそうに取り組んでいたのがトリオ・ディスカッションでした。

――生徒さんたちがトリオ・ディスカッションを楽しいと思う理由は何でしょうか?

preferencesではなく、opinionを言えるからではないでしょうか。たとえば「春と夏どちらが好き?」という質問に答えるより、「日本の大学を秋入学にするべきか?」に対して考えを述べる方が、認知的に成熟してきた高校生にとって楽しいのではないかと思います。トピックを自分たちで決めさせているので、ちょっと難しいけれど面白そうだなと感じる題材を扱える楽しさもあるのではないでしょうか。

オンライン英会話レッスンで、スピーキング力がめちゃくちゃ伸びた!

――放課後にはオンラインの英会話レッスンにも取り組んでいるそうですね。

はい。こちらは希望者のみを対象とした活動です。費用が比較的リーズナブルな産経オンライン英会話というサービスを利用し、生徒個人の端末を使って外国人講師とマンツーマンの英会話レッスンをしています。

――レッスンを始めたきっかけや、具体的な取り組みの内容を教えてください。

本校では夏休みに希望者を募ってロンドンへの研修旅行を行っています。その準備の一環としてスピーキングのトレーニングをしたいと思い、始めてみました。レッスンは3日に2回ほどのペースで30分ほど行っています。終了後はその日に習った英語表現や、使いたかったけれど言えなかった言葉などを振り返り、スプレッドシートに書かせています。

――生徒さんたちの反応はいかがですか?英語力には変化があったのでしょうか。

レッスンを始める前に比べて、スピーキング力がものすごく伸びました。教科書では扱わないようなスラングや、困ったときの頼み方など、日常会話で必要な表現を習得できましたし、次のトリオ・ディスカッションの授業に生かしている生徒もいます。やはり、スピーキング力を伸ばすためには、自分の英語力を試せるアウトプットの場をいかに確保してあげるかが大事なのだと思います。

――3日に2回というペースも功を奏しているのかもしれませんね。いわゆるPDCAを早く回せるのがよさそうです。

そうですね。もう本当にめちゃめちゃ伸びたので驚いています。ほかの学校もぜひやってみてほしいと思うほどです(笑)。3月(オンライン英会話開始時)と8月に同じ外部テストを受けたのですが、特にリスニングのスコアが信じられないくらい伸びていました。英会話で伸びた部分も大いにあると思いますが、それ以上に英会話がモチベーションを高めてくれて、生徒が自主学習に励み、その成果が出たのだろうと考えています。

――オンライン英会話は、ロンドンへの研修旅行が終わった後も続けるのでしょうか。

レッスンは全部で100回あり、ロンドンに行くまでに75回を終わらせます。残りの25回は、夏休み明けに事後学習として取り組む予定です。その後は冬休み明けにあらためて希望者を募り、第2クールとして始めようと思っています。いずれは、英語科だけでなく、普通科の生徒も含めた活動へと広げていきたいですね。日常生活の中で英語をアウトプットする場があることが、英語力アップの一番の近道だと思います。そのような機会をこれからも提供していきたいと思っています。

 

取材・構成:松山まりな/編集:小林慧子/記事作成:白根理恵

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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