
【著者インタビュー!】英語教育の質が変わる! 豊富な実例を網羅したICT活用ブック
最終更新日:2025年9月9日
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田中 周作 / 明治大学付属中野中学・高等学校
英語の授業と家庭学習が変わる5領域別ICT活用術
大修館書店

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おすすめポイント
4名の共同執筆で制作された本書。著者は大学の准教授1名と、小学校・中学校・高校からそれぞれ1名の教員という、多様な英語教育の経験を持つエキスパートたちです。内容は、1名1台端末という現代の教育現場において、「持っているだけ」の状態から、「実際に活用できている」状態へ移行する一助となるような、実践的なICT活用アイデア集となっています。
とくに、各校種における4技能5領域それぞれにおいて、ICTの「何を」「何のために」「いつ」「どのように」使うのかについて、具体的な事例を豊富に盛り込みました。そのうえで、単なるICTツールの紹介ではなく、「なぜそのツールをその場面で使うのか」という必然性や、「ICTの活用で生徒たちの英語学習はどう変わるのか」といった点にフォーカスしています。
一読してもらえれば、ICTへの苦手意識を抱いていた英語教員の方々も「これなら自分にもできそうだ」と感じられるはずです。ICTを効果的に使った授業は楽しく、生徒たちを引き込みますから、英語の学びに対して、生徒たちがより主体的に、より楽しさを見出していく第一歩として本書をご活用ください。
本書の概要
英語教育のエキスパート4名が、自ら蓄積してきたICT活用術を共有します。
私以外の肩書きはいずれも執筆当時のものになりますが、共同執筆者は次の4名。すべての章の「学びの新たな広がり」と「先行研究との関連」、「コラム」などを執筆したのは小林翔氏(大阪教育大学初等教育部門准教授)、小学校の章を古屋雄一朗氏(茨城県教育庁学校教育部生徒支援・いじめ対策推進室指導主事)、中学校の章を私、高等学校の章を田淵香奈子氏(関西大学外国語学部常勤外国語講師かつ神戸学院大学非常勤講師)がそれぞれ担当。各校種における4技能5領域でのICT活用実践例を網羅したことで、想定読者である英語教員の方々には、自身の担当する校種や伸ばしたい技能に関する参考事例を見つけやすい内容になっています。
執筆の背景にある課題意識
ほとんどの学校で1名に1台の端末整備がなされたにもかかわらず、現場の教員が十分に活用できていない現状をどう変えるか。これが執筆にあたり、私たち著者が共通して抱いていた課題意識です。実際のところ、ツールを効果的に使えている教員は少数派なのではないでしょうか?
では、なぜICT端末を“持っているだけ”になってしまっていたり、“活用法が広がっていない”のか。その背景には、いくつかの理由が考えられます。まず、純粋に「使い方を知らない」ということです。どのようなツールがあり、それが授業においてどう使えるのかを、そもそも知らない。知っていたとしても、新しいツールの操作を覚えたり、授業に取り入れるための準備が面倒だと感じてしまうこともあるでしょう。「端末がなくても、これまでのやり方で授業はできる」という意識も、新しい挑戦へのハードルを上げてしまっている側面があると思います。
そして本書では、こうした状況を前提に、ICTが使えるようになるアプローチを提示したいと考え制作しました。
実際の使い方
授業でのICT活用において最も重要なポイントの一つは「何をするか、目的ありき」だということです。つまり、「この技能を伸ばしたい」「この活動をより活性化させたい」といった明確な目的意識を持ち、そのうえで適切なツールを選択して使うことが大切になります。
なぜなら、「授業の導入部分で生徒の関心を引きつける」「学習内容の定着をはかるためのアクティビティとして活用する」「生徒同士の意見交換や発表の場に使う」といった目的それぞれで、適切なソフトやアプリは異なるためです。しかしICTツールを使い慣れていないと、どれが最適なのかの判別は難しく、そこで本書では実践例を紹介しています。
一例は、ゲーム感覚で学習できるクイズ系アプリ。こうした“楽しさ”が重視されるアプリは、授業の最初や最後に取り入れると、比較的短い時間で生徒の集中力を向上させたり、学習内容の振り返りにより良い効果が期待できます。反対に、もし授業の真ん中で活用してしまうと、生徒が盛り上がりすぎてしまい、その後の活動に影響が出てしまうことも。ICTツールの特性によって効果的な使用タイミングは変わることから、“必然性”を考慮した使い方も提案しています。
工夫したポイント
“誰にでも実践的で、使える内容”を目指し工夫した一つは、小・中・高等学校という幅広い校種における、4技能5領域にわたる実践例を網羅的に紹介している点。英語教員のどなたにでも参考になるアイデアが見つかるだろうと考えています。
各章で紹介しているICTツールは、その選定においては意図的に重複を避けました。できる限り多様な選択肢を提示して、それぞれの読者が最適なものを選べるようにするためです。意識した選定基準は、ICTの活用により「今までとは違う授業アプローチを可能とする」「生徒のモチベーションを向上させる」「生徒全員が授業に参加しやすくなる」という3つ。たとえば「ワードウォール(Wordwall)」はゲーム感覚で学習できるため、生徒の“遊び感覚”を刺激し、学習意欲を高めてくれることを選定理由にしています。
ツールは20種類ほど紹介しています。そのため「これ使ってみたい」「これは自分に合っているかも」というものが見つかると思いますし、すでにICTに親しんでいる方には、「このような使い方があったのか」という発見を感じていただけるはずです。またICTに不慣れな方も安心してトライできるよう、ツールの登録法やアカウント作成法といった基本的な操作手順を可能な限り仔細に、分かりやすく記述しています。
想定される効果
ICTの活用によって教員と生徒の双方にさまざまな良い効果が期待できます。教員のメリットとしてまず考えられるのは業務負担の軽減です。以前に私も経験しましたが、大学入試の添削指導などは、一度自分で解いてみる必要性もあるため多くの時間を必要とします。しかしChatGPTのような生成AIを活用すれば、生徒が自分でフィードバックを得られるようになり、教員の負担を大幅に軽減できるのです。
授業における活動のバリエーションが増えることも大きなメリットで、単調になりがちな授業にメリハリが生まれ、生徒の集中力を維持しやすくなります。クイズ形式で楽しく学習する時間、ペアやグループで活発に意見交換する時間、静かに集中して取り組む時間など授業の展開が多様になり、生徒たちは飽きることなく、楽しみながら英語を学べるようになります。
そしてこの授業へのモチベーション向上が、生徒側の最たるメリット。ゲーム性やインタラクティブな要素は、生徒たちの「楽しい」という感情を引き出し、「もっとやってみたい」という意欲を生み出します。
今後に向けて
ICT活用というと「難しそう」「面倒そう」といったイメージがあるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。本書には授業が“楽に”“楽しく”なるヒントを詰め込みました。まずは1つでも良いので、ぜひ気になるツールにトライしてみてはどうでしょうか?
また、ICTの世界は日々進化しています。新しいツールや機能が登場するたびに、自身の知識やスキルをアップデートしていくことが、これからの時代に求められる教員像といえるでしょう。私自身も、執筆を通して、これまで知らなかったツールや活用法に出会えました。「オックスフォード・アウル(Oxford Owl)」や「ワードウォール」は、まさに執筆の過程でその魅力を再発見し、自身の授業に取り入れたものです。
取り組めば、必ず授業法の新しい可能性と出会えるのがICTです。本書をきっかけに関心を抱く教員が増え、ひいては生徒たちの英語学習がより豊かなものになることを期待しています。

- 田中 周作
- 明治大学付属中野中学・高等学校
プロフィール
明治大学付属中野中学・高等学校 英語科 教諭 北海道函館市出身。 東京学芸大学大学院教育研究科修了。 2014年に東京都教育研究員、2015年-2016年に東京都教師道場助言者として活動。2018年に英検主催英語教員海外研修に参加。趣味は武道(合気道、剣道)…