形式的授業からの脱却~アウトプットを中心とした授業を通じて学びに向かう姿勢を育む~

最終更新日:2022年6月8日

1.授業概要:授業の対象者、人数、目的

■対象学年:特進コース3年生  コミュニケーション英語Ⅲ ※令和2年度実施例

■人数:20名程度

■目的:インプットとアウトプットのバランスを考慮し、生徒同士のコミュニケーションを重視した授業を行うことにより、主体的・対話的で深い学びを実現する

 

2.課題意識:どのような課題を乗り越えたいと思ったか。また、課題解決のポイントがどこにあると考えたか

講義型の授業では、生徒間に溝ができてしまうと感じていた。特進コースの中でも生徒の学力差は大きく、中学からの基礎学力のある生徒は授業を理解し英語力を高めていけるが、基礎学力の低い生徒は苦手意識が増していき、その溝はどんどん深まるばかりだった。

そんな折、2014年頃から英語教員向けの外部研修に参加するようになった。研修の中では模擬授業も行われ、私は生徒役で参加した。実際に授業を体験してみて、教師から一方的に教えられるより、自分で考えて表現し合う学びの方が断然楽しく、理解も深まると感じた。

そして、「間違ってもいいから喋っていこう、僕たちはAIじゃないから」という講師の言葉に衝撃を受けた。当たり前のことだけど気付いていなくて、自分も生徒に完璧な英語を求めていた。

生徒同士のコミュニケーションの大切さを実感した。インプットが大半の授業から、アウトプット活動をできるだけ多く取り入れた、コミュニケーション重視の授業に方針を変更した。

 

3.授業設計方法とポイント:学期における構成、必要に応じて学生等からの取得情報や他教員・教科との連携

教科書は「MAINSTREAMⅢ」を使用している。単元ごとの達成目標に応じて、授業時間数とアクティビティ内容を計画する。例えば、高校3年生の1学期に扱ったChapter1「The Legacy of Kano Jigoro」では、6回の授業時間を使って、下記のような指導計画を立てた。

他の単元も6単位以内に収める。週に英語の時間が6単位あるので、1週間で一つの単元が終わる感じで計画している。

4.授業準備とポイント:準備するテキスト、ITツール等

毎回の授業で新出単語の確認を行うため、それに用いるクイズ形式のプリントやフラッシュカードを用意する。前の週に翌週の授業6時間分のフラッシュカード(新出単語を中心に12~20個程度)を作成する。

 

5.授業実施とポイント:授業の具体的な進め方、授業中の説明や求めたアウトプット

1回の授業内での活動は下記のステップで行う。

 1. アイスブレイク:生徒が英語を使いたいと思えるように、毎回の授業の冒頭5分くらいを用いて、アイスブレイクとなる活動をペアで行う。
アイスブレイクの活動内容は、アメリカの無声CMを見て内容を相手に説明する、相手に見えない図形を口頭だけで説明して書いてもらう、動物園の案内係と来園者になってやり取りする、など8パターンほどあり、それをローテーションで扱う。それぞれのやり取りで、言いたかったけど言えなかった単語を調べて書き出し、新出単語として覚える。どんな単語が出たか何人かに当てて紹介してもらう。

2. 新出単語の確認:生徒が各自で単語学習カードやノートを見直す時間を5分くらい取った後、教員が新出単語が書かれたフラッシュカードを提示し、生徒が全員で一斉に答える。新出単語の確認は毎時間行っているため、単元の最後の方の授業では、多くの生徒に新出単語が定着しており、フラッシュカードが示されると、生徒は大きな声で単語を発音したり、意味を答えたりできるようになっている。

3. 本文の内容確認:まず教員が教科書の本文のフレーズを読み上げ、生徒が全員で復唱。次に、生徒を起立させて、各自が音読を1回する度に時計回りに90 度回転し、4回読み終えて正面を向いたら挙手。そして2周目に。3~4分間くらい続ける。その後、本文の内容について、生徒に英語で質問し、指名された生徒が英語で答え、本文の内容を確認していく。

4. Retell:ボランティアを3人くらい募り、本文のリテリングの簡単なプレゼンを発表してもらう。

5. プレゼンテーション(6時間目のみ):単元の内容をすべて学習し終えたら、6時間目はスモールプレゼンテーションを行う。各単元の内容にあったプレゼンのテーマ設定を心がけている。例えば、上記の「The Legacy of Kano Jigoro」の単元では、発表のテーマは「オリンピック・パラリンピック終了後、建てられたスタジアム等の施設をどのように使用するか?」というもので、SDG’sへとつながるヒントが得られるようにテーマを設定した。
4~5人のグループプレゼンで、一人あたり2~3分ずつ設定して行う。本校は部活が盛んなため、プレゼンの準備は宿題ではなくなるべく授業内(5時間目の最後)で時間を取る。5分程度で原稿を書かせて回収し、正しい英語を覚えてほしいので、ALTに渡しプレゼン前にチェックしてもらう。その原稿を6時間目の初めに返却して、5分程度で各自が覚え、プレゼンを行う。

 

6.評価とポイント:授業内外での評価方法、フィードバック方法

授業時間ごとの達成目標に応じた評価法を設けている。例えば、

・「速読力を身に付ける」ことを目標とした授業では、速読Wpm(1分あたりに読めるワード数)を生徒各自に計測させ、得点を出す。(一定の文章を何秒で読んだかを計測して「単語数÷秒数×60秒」で得点が出せる)そのスコアを速読表に記入して提出させる。定期考査ごとに伸び率を見る。
・各単元の2時間目・4時間目に行う「同時通訳法」(前半・後半の2回に分けて行う)では、教員がクラスを回って生徒の発話を聞き、同時通訳シートに評価を記入する。(正確性・内容の理解度・流暢さの3ポイントで評価)
・6時間目のプレゼンテーションでは、聞き手役の生徒が、ルーブリックに基づいた内容や伝え方に関する評価とコメントを評価シートに記入し、プレゼンテーション後には英語で質疑応答を行う。

 

7.授業を実施した上での成果と課題:想定通りに進んだか。また、得られた成果や判明した課題

英語学習にポジティブな生徒が増え、どの学力層の生徒も英語力が向上した。特に、下位層の生徒の英語力が底上げされ、課題となっていたクラスの中での英語力の差が縮まった。

入学時に模試の偏差値が30台だった生徒の半数以上が、卒業時には60~70台に上がっている。

 

.授業を参考にする先生へのメッセージ:上記を参考にして自分で実施をする先生へのアドバイスや期待すること

アウトプット活動において大切なことは、間違いを恐れずに英語で表現する力を身に付けることだと思う。そのために、生徒にはアウトプット活動に「ARE(Assertion, Reason, Evidence)」の要素を入れることを繰り返し伝えている。特にEvidenceについては、生徒が実体験したことがEvidenceになっていくので、英語に限らず、体験する機会を増やすことを大事にしたい。例えば、ボランティア活動を通して地域創生に関わり、それを英語でどう表現するのか。「思い」を持って話すことができる生徒の言葉は伝わる。

AREを意識することで、自分の思考が深まり、相手を納得させられる伝え方が身に付く。アウトプット活動が深い学びへとつながるために大切な要素であると感じている。

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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