学力差のあるクラスでボトムアップさせつつ全員が満足する授業にするポイントとは? 英語が苦手な生徒には勉強のHowとWhatから教えることが重要!

最終更新日:2023年8月22日

「英語のクラス」と一口に言っても、在籍する生徒は多様です。習熟度を例にとっても、大きな差があり、授業運営の難しさに直面されている先生方も多いのではないでしょうか。小学校での英語授業の必修化により、近年、英語が苦手な状況で中学校に入学してくる生徒も多いと聞きます。そこで今回は、英語授業に関する数多くの著書を出版され、大規模校から小規模校までさまざまな学校にて教べんをとられてきた北海道厚真町立厚南中学校の大塚謙二先生に、学力差のあるクラスでの学習方法についてお聞きしました。(聞き手・松山)

学力の二極化を解決したい

———まず、現在、先生が考えている課題意識や問題意識について教えてください。

(大塚 )中学校は、子どもたちが自分の進みたい高校に進学し、将来の進路を切り開くための場所だと思っています。英語力を上げれば受験でも有利になるし、英語を本当に好きになれば将来専門的に勉強する子も出てくるでしょう。そういった進路実現のひとつとして、英語を武器にしてあげたいと考えています。

また、最近は学力が二極化しており、勉強ができる生徒は3割程度で、勉強に苦手意識を持っている生徒の方が多いのが現状です。英語教育の場でも、学習内容がどんどん増えて難易度も上がってきており、ついていけない生徒が増えています。そういう生徒たちをなんとかして高めてあげなければいけないとも思っています。

英語が苦手は子には、勉強のHowとWhatを教えることが大切

——— 6割の勉強が苦手な生徒たちをサポートしていくために、授業づくりで大切にしていることを教えてください。

(大塚)勉強に対する「How」と「What」をきちんと教えることを重視しています。英語が苦手な子は、そもそも勉強そのものが苦手です。小学校の頃にほとんど勉強せずに中学に入り、テストで悪い点を取って勉強が苦手だと思い込んでいる子もいます。そういう子どもたちの中には、何をどう勉強していいのか分からない子、つまり勉強に対してメタ認知できていない子がたくさんいるんです。

例えば、単語の暗記にしても、勉強ができる子は覚え方を教えなくても自分でローマ字やフォニックス的なものを組み合わせて覚えられます。しかし、勉強が苦手な子は、単語を覚える方法が分かりません。覚え方を丁寧に教えられてきていないからです。

メタ認知の差は性格にも起因するため、高めるのは簡単なことではありません。しかし、学校での指導が重要だというのも事実です。中学校に入学してきた段階でそういう指導をされてこなかった生徒に対して、どのようにカバーしていくかということを意識して指導しています。

また、小規模校だからできることですが、家庭でどのくらい学習しているかを細かく見るために、ワークなどの副教材を誰がどこまでやっているか全て記録しています。以前は1学年7~8クラスほどある大規模校にいましたが、今にして思えば、当時は全然見てあげられなかった子どもたちがたくさんいました。やはり、真の英語教育は、3学年を全部見られるような状態が一番望ましいのではないかと思います。

———英語学習の「How」と「What」を教えるために、具体的にどういった活動をしているのでしょうか。

(大塚)まず、生徒たちには、外国語を学習するときの基本的な知識として、「語彙」「 文法」「音声」の3つが非常に重要だと伝えています。この3つの要素を学習する方法をひと月ぐらいかけて、1年生にはオリエンテーションを混ぜながら、授業していきます。

学年の最初の1時間で一気に教えても生徒はできるようになりません。文法を勉強するときに文法の勉強の仕方を、ワークをやるときにワークのやり方を、というように実際にやってみないと分からないと思います。生徒にあらかじめ「勉強の仕方」というプリントを渡し、それに沿って時間をかけながらやっています。

———生徒に変化は現れたでしょうか。

(大塚)教員になった初期の頃から続けていますが、自分で勉強できるようになった生徒は増えてきています。しかし、本当に勉強が苦手な子どもたちにとっては、なかなか難しいのが現状です。以前は勉強で困っている子を何とかしたいということを中心に考えてやっていました。しかし最近は、成績上位の子どもたちも含めて、同じ授業内で全員がきちんと満足するにはどう授業を進めていけばよいかということも考えながらやっています。

ボトムアップのためにスキャフォールディングを活用

———勉強の仕方を教えることと、成績上位の子をより伸ばしていくことは、一見すると相反する活動のように見えます。学力差のあるクラスでは、どのような授業をしているのでしょうか。

(大塚)スキャフォールディングを取り入れています。つまり、分からない生徒にはヒントを与えて、学習への足場がけをしてあげるということです。通常、1つのコミュニケーション活動をすると、うまくできる子とできない子が出てしまいます。それを「仕方ないこと」とせずに、英語が苦手な生徒も、自分の習熟度に合ったヒントを使ってできるようにしてあげるということです。

 

(小学生行われる簡単な単語あてゲーム。サンプルを出すことで正確さを高める)

(中1で三単現のSを学習した後、Word Guessing Gameとして難易度を上げる)

例えば、最近よくいわれているリテリングでもスキャフォールディングを活用しています。英語ができる生徒には何も見ないでリテルさせるけれど、分からない生徒には教科書を見させたり和訳を見させたりと、学習レベルに応じていくつかヒントを用意しておくんです。こうすることで、生徒が自分に必要なものを選び取ってリテリングできるようになります。

———このスキャフォールディングの手法は、ほかの先生にも伝えたり広めたりしているのでしょうか。

(大塚)数年前に教科書の本文を学習させるためのワークシートを作って、「お助けシート」として私のセミナーに来てくれた先生方には配っていました。今回の教科書改訂後に、胆振の学校の先生方十数人と分担して新しく作り直したので、現在は多くの学校で使われています。

シートには本文の和訳問題や新出単語の練習問題などが載っており、学力のレベルに合わせて、できるところまでを少しずつやりながら勉強の仕方を覚えていけるようになっているのが特徴です。習熟度ごとに学習の到達レベルを変えることによって、1つの授業で学力差がある子たちを指導していくという目的も達成できます。

———都会と地方という地域の違いによって、英語学習への動機付けは変わるのでしょうか。

(大塚)今の時代は どこにいても違いはないと思います。最近はALTも増えましたし、普段外国人と触れる機会がない地方の子どもたちも、ネットで外国の音楽を聞いたり映画や動画を見たりできます。英語を生かした仕事をしたいという外発的動機に地域の違いはあっても、本当に英語が好きだから勉強するという、内発的な動機付けに関してはあまり大差はないと思います。

4技能を統合させるには、インプットだけでなくアウトプットが重要

———2020年度の英語教育改革によって、授業に変化があったでしょうか。

(大塚)4技能の統合という部分に関しては、耳で聞いた英語を発話させたり書かせたりなど、「インプットしたものをアウトプットさせる」ということを意識して授業しています。かなり難易度は高くなっていると思います。生徒にとって、英語を書くということは特に難しいようです。ほかには、即興力を高めるために毎時間即興でスピーチをさせています。

(生徒に共有しているスピーチの基本形。しっかり身につけておくと英検3級のライティング問題にも対応できるようになるという)

———4技能統合・スキャフォールディング・ボトムアップを組み合わせた活動について教えてください。

(大塚)4技能の中で、一番難しいけれどできたらいいのは「英語を書ける」という状況です。ですから、なぜ即興スピーチをやらせているかというと、英語を書けるようになるための前段階として、「言える」という状態を作るためもあります。つまり、音声でアウトプットできるようになっていれば、英語が書ける直前の状態にある、といえるわけです。

本文のリテリングもその一環で、自分で言える英文を作っていくと「Lexicalized stem」という語彙化された木の幹のようなものができていきます。そして、そういう「幹」がたくさんできれば応用も利くようになります。例えば、「I go to Sapporo」 と言えれば、「I go to Tomakomai」とも言えますよね。そういう状態をとにかく作っていくようにしています。例えば自己紹介をさせるときにも、授業で習った動詞や文法などをどんどん使っていくことで、文章のパターンをいろいろ変えて作っていけますよね。

そのときに、自己紹介の基本形となるものを1つ提示しておくと、それがスキャフォールディングになるんです。徐々にスキャフォールディングをなくしていって、自力でやらせるようにしていくと、多少の間違いがある英文だとしても、子どもたちは英語を話せるようになっていきます。

いろいろな種類の英文をインプットしてあげると同時に、アウトプットする場所を作ることが重要です。たとえインプットしたことを忘れてしまっても、繰り返し思い出させる場面を作ることで、徐々に定着し、完全に記憶に残せるようになるのではないでしょうか。

どんな小さなことでも生徒に「できた」と思える瞬間を作ろう

———最後に、スローラーナーやモチベーションの低い生徒の英語学習に悩んでいる先生に、一言お願いします。

(大塚)どんなに簡単なことでもよいので、生徒に「できた」という気持ちを持たせることが大事です。例えば、「Wednesday」という単語を書かせるときに「 ネイティブでも、Wednesdayのスペルをウェドゥネスデイと覚えているんだよ。だからウェドネスデイと書いてごらん」と言って書かせてみるだけでもいいんです。どんな場面でも、「できた」と思える瞬間を作ってあげることが一番重要じゃないかと思います。

 

(取材:松山まりな/構成:小林慧子/記事作成:白根理恵)

この記事を書いた人

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