アウトプット活動を「おまけ」にしない! 蓄積16年のノウハウをお伝えします

最終更新日:2023年12月18日

アウトプット活動の重要性が近年ますます認識されている中、学習指導要領もまた、その方針をより重視した内容へと更新されました。しかし、「具体的にどのようにアウトプット活動を行えば良いのか」、手探りの先生方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、2007年頃からアウトプット活動に焦点を当てている東海大学付属相模高等学校の中村大志先生にお話を伺いました。中村先生は、同校のアウトプット活動推進のご経験を活かして学外で教科書の編集にも携わっておられます。授業にアウトプット活動を取り入れる際の具体的なヒントが詰まった同校の取り組みをご紹介します。

アウトプット活動の概要

———アウトプット活動はどのような経緯で導入されたのですか?

(中村)2007~2009年まで、英語教育重点校SELHi(セルハイ)の指定を学校で受けた頃から始まりました。3年間、東海大学の先生方の指導を受けて「教科書のメインテーマを元にしたライティングを通して論理的思考力をつける」ことに取り組んだ中で考えてきたことでした。日頃から、全国に14校ある大学付属の高等学校向けに大学が実施してくれる教員研修での学びもベースになっています。コミュニケーションを中心に置いた指導法を学びました。こうして基礎ができた後、約15年間で発展させながら確立していきました。

———先生の英語授業は、どのような流れで進められるのでしょうか?

(中村)「英語コミュニケーション」の授業で、教科書の1レッスンごとに、以下の図のような流れで授業を進めています。Introductionの後、生徒とやり取りしながらワークシートの表を解き、発展活動(“Extended Activity”)でアウトプット活動時間も十分確保し、最後に文法事項をフォローします。基本的に教科書の内容に関係する部分は英語で進めています。クラスの人数は、英会話や英語表現の授業と異なり習熟度別に分けないため、ホームルームクラスのまま46名前後です。

 


導入資料は作り込み過ぎない

——— “Introduction” から順に、各工程での詳しい授業内容を教えていただけますか?

(中村) 最初の“Oral Introduction” は、学ぶトピックの内容把握だけでなく、いくつか重要な役割があります。教員が想定しているよりも生徒はさまざまに異なる背景知識を持っているので、「共通認識を引き出して地ならしをする」役割がひとつ。「興味付けを図る」役割も重要なので、楽しい雰囲気づくりも欠かせません。授業の最初の5分くらいの入りはとくに大事で、「いかに英語を発話させて英語を話す雰囲気にさせるか」にも注力します。授業の後半からでは英語への切り替えは難しいからです。

基本的には写真を見せながら生徒とやり取りをします。注意したいのは、生徒に見せるものを教員が作り込み過ぎないことです。たとえば、ウルルの話だから場所がわかるようなやり取りをしようと、「ウルル」「エアーズロック」「オーストラリア」の写真を提示したとします。しかし見てすぐにわかるキーワードでは、生徒に発話させていたとしても、教員が言わせたい答えを誘導して生徒にただ言わせている授業になってしまうのですよね。意外と雑然とした板書の方が生徒自身の言葉が出てきます。

日本の生徒はとくに「正解を言わないといけない」先入観があるので、それを壊してあげるような仕掛けが必要だと思います。私なら、写真は1枚程度で良くて、たとえば生徒にオーストラリアの形を黒板に書いてもらい、いくつかマグネットでも置いてウルルの場所を当てさせますね。ペアワークである程度の時間を与えて、正解・不正解関係なく英単語のキーワードをいくつ書けるかを競う方法もあります。

ペアワーク・グループワークのポイント

———レッスンの流れの第2段階Part 1~3のインタラクションでも実施されている、ペアワークやグループワークはクラスの人数が多いと大変ではないですか?

(中村)添削が多少大変になるくらいで、授業をする上では30人でも46人でもそれほど変わりません。ただ、ペアやグループの作り方を工夫しないと、どうしても参加できない生徒が出てしまいます。たとえばペアを作るときに、席の前後でペアを作るよりも、黒板を見た状態で横にスライドさせて作ることが多いです。

タイマーを使うことも重要です。例えばタイマーが鳴ったら、「グループワークの時間は終わり。今からは教員の話を聞く時間だよ」のように、タイマーで区切ることで「今が何の時間なのか」の切り替えをしています。

———各ワークに取り組む人数は、どのように判断されますか?

(中村)難しいタスクに取り組ませたいときは、4人グループにして教えあってもらうようにしています。ただ、どうしても1つのグループの人数が多いほど誰かに頼り過ぎるリスクもあります。そのため、「ひとりで取り組む時間をまず設けた上で、どこまでできたかをペアでシェアする」や「ペアでまず取り組んでから4人でシェアする」といたメリハリも必要です。ひとりで取り組んだ方が良い場合としては、教科書の内容を読んでどこまで理解できるかという純粋なリーディング部分です。まずは自分ひとりでやってみないとどれくらい理解できるか本人が認識できませんよね。

以下のように情報を表などにまとめながら取り組みます。

「自分ごと化」で定着させる

——— レッスンの流れの第3段階 “Extended Activity” とは具体的にどのような活動なのですか?

(中村)レッスン内容から発展させて、トピックや時間配分により、ライティングまたはスピーキングの活動をします。タスクを「自分ごと化」することで、理解にとどまらず英語学習を定着させることが目的です。たとえばトピックが「色の心理的効果」だった場合、「インテリアデザイナーとして、クライアントに部屋の配色を提案しよう」というライティング活動をしました。

( “Extended Activity” の課題例)

添削はあえて細かくやらない

———ライティングの添削は、生徒数分、文法も内容もチェックするとなると大変ではないですか?

(中村)たしかに大変ですね。でもだからといって「添削が大変だからライティングさせない」では本末転倒で、比重を調整して対応しています。試験問題の場合はきちんとチェックしますが、授業内でのライティングは「教員が意味をわかるか」だけを見ていて、あえてあまり細かくは添削しません。よく、生徒が何を書いているのかが理解できないときに、教員が一生懸命に解釈して書き直す、ということがあるかと思います。しかしそれでは時間がかかるので、ただ「わからない」とコメントをして返すようにしています。それに、教員が細かく添削しても意外と「頑張って書いたのにこんなに直されてしまった」と、生徒の動機づけを下げてしまうことも多いようです。

スピーチを評価する場合も、英語のトラディショナルな授業では「姿勢」が評価項目に含まれているケースもあるので要注意です。アウトプット内容に直接関係ないところを注意されたら嫌になってしまいますよね。


(生徒のライティングと添削例)

表と裏を逆にしない。「文法」は裏

———文法を扱うのは、各レッスンの最後ですか? 前段階の、たとえばアウトプット活動では使うと良い文法事項などは教えていないのですか?

(中村)教科書の1レッスンが3~4パートに分かれていて、各パートに書かれているターゲットの構文を全パート終了後にまとめて扱っています。アウトプット活動で使えるように伝える場合は、「こんな表現があるよ」という出し方をしますね。ただ、教科書のターゲット構文が、活動で使える表現とぴったり一致しない場合の方が多いので、あまり意識しなくても良いのかなと思います。

「今日はSVOCの授業をやります」と解説した文法を使わせるような授業では、コインの表と裏が逆なのですよね。あくまでも表は「内容理解」や「内容把握」、「関連するアウトプット」で、支える裏面が「文法」や関連知識です。教員の視点としては、表の内容に関することをやりながらも、プロフェッショナルとして使っている文法項目を少し意識します。生徒側は純粋に「内容に関して」しゃべったり聞いたりするように意識を向けることがポイントです。

生徒への影響

———アウトプット活動を通して、生徒さんの英語に対する考え方や取り組み方に変化はございましたか?

(中村)英語を使う・話すという面では、苦手意識が少なくなりました。継続して受験しているGTEC検定の結果でも、スピーキング・ライティングは平均より大幅に高いです。

片や、生徒のアンケート回答には「授業は楽しいけれど、もっと明示的に文法を教えて欲しい」との意見もあります。真面目な生徒ほど、授業・勉強のあるべき姿に古い意識を持っている場合もあるので、その意識を変えさせるところが意外と難しいですね。

導入の難しさと解決のためのヒント

———大規模校で先生の人数も多いと、アウトプット活動の取り組みについて、教員同士の足並みを揃える難しさはございませんか?

(中村)たしかにあります。英語科だけでも20名以上おり、忙しい中で研修にさける時間もあまり取れません。解決の肝になるのは「毎回の定期試験に、アウトプット活動での取り組み内容と連動した問題を出す」ことだと思っています。どうしても、定期試験に出ないと、生徒は「おまけ」のように感じてしまい、教員自身も忙しくなってくると「今回はいいかな」となってしまいます。試験にライティングを入れるなどして、アウトプット活動と試験や成績が連動している共通認識を持つことが担保になるでしょう。共通目標に向けての細かいプロセスは各教員で異なっても良いと思います。

(定期試験での出題例)

 

(取材・構成:小林慧子/記事作成:松本亜紀)

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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