【後編】来年からすぐ実践・先生がペラペラ話さなくても大丈夫!オールイングリッシュ授業攻略ワークショップ
最終更新日:2023年4月26日
新学習指導要領では、英語の授業を実際のコミュニケーションの場とするため、授業は英語で行うことを基本とすると定められています。みなさんの授業では実践できていましたでしょうか。「やり方がわからずできなかった」という方も多いかもしれません。
そんな先生方へ朗報です。オールイングリッシュ授業と言っても、先生方が英語で喋り続けて生徒に英語のシャワーを浴びせる必要はありません。生徒に発語を促す授業の組み立て方と問いかけ方の2点さえ攻略すれば、オールイングリッシュ授業は意外と簡単にできてしまいます。
近畿大学附属高等学校の大川稔和先生、古川英明先生にご登壇いただき、前編では近大附属での事例をもとにオールイングリッシュ授業実践のアイデアを頂きました。後編では教員に求められるマインドセットや、参加者から寄せられた質問についてアドバイスを伺います。
> 【前編】来年からすぐ実践・先生がペラペラ話さなくても大丈夫!オールイングリッシュ授業攻略ワークショップ
もくじ
【第1部】近大附属の取り組み
【第2部】「授業が変わる」4つの取り組み
【第3部】コミュニカティブなReading授業を可能にするStagingとQuestions
【第4部】教員のマインドセット
Q&A
【第4部】教員のマインドセット
(大川先生)近大附属がなぜわずか2クラスから約50クラスにまでこのメソッドを広げられたのか、その鍵となるのはCTT(Collaborative Teaching Teams)です。私たちはケンブリッジで指導方法を学んだ教員集団を徐々に拡大していきました。常勤、専任の教員だけではなく、非常勤講師の先生方もどんどん巻き込んでいきました。
成功する要素を挙げるとすれば、学び続ける教員を巻き込むということだと思います。どの組織にも、少なからずそういった先生方はいらっしゃるはずです。ぜひそのような先生方を見つけて仲間にしてください。「学び続ける者にのみ教える権利がある」というのは私の恩師が大学時代にくれた言葉です。この言葉こそがまさに教員としてのマインドセットとして必要であると考えております。
(松山)今回のワークショップを受けて、古川先生の問いが非常に短いことに驚きました。先生が短く聞いてくれると、こちらも短く返していいのかなと気負わなくて済みますし、単語でポンと返せるので、非常に気軽なコミュニケーションができると感じました。
(古川先生)問いは短ければ短い方がいいです。今まさにおっしゃっていただいたように、生徒がresponseしやすいんです。それと合わせてLove your mistakesという言葉を大切にしていて、間違えてもいい教室作り、環境作りがとても重要です。それは日々の授業がそうでないと、いきなりそういった雰囲気にはなりません。
(松山)例えば何か生徒がミスをしたとき、どういったフォローをするんですか。
(古川先生)これはエラーコレクションと言って、エラーの正し方は山のようにバリエーションがあります。さらっと流すこともできれば、正しく言いかえてみせることもできますし、Very good idea! But you should say…などと言って別の生徒に振ってみることもあります。頭ごなしにミスを「違う!」と言ってしまわないことが大切です。
(松山)それは一朝一夕でできるものではないと思いますが、先生方も生徒からの反応を見つつ自分の対応を変えていくような形で、学びを深めていったのでしょうか。
(大川先生)公開授業をしたのですが、そこで見ていただいたり、動画を撮影したりしました。古川先生は1年目の頃、私の授業の動画撮影係だったんです。2年目頃から古川先生もやり始めて、生徒のリアクションを見ながら、また生徒たちに今日の授業がどうだったか聞きながら、改善していきました。
Q&A
では、Q&Aコーナーに移ります。まず、もう一度ICQsについて解説していただきたいというリクエストがあります。
(古川先生)ICQsというのは、自分の指示を生徒が理解しているのかを確認するための質問です。例えば、How many questions?や、How many choices?や、正しい単語に〇するという問題でしたら、circle or triangle?など、そういった質問をして生徒に言わせます。「これをやりなさい」と言っても、生徒が「え?何すればいいの?」となっていることがよくあると思います。指示をするだけでは不十分ですので、その指示がわかっているかを確認するための質問をして、タスクに取り組むことが大切です。
(松山)文法の授業では教えることが多いですが、どのようにコミュニカティブな授業方法をとっておられますか。
(大川先生)文法の授業で説明をしたら、先生の話が多くなってしまいますよね。ですので、説明はしないです。今、YouTubeなどにも動画がありますので、それを家で見させて来ます。授業では何が大切かというと、生徒たち同士でそれを理解したか確認する活動です。学んだことを使ってコミュニケーション活動を行います。例えばスキットを作ったり、例えば仮定法を使った動画を作らせて、それをInstagramにアップさせたりします。そういった活動をするとコミュニカティブな授業が生まれます。
(松山)生徒にインプットするところは授業外でやらせてしまうということですね。
(大川先生)そうです。さらに、CCQsというのは文法でも使えます。例えば、時制の授業で、I ate icecream last night.という文章があれば、Are they talking about in the past or now?のような、過去について話しているのか今について話しているのか質問を作るだけでも、コミュニカティブな授業になるでしょうし、CCQを使うこともできますので、説明しないことがポイントだと思います。
(古川先生)過去の文と未来の文が混ざっている場合、past or future?というCCQを繰り返していくと、理解できているかどうかわかります。
(松山)次の質問です。While readingの3つのカテゴリーのアクティビティでどのようなものを選ぶかは、生徒の力や理解度などで決めるのでしょうか。
(大川先生)生徒の力に合わせるのはすごく大切だと思います。どの生徒に合わせるかですが、私は常に引き上げるような、少し難しめのものを選びます。それはさらにレベルを引き上げていきたいからです。簡単なものばかり選ぶのではなく、様々な問題を混ぜていくことがすごく大切だと思います。
(松山)ありがとうございます。難しい問題が来ております。正解と違うものを答えた生徒が、なぜこの回答が間違いないのだと納得できないことがあり、授業が中断することがあるのですが、そういったときはどうしたらいいのでしょうか。
(古川先生)時と場合によると思いますが、その場は「後でおいで」と言って全体的な流れを止めない場合や、それは良い質問だねとなれば取り上げてシェアしてもいいだろうし、こちらが説明するのではなく別の生徒に説明してもらうなど、いろいろなパターンが考えられると思います。
(松山)ありがとうございます。どういったところに疑問を持ったのかがポイントで、シェアするべきだったらみんなにシェアして、そうでなければ、後で解説してあげるということですね。
英語力が高くない生徒たちでも、英語を使って授業するためのコツを知りたいです。英語力、勉強への意識が低い生徒たちへの自習のさせ方の工夫も知りたいです。
(古川先生)まずは問い作りがとても大事ではないでしょうか。テキストの難易度は実はあまり関係がなくて、取り組むタスクはいくらでもその難易度をこちらで変えることができます。問いの内容についても、いくらでもこちらでバリエーションを作ることができます。レベルに応じた問い作りやタスク作りは、アレンジも含めて、大切だと思います。
(大川先生)先ほどのLead-inのところで言ったことも大切です。私も、モチベーションが低い生徒を以前教えていたので、そういった子たちに対して今ならどうするかとよく考えたとき、重要なのは彼らが興味を持つことができるような、テキストに関連したLead-inをすることです。生徒たちが食いついてくるようなものを考えて、「今日の授業は面白い」と思わせてから、テキストに入る、コンテクストを作っていくことが重要だと思います。
(松山)では次の質問に移ります。生徒には「自分やみんなが知っている言葉を使ってやり取りをしよう」と伝えていますが、ALTが難しい言い回しや単語を教えてしまうことがあります。ALTの話す難しい英語と、授業者の使う簡単で時にはミスもある英語に悩むことがあります。授業者のスモールトーク例は、簡単であるけど生徒の知っている表現は完璧でありたいと思います。そのあたりの迷いについて触れていただきたいのです。
(大川先生)完璧を求めないことが大切です。古川から言っているLove your mistakesというのも、例えば僕が今喋っている日本語も文法は間違いだらけだと思いますが、伝えたいことは伝わります。これがコミュニケーションの大切な部分なんです。そこを重視していく方が生徒たちにとって良いと思います。
ALTは言語教育の専門家ではないので、そういった意識がなく、一方的に喋ってしまうことがあるんです。日本人の先生方がジェスチャーを使ったり絵を書いたりして言葉を示すのも良いと思います。絵を使ってCCQsをするようなこともあっていいのかなと思います。少し付け加えるような補助は必要だと思います。
(古川先生)ALTが中心となる授業はあまりよくないと思います。ALTはScaffoldingに徹して、手助けをするという形ができれば理想的だと思います。
(松山)授業をご担当されている先生がALTにそのように伝えて、意思共有していくことがファーストステップになりますね。
単語に関するご質問です。絵や写真を使って簡単な英語で確認されていましたが、最後まで日本語の意味を与えないのでしょうか。長文によっては新出単語がとても多い場合があると思いますが全て写真で教えているのでしょうか。また単語の定着のワークシート、小テストはどのようになさっているのでしょうか。
(古川先生)新出単語が多い場合は特に重要だなと思うものをピックアップします。また、名詞だったら写真が有効ですが、複雑な意味の動詞や形容詞でしたら、日本語で見せてしまった方が早いので、日本語で表示するだけのときもあります。また、Definitionつまり定義と単語をマッチさせるときもあります。いろいろな方法が存在するので、全て写真で行うわけではありません。
(松山)ワークシートや小テストはどうお作りになっていますか。
(大川先生)私は単語のテストが大嫌いなんです。意味があるのかなと疑問に思いながら学生時代も過ごしてきました。
スペルの確認はします。前で写真を見せて、単語を書かせて確認することもありますし、ディクテーションテストのような感じにして、音声を流しながら書いていくようなテストもします。日本語に関しては、授業中は日本語ではあまり意味を示すことはありませんが、日本語の意味を聞くときに、How do you say 〇〇 in Japanese?と質問して日本語を聞くことはあります。ただ、全部の単語を1個ずつテストするようなことは絶対にしないです。同じ意味のものを示してみたり、In other words?と質問してみたりすることもあります。
(古川先生)単語帳を買って、それで単語テストをやっていくというのは、本当に無意味だと感じるようになってきました。タイミングが来たら、生徒は自分で覚えたい単語帳を買って自主的にやっています。彼らのニーズ、必要に応じて、そのタイミングが単語が生徒に入る瞬間だと思いますね。こちらが「これをやりなさい」と言って覚えさせているうちは、頭に入らないでしょうね。
(松山)毎時間大変だと思うんですが、単語のスライドは分担して作っているんですか。
(大川先生)私は自分で作って、それを非常勤の先生や他の専任に共有しています。インターネットで調べて出てくる画像をぱっと使っているだけです。
(古川先生)私は単独の授業が多いので自分で作成しますが、写真が豊富なケンブリッジのテキストを使っていて、それで確認できるのであまり負担とは感じていません。そこよりも、問い作りやタスク作りに時間をかけていますし、かけるべきだと思います。