対面のワークショップが3年ぶりに復活!実践的に授業法を学ぶ「Cambridge Day 東京 2023」

最終更新日:2023年4月13日

2023年3月26日(日)、英語科教員をはじめ英語教育関係者を対象とした実践型セミナー「Cambridge Day 東京」が3年ぶりに対面で開催。あいにくの雨模様となりましたが、会場となった神田外語学院は数々のワークショップで大いに賑わっていました。

もくじ

 ・基調講演(向後先生):授業・評価・環境面に関する諸課題への対応 - “英語教員あるある”をどう解決できるか

 ・中川先生:CELTAから学ぶ授業づくりのヒント

 ・Allen先生:Listen Up!: Helping learners develop their listening skills

 ・鈴木先生、松本先生:中高一貫校の中学での「オールイングリッシュ授業」の取り組み

 ・大橋先生:ケンブリッジのテキストと歩んだ6年間 ~中1から高3までの生徒の変容に焦点を当てて~

 

基調講演(向後先生):授業・評価・環境面に関する諸課題への対応 - “英語教員あるある”をどう解決できるか

向後 秀明 先生(敬愛大学英語教育開発センター長・国際学部国際学科教授、元文部科学省初等中等教育局教育課程課・国際教育課外国語教育推進室 教科調査官)

向後先生の講義では、授業、評価、環境の3つの分野において多くの先生方が直面している具体的な問題を「英語教員あるある」として挙げ、参加者にディスカッションを促しました。

・テストや評価は「どれだけ覚えているか」の暗記勝負でいいのか
・ICTを活用できているか
・ライティングの評価をやった気になっていないか
・生徒だけでなく、教員と保護者のリテラシーも上げていく必要があるのではないか

3年ぶりのオフライン開催という環境を活かし、向後先生からは多くの質問が投げかけられます。その問いを受けて隣同士で行われる意見交換は白熱していました。

先生よりコメント

実際に講演をやってみた感想

オンラインではわからなかった先生方への伝わり方や先生方からの反応が、今回は実感できました。やっていることに大差はないのですが、コミュニケーションの伝わり方や伝えてもらう熱量、メッセージ量はやはり対面が良いと感じました。先生方がオンラインに慣れてしまうと「なぜ対面しかないのですか。オンラインだったら全国で見ることができるのに」と意見を頂きます。それもその通りなのですが、会場に来ることによって初めて先生方とコミュニケーションが深まり、仲間もできると思っています。このような場所を作っていただいたことに感謝しています。

今回のCambridge Dayで最も伝えたいこと(大切にしていること)

先生方次第で生徒の英語力が大きく変わります。モチベーションを持たせ、自立した学習者の第一歩を作るのは先生方です。先生方が「試験に出るから、受験がこうだから」と言っていたら全く変わりません。英語を使う時間を増やす、量を増やす。そんな英語教育に一度は挑んでみてほしいと思います。

英語教員へメッセージ

子どもたちの可能性を広げるのが英語力になっていくのは間違いないので、そのサポートをしていただきたいです。「好きになる」というのはなかなか難しいことなので、最低限、英語を嫌いにしないで卒業させてほしいと思っています。「英語は嫌いだけど、この先生なら話を聞こうかな」という形でも良いと思います。英語の授業を受けようと思ってくれる子どもたちが多く育てばいいなと思っています。

 

参加者の声

「2022年度にケンブリッジの文科省とタイアップした研修を受講していた関係でこのイベントを知り、参加しました。『覚えてきたかどうかを測るのではなくて、できるようになったかどうかを測る』という観点が印象的で、しっかり持っておきたいと感じました。これからの授業に活かしていきたいです」

「新評価とタブレットの使用が同時に始まって課題が山積しているのですが、先生の話を聞き頭が整理されました。また、生徒に対する気持ちは向後先生と同じように忘れないようにしたいと思いました」

 

中川先生:CELTAから学ぶ授業づくりのヒント

中川 千穂 先生 (工学院大学附属中学校・高等学校 英語科主任 – Cambridge English school、CELTA (Pass with all A)、 2019年 Cambridge English schools competition 最優秀賞受賞)

CELTAの手法を用いて「明日からすぐに実践できる授業内での指導のコツ」について、グループワークを取り入れた授業法を紹介されました。

 【CELTAで学ぶ】

・生徒への指示の出し方
・ICQとCCQについて
・生徒が中心になるアクティビティの実践

グループワークでは、参加者同士の活発なアイデアの交換が行われ、活気の溢れるワークショップでした。

先生よりコメント

実際に講演をやってみた感想

オンラインですと、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使えば自動でランダムにグループを分けることができましたが、対面ではそうはいきません。先生方が生徒役で実際に動いてみることで、生徒の動かし方(グループの作り方)を身をもって体験し理解いただけたかなと思います。先生方同士でお話しできるのはいいですね。みんなでシェアすることができて良かったなと思っています。

今回のCambridge Dayで最も伝えたいこと(大切にしていること)

新学期が始まるタイミングだったので、「英語でも生徒がちゃんと聞くような指示の出し方」を一番伝えたいと思っていました。どうしても長い文章で話してしまうので、短い命令形で生徒に指示を与えることが大切です。そして、英語の授業は一人で受けるものではありません。どうやってペア・グループを作るか、いつも同じ人ではなく、違う人と作る。あとは生徒一人ずつにどうやって役割を与えていくか。そういう部分の工夫が伝えられていたらと思います。

 

参加者の声

「今日は『教師の指示』がテーマだったのでとても参考になりました。中学生の男子には特に指示が通らないことも多く悩んでいましたが、『命令系でシンプルに』と教えていただき、それでいいんだとわかってほっとしました」

「授業の時間は限られているので生徒にたくさん喋ってもらいたいと思いながら、つい教員のほうが多く喋ってしまっていることに気づきました。それを改善するためにはどうしたらいいか、生徒を動かすために必要なヒントが得られたと思います」

「授業の指示の出し方はICQを意識する、というのはよく考えたらかなり基本的なことなのですが、自分の授業のやり方はどうだったかな、と振り返る良い機会になりました」

 

Allen先生:Listen Up!: Helping learners develop their listening skills

Allen Davenport (Professional Learning and Development Manager at Cambridge University Press)

Allen先生のユニークさに惹きつけられ、時に笑いが起こることも。Listening力の重要性にフォーカスし、模擬授業のようなインタラクティブなワークショップが行われました。

・Listeningはスクリプトを見てからするべきか否か
・生徒がなかなか聞き取れないとき、音声を何回も聞かせるのは有効か
・全ての単語を理解する必要があるか
・英語で授業をすると生徒は一生懸命に理解しようとするので良い練習になる

先生からはたくさんの問いが投げかけられ、各テーブルでは自然と英語で議論が始まったのが印象的でした。

先生よりコメント

実際に講演をやってみた感想

本当に楽しかったです。先生方が積極的で熱心にワークショップに参加してくださっていたように感じます。何か新しいことを学べると期待して参加してくださったと思いますし、一つでも学びを得ていると私は信じています。プロとして日々成長することを大切にする先生方と対面で講義ができたことは非常に良かったです。私自身も元気付けられました。

英語教員へメッセージ

同じ空間で一緒に考え、学べるのは素晴らしいことです。授業の質を向上させたり、授業での課題について考えたり、教員として日々自分自身で学ぶ必要がありますし、そのための材料はたくさん存在します。ぜひ自分に合った方法を見つけてほしいと思っています。そのうちの一つとして、対面で学ぶことができるCambridge Dayでまた皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

 

参加者の声

「すごく私たちの心を惹きつけるテクニックを持っていらっしゃって、自分自身のティーチングスキルにもテクニックにも活かせると思いました。特に素晴らしかったのは、モニターに資料が映らなくなった時、私たちのモチベーションをキープしながら授業の進行を続けたところです。テクノロジーのトラブルってよくあるんですよね。そんな時にこうすればいいんだ、と学ぶことができ、本当に勉強になりました」

「模擬授業のような感じで、講義内容だけではなく、教え方の見本を見せていただいたように思います。知識だけでなく、友好的な雰囲気やデモクラティックな雰囲気を意識的に作られているのが素晴らしく感動しました」

「リスニングをどう教えたらいいのか困っていたので、今日の講義はとても勉強になりました。参加してよかったです。また、本当に先生の人間性に惹きつけられました」

 

鈴木先生、松本先生:中高一貫校の中学での「オールイングリッシュ授業」の取り組み

鈴木 優子 先生・松本 悠暉 先生 (高槻中学校・高槻高等学校 英語科教諭 – Cambridge Better Learning Partner)

お二人が勤務されている高槻中学校・高槻高等学校での具体的な実践例を、先生方が実際に直面した問題、苦労体験なども踏まえてお話しされました。

・いきなり英語だけの教材を使うよう指示されたときの心境
・なかなかうまく授業ができなかった時に考えていたことと、それを乗り越えた方法

参加者の皆様の背中を押すようなワークショップでした。

 

 

 

先生よりコメント

今回のCambridge Dayで最も伝えたいこと(大切にしていること)

(鈴木先生) 子どもの可能性に蓋をせず、先生たちも失敗を恐れずやること。そして「教える」ではなく「育てる」ということ。この2つが私が今回最も伝えたかったことです。

(松本先生) 私の「こんな失敗をしています」というエピソードに勇気づけられる人がいたらいいなと思っています。こういう研究会では、綺麗な部分を見ることが非常に多くて。もちろんそれも参考になるのですが、私自身が参加者のときには失敗談を聞いてみたいと思うことが多いので、リアルなところを見ていただけたらと思っていました。

英語教員へメッセージ

(鈴木先生) 授業には本当にいろいろな道があります。ケンブリッジの教材には、子どもたちが自立するための良質なタスクが収められているので、先生方は恐れずにチャレンジしていただきたいと思います。

(松本先生) 他の先生方も本当に試行錯誤されていると思います。今回私たちは「こういうふうに3年間過ごしてきました」という事実ベースのお話をさせていただきました。私たちのやり方が絶対の正解だと思っているわけではなく、まだまだ学んでいる身です。お互いに助け合いながら頑張りましょう。

 

参加者の声

「とてもプラクティカルで参考になりました。特に、訳読式からコミュニカティブな英語への移行に対する葛藤はすごく身につまされました。私もその葛藤のさなかにいるので、すごく勉強になりました」

 

大橋先生:ケンブリッジのテキストと歩んだ6年間 ~中1から高3までの生徒の変容に焦点を当てて~

大橋 優生 先生 (佐野日本大学中等教育学校 英語科教諭)

ケンブリッジの教材を導入してからの6年間の取り組みについて、リアルな体験を紹介されました。

参加者の皆様は、具体的なアクティビティや、生徒に英語しか書いていない教材に興味を持ってもらうための工夫、実際の成績の伸びなど、具体的な実例に熱心に耳を傾けている様子が印象的でした。

先生よりコメント

今回のCambridge Dayで最も伝えたいこと(大切にしていること)

一番伝えたかったことは、生徒が教材の内容を大切にできるような授業をしてほしいということです。日本の国語の授業では生徒が卒業して20歳、30歳になった時に「あれを読んだ、これを読んだ」と言えるのに、英語だと「何を読んだのか覚えていない」というのはすごく残念だなというか。「思い出すのが関係代名詞だけ」というのはやっぱり良くないと思うので、内容を楽しめるような英語の授業をしたいですね。

英語教員へメッセージ

常々私も学習者だと思っているので、他の英語の先生方とも協力しながら、みんなで英語を楽しく学んでいきたいと思います。そうすれば結果的に子どもたちの英語力もついてくると思いますし、良い方向に行くのではないかなと思っています。

 

参加者の声

「本校ではケンブリッジの教科書を2年前から使い始めています。6年間の実践に興味があり、何かヒントがあればと思い参加しました。時間が許せばもっとお話を伺いたかったです」

「英語で教えることに対してはいろいろな声があり、使う教材と教える生徒のレベルに関する悩みが尽きません。それでも英語で教えるならこんな風に使ったらいいとか、こういうところは良くないよねとか、お話を広く伺えたのがすごく良かったです。また、GPTなどICTも色々導入されていて先端的なことをやっていらっしゃるなと思いました。今できる最大限のことを一生懸命やっている姿を、ぜひ真似したいと思いました」

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