自分の考えや気持ちを伝えるために英語を学ぶ 〜英語授業研究学会・関東支部 第26回春季研究大会 レポート〜

最終更新日:2023年5月31日

2023年4月16日(日)、国士舘大学 世田谷キャンパス梅ヶ丘校舎を会場に、英語授業研究学会関東支部による第26回春季研究大会が開催されました。昨年開催された秋季研究大会に続き今回も約80名に及ぶ参加者が集い、発表やディスカッションを通じて英語の授業に対する学びを深めました。

今回の研究大会のテーマは「考えや気持ちを伝える指導を考える」。関東支部長の阿野幸一 先生(文教大学)からは「授業で英語の文法や単語を教えているのは、生徒たちが自分のことを表現できるようになるため」と改めて指導の目的を確認。「自分の考えを伝えられるようになるにはどうすればいいか、本日のプログラムを通じて参加者のみなさまとともに考えていきたい」とメッセージを送りました。

ミニ講演 久保野雅史 先生(神奈川大学)

講師として久保野先生が登壇されました。新学習指導要領(解説)を読み解く内容で、身近な例を織り交ぜながら、考えや気持ちを伝えるための指導方法をご提案いただきました。講演の中でおっしゃっていた「我々教員に大事なことは生徒のつまずきに気付けること」という言葉が印象に残りました。

ビデオによる授業研究

授業者:高杉達也 先生(筑波大学附属中学校)

分析者:五十嵐浩子 先生(国士舘大学)

高杉先生による英授研での授業研究発表は3回目。前任校在籍時にはCLIL、TBLTの実践にも積極的にチャレンジしてきた高杉先生ですが、今回は筑波大学附属中学校で力を入れている「オーラル・メソッド」を取り入れた授業を紹介されました。

五十嵐先生は、授業内の時間配分には再考の余地があると前置きしつつも、前置詞で終わる疑問文や新出単語についてインプットに時間をかけた分、アウトプットの機会を設けた点が良かったとコメント。特に、当該単元の最後に行った「チャリティーイベントのポスターとPR音声を作ってみよう」というワークを挙げ、「GIGAスクール構想にも繋がる活動。ぜひ取り入れてみよう」と呼びかけました。

授業者:柿崎伸樹 先生(東京都立白鴎高校・附属中学校)

分析者:津久井貴之 先生(群馬大学)

リーダーが備えるべき資質という教科書のテーマに沿って文献にあたり、考えを述べるという授業を紹介されました。今回は思考ツールとして「フィッシュボーン・ダイアグラム」を採用し、インプットや自身の考えを整理しリテリングに活用するという工夫がありました。

津久井先生は「生身の英語教員が教室にいる」という観点を中心に授業分析をされました。ペアワークで聞き手として相槌を打つ姿勢を見せていた点を挙げ、「誰かに向けて話す、という相手意識を持たせることが重要」とコメントしました。また、思考ツールの採用については実践すること自体が学びになる反面、授業外でもツールの活用を促すには最適なツールの選定や有用性を実感させる使い方について別の方法も考えられそうだと提案しました。

パネルディスカッション

司会 兼 コメンテーター:阿野幸一 先生(文教大学)

パネリスト:楠本正義 先生(札幌市立あいの里東中学校)、今田健蔵 先生(東京大学教育学部附属中等教育学校)

コメンテーター:狩野晶子 先生(上智大学短期大学部)

今大会のテーマ「考えや気持ちを伝える指導を考える」に準じてパネルディスカッションを行いました。はるばる札幌から来られた楠本先生は、授業内の音読で取り入れているという「ガヤEnglish」に会場内でも挑戦。遊び心を持って柔軟なコミュニケーションが学べるアイデアを共有しました。

秋季研究大会では授業研究で登壇された今田先生は、「考えや気持ちを伝える練習ができる教室づくり」として、安心して話せる環境を作ること、生徒が伝えたいと思える発問などを提案しました。

コメンテーターの狩野先生は、小学校での実践例を紹介しながら今大会でのさまざまな発表を総括。授業の中で間違いながら学び成長することが「言語活動」であるとし、RPGになぞらえて「ザコキャラとたくさん戦ってボスキャラに挑む」と表現し会場の共感を得ていました。最後に、阿野先生が一日のプログラムを振り返り、「授業は生徒と一緒に作り上げていく」と授業の醍醐味を共有しました。

登壇者の声

高杉先生

2022年11月に発表した授業をご覧いただいたので、これまでにもいろいろなフィードバックを頂いていたのですが、今日もまた新しい視点を頂いて、「授業研究には終わりがないな」と感じました。悔しい気持ちもありますし、この仕事をやっていて面白いところでもあります。

授業における「基本のき」を通らずして先には進めないと考え、今回は「どっぷり附属中の英語に浸かる」ことを自分の中のテーマにして取り組みました。これからさらに自分の色を取り入れ、時代に合った新しい授業を構築していきたいです。

五十嵐先生

授業についてみんなで語る、持った疑問を授業者に尋ねてもらうことを英語授業研究学会では大切にしています。疑問を共有する時間があまり取れなかったのは残念ですが、良い発表になったと思います。

高杉先生の発表を見て「筑大附属だからできること」「うちの生徒はそううまく進まない」と考える方もいるかもしれないと思い、私からは一般の学校でも真似できそうな要素をピックアップして紹介しました。間違ってもいいからとにかく即興で話す機会を設定しよう、という思いを込めてお話をさせていただきました。

津久井先生

望ましい活動、あるべき指導はこれまでにも多数語られていますが、生の授業にはそれだけでない、いろいろな要素が絡んでいます。まずは現場の先生が判断した指導や活動を尊重し、なぜその判断をしたのか分析・研究していく必要があると改めて感じました。

久しぶりの対面イベントでしたが、その場の空気や息遣い、Face to Faceで得られる情報にはZoomでは感じられない良さがあると思いました。英語は言葉の授業、コミュニケーションの授業です。生徒にも「Zoomのままで良かった」と思われないような英語の授業をしていかなければならないと思いました。

久保野先生

オンラインの会よりも今回のように人が集まるとお互いが触媒になって新たなアイデアが湧いてきます。今後もこのような対面開催を続けていきたいと改めて感じました。

また、今日は私が教えている学生も参加してくれました。学生には「現役の先生方と学びなさい」と言っています。卒業生にも「勉強しにおいで」「近況報告においで」と声をかけています。対面での研究会の空気感は、学生にとっても良い学びになっていると思います。

参加者の声

「普段はデータから英語を研究しているが、実践的な英語の授業を見ることができて良かった。参加者同士のディスカッションでは率直な意見を聞くこともできて、今後現場に出ていく際に役立つと思う」(大学院生)

「今春から勤務地が変わり、中学校での実践を学びたいと考えて参加した。今日拝見した模範的な授業に対して自分なりにアレンジを加えながらどう実践していくか、考えさせられる時間になった」(中学校教諭)

「模擬授業で生徒とのインタラクションで焦ってしまうことに悩んでいたが、現役の先生方も同じことで悩んでいるとわかった。今日の学びをもとに、生徒の考えを引き出せるような授業を展開していきたい」(大学生)

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