段落のつながりを丁寧に解説してくれているので自習がしやすい!「知識」と「構造理解」の両輪が回しやすい長文読解テキスト
最終更新日:2023年2月13日
- おすすめしたプロフェッショナル
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木村圭佑 / 山脇学園中学高等学校(東京都港区赤坂)
入試長文読解演習 エイム・ハイ Vol.1
美誠社
- おすすめのポイント
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Q.良かったところ
近年は、入試においても「和訳ができればいいや」では十分に点が取れないことが多くなっている。例えば、最近の入試で出題されたAIの話、仮想通貨の話などは、知識がないために読めていない生徒も多かった。内容を理解をした上で自分の意見を述べることが求められており、そのためには理解と知識の両方が必要になってきている。知識の差が読解力に響いてくるので、そもそもの知識を入れることも必要だと感じている。
その点で、本書は一般教養のコラムが入っており、長文に関わるテーマの知識を説明してくれるので、一般的な知識を付けることができる。また、段落構成ページがとても使いやすかった。パラグラフ間の説明までしてくれているので、自分で勉強できる。Q. 困ったところや改善してほしいところ
他の教材だと付属データがかなり充実しているものがあるが、本書はデータがシンプル(本冊と解答データと入試問題だけ)なので、プリントに関しては全部自分で作らなければいけない。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:昨年度(令和3年)までは長年エミル出版の『Cutting Edge』を使っていた。良い教材ではあるが、段落構成の部分に関して、他の多くのリーディング教材と同様、「序論→本論→結論」という大きな区分けしかされておらず、授業内での解説が必要だった。私としては、授業では講義する時間はなるべく少なくして、なぜそういうふうに読み取ったのかということを深掘りしていく時間をメインにしたいと思っていた。そのために、解説がしっかり書かれていて、自分ですべて勉強できるような参考書を探していた。
状況(クラスの人数やレベル):
模試の結果に基づき、習熟度別に2クラスに分けている。習熟度が低いクラス(3級~準2級)は20名、高いクラス(英検2級~準1級)は35名程度。学び合いには人数が多い方が良いが、習熟度が低い生徒は、より手厚い指導ができるように少人数制にしている。他の類似教材ではなくなぜこれか:
本書は「解答・解説編」の中で、下記の図のように、かなり細かく段落の関係性を説明してくれている。以前なら教員用の指導書だけに載っているような情報もしっかり解説されていて、段落のつながりがわかるので、自習がしやすい。
実際大学入試でも「利点を述べよ」というような問題では、まず利点がいくつだったのかをつかむところから始まる。立教大学や早稲田大学などが実際に出していた問題では、「1段落目と2段落目の関係性は何ですか」という問題もあった。本書のより実践に即した学習ができていると感じる。Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
「問題編」「解答・解説編」「予習復習アシストブック」の3冊セットになっている。
- 問題編には、Unit1~18まであり、1つのUnitは長文の長さ(500~920語)により、見開き1ページ~2ページ。長文の後に設問がある。設問は記述式多め。マークシートに頼っていくと消去法になってしまうが、実際の入試でも自分で考えて記述する問題が多いので、本書の問題もできる限り記述式の問題が多めになっている。
- 解答・解説編には、対応するユニットの解説
- 予習復習ブックは、ユニットごとに、上述の段落構成ページ、単語リスト、読解のポイント(文法解説)、サマリーが載せられている。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):週4単位で、3年生は2学期までに成績を出すため、2学期間で下位クラスはVol1とVol2、上位クラスはVol2とVol3、それぞれ2冊を終える速度で扱う。
まず授業に臨む前に、予習として各自で問題集の問題を解いて丸つけまで行い、全部やり切った状態で授業に臨むよう指導している。予習の際、まずは和訳を見ずに、分からなければ単語の確認(→それで解けたなら語彙の問題)、文構造の確認(→それで解けたなら文法の問題)、それでも分からなければ和訳を見てもう一回解き直してみるよう指導(それで解けなければ、日本語の読解力の問題)。予習を踏まえて、授業では、1個の長文に2~3時間かける時もあれば、20~30分で終わる時もある。ユニットの特性と生徒の反応を見て進むペース、扱う内容はその都度変えていくので、決まったペースはない。進度が一定ではないので、生徒たちは余裕を持って予習を行ってくる。
授業中には、教員自作のオリジナル質問シートを使い、なぜその解答にしたのか、「設問分析」をロイロノートを使ってみんなで考え話し合う時間をメインにしている。(例:問3の解答範囲を確定させる流れを説明しなさい。それぞれ解答の根拠となる文を抜き出し、選択肢がどのようにパラフレーズされているのか述べなさい。など)設問分析の過程は数学の途中式のような感じ。それが分かると初見の文章に強くなる。
なるべく事前にプリントにしておいたものを中心に出題し、即興で作成した問題の出題は少なめにする。事前の問題と即興の問題の割合としては、大体7:3くらいの割合。
段落構成の理解は、言語能力を上げる本質的な深い理解と、入試に備えてある程度の速さで長文を読む浅い理解の2つの側面があり、そのバランスが必要である。難関大ほど本質的なところを求めている設問が多いので、本質を伸ばす方に重点を置いて指導している。指導する上での工夫:
学期の初めに、授業のコンセプトを懇切丁寧に伝える。どういう力をなぜ伸ばしたいのか、生徒とも教員との間でもしっかり共有するようにしている。
授業は、自分一人ではできないところを学ぶ場なので、授業以外でできるところ(早く読むこと、情報を検索することなど)はきっちり自分でやるように指導している。高3になって突然「自分でやれるところはやりなさい」と言ったら難しかったかもしれないが、今の高3が中2のときから私が4年間学年の教科責任者で持ち上がりなので、そういう「学ぶ文化」を根付かせることができ、やりやすかった。Q. 使ってみた結果
「学ぶ文化」がちゃんと根付いており、生徒たちは「結果的に自分たちの学力が伸びるんだ」という安心感を持てているので、最初から予習で全部丸つけまでやってくるところに関してはほぼ全員がやれている。自習しやすく作られているので、一人でもできる。難関大学の問題が収録されているので十分な難易度もあり、満足している。
過去問の演習を見ていると、文章の全体像をつかむのが上手になった。全体像がつかめていれば、記述も書きやすいし、選択肢も選びやすい。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
無難な教材なので、向き不向きはないと思う。扱い方次第で幅広く使えるが、特におすすめは、高校2年、3年で入試問題演習の時期に扱うのが良いと思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
大学入試を目指していなければ必要ない。
入試長文読解演習 エイム・ハイ Vol.2
美誠社
入試長文読解演習 エイム・ハイ Vol.3
美誠社
- 木村圭佑
- 山脇学園中学高等学校(東京都港区赤坂)
プロフィール
NHKで放送されていた大西泰斗先生の『ハートで感じる英文法』を見たときに目からウロコが落ちる。当時は中学生で英語を学び始めたばかりであったが、こんな捉え方があるのかと言葉に興味を持つ。教員となった今でも英語の捉え方のベースはその頃に感じた「ハートで英語を受け止…