【part2】生徒のアプリ利用率を高めるノウハウ!~英語の音読アプリを例に知る最新事例~
最終更新日:2021年12月17日
大妻中学校高等学校/市村先生
(越智)では続きまして、大妻中学校高等学校の市村先生です。定期試験前というお忙しい中、本当にありがとうございます。ぜひ自己紹介をお願いいたします。
(市村)私は大妻中学高等学校の英語科の教員で、市村麗と申します。大妻に勤めて約20年です。大妻は中高一貫校で、ひと学年7クラス、ひとクラスが40人前後なので、ひと学年280人~300人ぐらいという、結構規模の大きい学校だと思います。担任に入ると、中学3年間、高校3年間は基本的には持ち上がりです。特に中学所属、高校所属と決められているわけではないのですが、私はたまたま高校の担任をすることが多くて、現在は高校3年生の担任をしています。中学の担任は一回りしかしたことがないです。
(越智)ありがとうございます。実は私も中高6年間女子校に通っていて、大妻にも入りたいと思っていたことがあるので、違った形でご一緒できて、すごく嬉しいです。よろしくお願いします。
導入のきっかけとは?
(越智)まず、現在使用されているアプリが「RepeaTalk」に加えて、オンライン英会話の「Weblio」を使用されているということですが、それぞれの導入のきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか?
(市村)「RepeaTalk」は、一つ上の学年の教員が使っていました。私はもともと「RepeaTalk」についての知識が全くなくて、自分が高校1年生の担任に配属されると決まったときに、中高一貫校なので、中三が終わった春休み中に予習をさせたいと思っていました。予習でCDや音声教材を使うことは必須だと思っていたのですが、そのCDが生徒の自宅に届くタイミングが予習できるタイミングとなかなか合わなかったので、デジタルで配信できたらな、と思っていました。
ちょうどその頃に、Google Classroomを試験的に使ってみないかという教員研修があったので、今思えばGoogle Classroomで配信することもできたのですが、生徒が取り組むと「このステップをクリアした」などの反応が返ってきて、それを教員が確認できるようなものが欲しいと考えていたときに、たまたま上の学年を担当していた教員が「RepeaTalk」を使っていて、わけがわからないままコトバンクに繋いでいただいて、価格もそんなにびっくりするような値段ではなかったので、使うことにしました。
(越智)もう一つ、オンライン英会話のWeblioさんはいかがでしょうか?
(市村)こちらも英語科の中のある教員が研修会に行ってアプリの存在を知ったのですが、スピーキングの訓練は授業でもやりにくいので、数が限られている学校内のネイティブ講師に頼るよりも、全員一斉にオンライン英会話でフィリピンの講師に教わった方がいいなあと思い、学校全体で導入することにしました。
(越智)完全に1対1ということですよね。どのように実施されているのですか?週1回なのか、月1回なのか。
(市村)授業の中では、オンライン英会話をやりたい日にレッスンの予約をしなければなりません。契約によって回数が決まっているので、年間10回ですと、1学期、2学期に4回ずつ、3学期に2回、などと割り振ると、1ヶ月に一度できれば良いほうかなと思います。でも、実際には1学期は4、5、6月で7月はテストだけで終わってしまうので、4回消化するのは難しいかなとか、じゃあその分3学期に回そうとか、そういうやりくりをし、レッスン計画を立てた上で、一つの学年の中でもレッスン時間が固まらないように調整をし、なおかつ全校でもレッスン日やレッスン時間の調整をします。レッスン日の予定に関しては、Google Classroomの中に英語科の共有ドライブを作り情報共有をして、重ならないようにしています。
導入にあたって苦労した点は?
(越智) 今は高校3年生を担当されていますが、新高1を担当された際、「RepeaTalk」を導入するにあたって苦労した点はございましたか?
(市村)端末のトラブルですね。生徒が自宅のパソコンでやってみたけれど、フリーズして動かないとか、録音の途中で止まってしまったとか。でも、端末の問題は私には解決できないので、「パソコンで駄目だったらスマホでやってみて」などと返していました。意外とそれで何とかなったので、スマホの方が相性は良いのかもしれませんね。そんな感じで解決していました。
(越智)どなたかに頼りましたか?
(市村)ICTのアドバイザーのような立場の教員に。
(越智)そういう先生に協力、サポートしていただきながら、ハード面もクリアしていったということですね。実際にアプリを使用する中で、定着させるためにどういう工夫をされていたのでしょうか?
(市村)他校の先生のアドバイスですが、まず定期考査の成績に含めました。100点満点のテストの中に、必ず「RepeaTalk」の提出を含めるというふうにしていました。たしか記憶では、高校1年生1学期の中間テストはまだ「RepeaTalk」を導入して生徒も慣れ始めたばかりの頃だったので、点数には入れなかったか、あるいは期限をかなり緩くして、テストが終わった後でも5月いっぱいに出せば2点だよというように、ゆるい縛りから始めました。
期末テストは、だいたいレッスンを2つずつというのが定期テストの範囲です。各レッスンに4つずつセクションがあるから8つになりますね。その8つを全部出して3点にしていました。
2学期は、各定期考査の得点に含めるということを早めに連絡しました。2学期の中間テスト、期末テストに関しては9月6日、7日頃には提出期限を全部知らせて、1つのレッスンにつき4点分としていましたね。だから2つ合わせると8点分。8点って結構大きいじゃないですか?それでかなり定着率が上がったかなと思います。
(越智)たしかに、本気で満点や高得点を狙っている子にとっての8点は非常に大きいと思います。「やらなきゃ」という動機付けを定期テストで作っていったということですね。授業中はどのように使われているのでしょうか?
(市村)「RepeaTalk」は基本的に自習・家庭学習用として位置づけていたので、授業中に「RepeaTalk」を使うことはないです。もちろん、授業の中で音声活動を軽視していたわけではありません。元々大妻では、こういうアプリを導入する前からどの教員も音読を盛んにやっていたのですが、私の場合は「RepeaTalk」を家庭でやってもらった結果、そこまで授業の時間を音読に割かなくてよくなったということです。
昔は教員がお手本を示したり、教員の後に続けさせたり、コーラスリーディングをやったりと、かなり授業内の時間を取っていましたが、今は「みんな『RepeaTalk』でやってきてるよね、じゃあ一気に生徒だけでやってみようか」ということもしています。
(越智)先生の設定されているステップを見ると、「RepeaTalkをかなり使い込んでいるな」という印象を受けるのですが、それは「きちっと予習でやってきてね」という意図なのでしょうか?
(市村)この設定は、導入時に作っていただいたものです。当時はわけがわからなかったので、作っていただくままに「いいです」と言ってしまいました(笑)。特に気に入っているのは、飛ばせないという仕様です。必ずセクション1の全プロセスを終えないと次に進めないということになっていて強制的にやらざるをえないので、良かったなと思っています。
(越智)これをクリアしなければ先に進めない状況があり、「RepeaTalk」を通して予習をしつつ、授業中に先生が「もうやってきてるよね」という前提で授業を進められていて、ペアワークなど生徒同士で発音の練習をさせると「RepeaTalk」をやって話せるようになっている生徒もいるし、話せないと悔しいから「RepeaTalk」に取り組む、という仕組みを先生がつくられているのですね。
(市村)もちろん「RepeaTalk」は予習だけでなく復習にも薦めていましたが、地道にやっている生徒は上達度が素晴らしいので、そういう生徒を授業の中で褒めてみたり、その子に読んでもらったり、ちょっとヤラセっぽいですが「上手だよね」と褒めて、その子の気持ちややる気を高めたりということもしていました。
(越智)松岡先生のお話にもあったようにフィードバックすることも大切かと思うのですが、市村先生がフィードバックに関して工夫された点はありますか?
(市村)松岡先生もおっしゃっていたように、添削の早さというのはすごく重要だと思いました。溜めると大変なので、早く提出されたものに関してはマメにチェックし、かなり丁寧に添削をしました。ただ、最初の頃は添削に慣れていなかったので、全部聞いて、褒めるところと注意するところの両方にコメントを返していました。一つ一つに添削コメントを考えるのはものすごく大変でしたし、私はその時3クラス持っていたので、約120人、それをレッスン1つにつきセクションが4つあるとなるとすごい数になってしまいます。でも、真面目にやる生徒であればあるほど早く提出してくるので、「先生はこんなところを聞いているんだ、甘く見られないな」「やっぱりやらなきゃ」と思わせるような添削を返すことが大事だったと思います。
一学年7クラスを複数の教員で持つのですが、できる・できないとか、後回しにしちゃうとか、教員それぞれに差があるので、全部統一するのは難しいと思います。ただ、全員一括添削で「コメントなし、合格」で返すだけだと、生徒もだんだん「先生聞いてないかも」と思ってズルをするようになってしまいます。「音読の音声を入れないでずっと空のまんま」「1単語だけ発音して提出」とか、そういうずるい方法を思いつく子もいるので、そうさせないためにも、真剣勝負で聞いていると伝わるようにコメントを返していました。
(越智)本当に先生の本気度・真剣度が伝わってきました。ありがとうございます。また、保護者や他の先生方の理解を他学年から共有していただいたと思いますが、保護者の皆さんからはいかがだったでしょうか?
(市村)反対とか、導入した後で「理由を説明してください」みたいな反応は全くなかったです。
(越智)そこは皆さん理解があるといいますか、生徒たちにとっても効果があることであれば構わないという考えでしょうか?
(市村)はい、そうです。
校内での予算確保は?
(越智)校内での予算という部分ではいかがでしょうか?
(市村)予算に関しても全く問題がなかったです。本校では、教材費については学年費に当たる積立金があります。それは学校に納める学費や設備費とは別のものなので、副教材などはその積立金から引き落としで支払いをしています。
「RepeaTalk」を導入する際、学年主任に「いいですか?」とあらかじめ確認はとりましたが、「こういう教材です」と説明したら特に質問されることも全くなかったですし、金額も合理的というか、とても良心的なお値段なので、全く問題がなかったです。
(越智)ありがとうございます。積立金は、後から「お願いします」というより既にあるお金なので、保護者にとっても先生方にとっても負担がなく利用できるという状況がありますね。
(越智)定期試験の成績にカウントされたのもすごく大きな点だったと思いますし、「一人一人に真剣勝負」というところがすごく印象的でした。だからこそ、生徒からしたら「ちゃんと先生が見てくれているから頑張らなきゃ」というモチベーションに繋がっているのだろうなとお話を伺いました。市村先生、ありがとうございました。
(梅村)市村先生、高校3年生でも「RepeaTalk」を継続されているということですよね?
(市村)はい。ただ、継続使用はしていますが、実際生徒の利用率はものすごく低いです。
(梅村)私が担当しているのは高2で、高3で使うかどうかは今検討中なので、その状況を聞かせていただいてありがたかったです。成績に入れていらっしゃるということですが、評価は「提出したか・していないか」だけですか?それとも、例えば一致率なども見ているのでしょうか?
(市村)そこまでは見なかったです。とにかく提出すれば4点とか8点、というゆるい評価だったので、だからこそ「取り組めば絶対点がもらえる」という感じで引っ張り上げてきました。
(梅村)ステップは先ほど画面に出たものをお使いになっているのでしょうか?
(市村)はい。そうです。
(梅村)8ステップありますよね。すごい量だと思います(笑)。生徒が出してくるときは、1回の学習時間は平均でどのくらいなのですか?
(市村)正しくは記憶していませんが、10~15分とか、それぐらいでやっている子が多かった気がします。
(梅村)ボイス再生必須ではないということですね。わかりました、ありがとうございます。
(松岡)私も、添削が非常に大変だというお話を聞いて、すごく真剣に、時間をかけてやっていらして、我々も参考にしないといけないなと感じました。ちょっとアプリとは離れてしまうのですが、私が個人的に気になったところで、学年間での取り組みである程度統一されているのか、受け持ちの教員に一任されているというか、自由度が高いのか。それを教えていただきたいなと思います。
(市村)本校では担任が3年間持ち上がりで7クラス、7人担任がいる中で、教科のバランスを考えて、教員を配置します。英語科は必ず学年に1人はいますよね。英語は大変なので2人いると理想的なのですが、現在はほとんどひと学年に1人です。その学年に入った英語科の教員が学習計画や、3年間どういう方針でどういう教材を使ってどのように進めていくか、という責任を全て任されますので、学年ごとに違うということは結構あります。
例えば文法書や単語帳、選択必修科目などはやる内容の自由度が高いですね。そのときに、リーディング中心の教材を使うのか、文法中心にするのかなども全てその学年で受け持つ教員によるので、自由度が高いといえば高いですね。