速読速聴・英単語 Daily1500
最終更新日:2022年6月8日
- おすすめしたプロフェッショナル
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橋本 正 / 関西高等学校
速読速聴・英単語 Daily1500
Z会
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
「一石五鳥」(速読・速聴解・単語・熟語・背景知識)が売りの教材。英語表現に必要なあらゆるスキルが学べる。単語集という位置づけだが、単語学習を超えて、リスニングや会話、さらには文化背景など、かなり幅広く学習できる。
Q. 困ったところや改善してほしいところ(もしあれば)
学校の授業の中で一斉に使うにはあまり適していない。授業に組み込む場合には、ポイントを絞り込んで工夫が必要なため、限定的な使い方になり、本書が意図している「一石五鳥」の完全な使い方はできないと思う。また、音声データについては、最近ではCDプレイヤーを持っていない生徒もいるので、QRコードの読み取りやダウンロードができるようになると良い。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
12~13年前(2008年頃)に書店でこの本を見つけ、その内容に感動し、前任校(本校の姉妹校・中高一貫)で、中2~高1を対象に本書のVer.2を導入した。私が感動したポイントは主に次の2点だった。
① 自分が学生時代に海外に行って、実際に耳にしたり目にしたりした、日常生活のあらゆるシーンの会話や文章が本書の中に詰まっている。例えば、英語の注文書、大学の先生になったつもりで自己紹介、スーパーのタイムセールの館内アナウンスなど、リアルな題材から学ぶことができる。
そして、話の展開が普通の教材ではあり得ない、おもしろい展開になっている。通常のテンプレートとは違って、実際にありそうな設定で、聞いていてナチュラルなのがとても良い。② 私が大学院で研究していたテーマが、基本教育学として「英語の変種(バリエーション)を教材にどう落とし込めるか」というものだった。同じ英語でも、アメリカ、イギリス、オーストラリア、またアジアやヨーロッパなど、地域や環境に応じてなまりが異なる。英語を外国語として使っている学習者にとって、音声の違いを互いの英語として認めることは、国際社会で共存するうえでとても大切。今でこそ、TOEICでも、異なるなまりのネイティブの音声が使われているが、12~13年前は、英語の変種が1冊で聞ける教材を探すのは大変だった。そういう時代に、本書にはアメリカ人とカナダ人の会話など、豊富なバリエーションの音声が入っていた。
その後、2016年にVer.3が出版され、そのままVer.3を使い続けている。Ver.3は英語のバリエーションを取り入れていることを前面に出しておらず、さまざまな英語の種類(なまり)があることが自然であることを前提にしている。
レベルとしては英検2級レベルの教材。来年度から新設される「サイエンスフロンティア」コースの生徒たちは、将来海外で活躍するために英語は必要になってくるので、本書をより一層活用したいと考えている。Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
単語学習の一環として、原則は「自分で学習する教材」という位置づけ。本文は、日常生活の中のあらゆる場面を想定して、メール、会話、webサイト、広告、記事などの多様なテーマ・スタイルの英文が143本掲載されている。
1ユニットは見開き2ページで、左ページ上半分には本文(200語以内)、右ページ上半分には本文の日本語訳、下半分には2ページ通しで新出単語が載せられている。また本文の音声が収録されたCDが付属しているので、各自で聞き取りの練習も行える。
基本的には、学校の授業の中で一斉に扱うのではなく、副教材として何か面白い教材がないか聞かれたときに、クラス単位、個人単位で紹介し、主に個別指導で扱っている。
「留学や海外で生活することがあったら、本書の英文がそのまま適用できるから、楽しんでやってね」という感じで、まずは楽しく学習してもらうことを意識している。学習の流れは、各自でCDの音声を聞いたうえで、リピーティング、単語の学習を行い、教員が自作した学習シートに各項目ができたらチェックを付ける、という流れで行わせる。
クラス単位で行う場合には、上記の流れで自学させた後、学習成果を確認するため、ランダムでテスト範囲を決め、定期考査にも出題したり、単語の確認小テスト(ディクテーションや穴埋め問題)のような形で扱っていた時期もある。Q. 使ってみた結果
あくまでも副教材なので、本書だけで英検や共通テストの点数アップというような直接的な成果は見えていない。ただ、個別指導では、留学を考えていたり、将来海外で頑張っていきたい生徒にはお勧め。実生活のいざというときの予習となる。さまざまな場面のいわば予行演習が行えていれば、必要なときにすぐに対応できるようになる。本書はそういう役割を果たすものになると期待している。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
英語が好き、海外生活や異文化交流を目指す生徒の初期~中期学習に向いている。将来海外へ旅行したり生活したりするときに遭遇する場面を疑似体験したいという意欲のある生徒にお勧め。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
英語を受験のツールとしてしか考えていなくて、受験に出ない単語を学ぶ必要はないという生徒や、英単語集として勉強したい人には向いていない。受験や検定向けの学習には、同シリーズの「Core」や「Advanced」を使った方が良い。
- 橋本 正
- 関西高等学校