4技能5領域をバランスよく学び Native Likeな英語を身に付けるAll English教材
最終更新日:2022年10月14日
- おすすめしたプロフェッショナル
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石田 直也 / 青翔開智中学校・高等学校 教諭
Cambridge Experience
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
本書は、トピックや質問がAuthenticかつ興味を引く内容が多いので、授業でそのまま使うことができる。例えば、ユニット3「Technology」では、どの世代でも存在する新しいテクノロジーを過度に怖がる”Technophobia” というものについて扱われている。新しいテクノロジーに普段から接している世代からすると、とても興味深いトピック。ちょうど探究の授業で高1の生徒が、新しいテクノロジーを使って課題解決をする、という授業をしているので、知識を深めていく点でとてもよかった。
以前他の教科書を使っていたときは、生徒の興味を起こさせるために、トピックに関連するビデオを探すのにかなり時間が掛かっていた。教材づくりは楽しいが時間が掛かるので、その部分の時間が削減できるのは助かる。また、リソースが豊富。例えば、ユニットのイントロやスキットの部分に、音声だけではなくビデオクリップが入っているため、視覚情報で多角的に理解できる。
個人的に興味深いのは、奇数ユニットのWriting Skillのページに掲載されている「Changing Language」というセクション。街頭インタビューのビデオを通して、英語がどのように変遷していったかがデータで表されている。例えば、断り方として「No thank you」より「I’m good」を使う頻度が高い理由が、背景知識とともにデータで説明されている。よりNative Likeな英語を使えるようになる。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
生徒からは「日本語訳を付けてほしい。教科書の中に日本語訳があれば、家でも自力でできる」という声があるが、英語でもしっかり問題文を読めば分かると思う。これは日本語で書かれた問題文でも起こりうることだが、少し慣れてくると、ちゃんと問題を読まずに慣れでなんとなく解こうとする生徒も出てくる。まずはしっかり問題を読んで理解するよう指導している。
内容が充実しているので、限られたコマの中で全部を網羅しようとすると難しい。どうやってうまく扱えるかを模索中。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
昨年度まで、同じくケンブリッジの『Prism Reading』という教材を使っていたが、検定教科書ではなく、副教材扱いだったので気になっていた。今回新課程に伴って、ケンブリッジが同じような作りの検定教科書を出したので、そちらに切り替えた。
状況(クラスの人数やレベル):
高校1年生の英語コミュニケーションで使用。学年全体で55人。習熟度別の2クラス(アドバンスト・スタンダード)編成で、1クラス27~28人ずつ。
クラス分けは単元テスト、各種検定試験、模試、日頃の様子やモチベーション等を総合的に判断して分けている。アドバンストは中学の文法・単語が定着していて、安定して準2級に受かる程度の英語力があるイメージ。スタンダードは、中学の内容に多少抜けがあり、3級〜ギリギリ準2級受かるくらいのレベル感。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
『Prism Reading』からの移行を考えると、同じ出版社で似た教材が使いやすかった。新課程になり、4技能5領域を意識して授業を構成していく中で、タスクベースになっていて、本校が生徒に身に付けさせたいスキルが横断的に学ばせられる教材。文法ありきではなく、興味をそそられるようなさまざまなトピックを通して、必要な語彙や文法をインプットしていく形。Grammarベースではないのがよい。教える側として、TESOL(英語教授法)やCELTA(英語教授法の国際資格)で推奨されているコミュニカティブな授業をしやすいのも決め手となった。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
教材の構成(全体構成、ページ構成):
全体で10ユニット。各ユニット8ページくらい
ユニット内は下記の各Skillに分かれ、Skillごとに、導入「Lead-In」・練習問題「Practice」・必要に応じて文法解説「Grammar Guide」が載せられている。
- 1~2ページ目:ユニットのイントロ。トピックについて写真とビデオを見ながら話し合う。
- 3ページ目:Reading Skill
- 4ページ目:Writing Skill
- 5ページ目:Vocabrary
- 6ページ目:Speaking Skill
- 7ページ目:Listening Skill
- 8ページ目:奇数ユニットにはLife Skill(例:健康的な生活を送るためには)、偶数ユニットにはAcademic Skill(学術的に、文章を読むために必要なスキルをStep by Stepで)
巻末には、ユニットごとにまとめられた「Vocabulary Extension」が付録でついてるので語彙力増強にもなる。
進め方(年/学期単位、授業単位):
大体1ユニットあたり8時間(週4時間×2週間)で扱う。時間数の関係で、毎ユニットですべてのスキルを扱うわけではなく、必要なスキルや要素を適宜ピックアップしながら行う。ただしListeningとReadingはすべてのユニットで扱う。基本的な進め方は以下のとおり:
- 1コマ目:最初にユニット全体のトピックについて、写真やイントロ動画を見せながら、どういうことが話されているかを確認。「Pracitice」の問題を解きながら、場合によってはグラマーの確認。分かりにくそうなところは解説を入れる。
- 2コマ目~5コマ目:各スキルにそれぞれ問題が付いているので、基本的には問題を解きながら進めていく。例えば、Listening 問題であれば、実際に音声を聞き、単語を確認して、問題を解き、ペアで確認して、クラス全体で確認する、という流れ。
- 6コマ目:巻末の「Vocabrary Extension」を使って復習
- 7~8コマ目:クラスごとの習熟度に応じて、活動を行う。内容を発展させてミニプレゼンをしたり、自分たちで何かを考えて創作してみたり、または、2コマ目~5コマ目で学んだの各スキルに戻って、Speakingをするなど。
本校は中間や期末の考査はなく、単元ごとのテストのため、2週間ごとにテストがある感じ。テストに向けて大まかに流れはあるが、必要に応じて調整する。
指導する上での工夫:
発話の機会を増やすため、問題を解いた後にペアで答え合わせをするのは毎回行っている。加えて、各スキルに「Interaction」というペアで話し合うパートがあるので、それを活用している。他の教材にも「ペアで話し合いましょう」というセクションが付いているが、トピックの設定が「この文法を使わせたいための話題なんだろうな」というものもある。本書はトピックベースで、実生活で起きそうな話題が扱われていて、無理のない感じで会話が設定されているのが良い。例えば、ユニット2「Ways of Learning」では、いろいろな学校の学び方について扱われており、Interactionの1つには「あなたの理想の学校はどのようなものか、パートナーに説明しなさい」というのがある。トピックが面白いので、苦手な生徒も取り組みやすい。
教科書内の問題は授業中に解いてしまう。準拠のワークブックは購入させていないので、課外でどうやって勉強していけばいいか分からないという生徒には、クラスで扱った英文を音読練習するよう指導している。最初の目標は、本文の内容が分かった上でシャドーイングができるように、そして最終目標はディクテーションができるように。これは自主的に行うものなので、特にチェック(成績評価)はしていない。ただ、テストの中にIELTSの問題にあるようなディクテーション問題を入れたりすることもある。
Q. 使ってみた結果
すべて英語で書かれた教科書を使うので、生徒たちは最初は面食らってしまうが、1学期を終えて大体慣れてきている様子。(授業はAll Englishではなく、ざっくり7割くらいは英語。クラスが習熟度に分かれているため、その割合はクラスにより異なる。個人的にはオールイングリッシュが完全に良いとは考えていないので、適宜日本語での解説も挟んでいる。)出てくるGrammarはとても平易で、中学校で一度学んできているものを改めて整理することができる。英語を英語で理解する思考パターンが身に付く。時々出てくる単語が難しいものもあるが、意味が分からなくても前後の文脈から推測できるように配置されているので、いい教材だと思う。設問はちゃんと高校1年生レベル。自力で理解できる生徒はできるが、中には自力では難しい生徒もいるので、適宜辞書を使う、教員のヘルプの度合いを変えるなどしている。ペアで確認する時間を多く取ることにより、レベル差をなるべく少なくしている。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
レベル感は中~上位。英語にかけられる時間が多い学校なら、下位層でも利用はできると思う。
トピックが面白いので、苦手な子でも使い方次第で英語が好きになるのでは…という気がしている。
同じケンブリッジの『Uncover』やブリティッシュカウンシルの『ENRICH』を使っている学校では使えると思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
英語が本当に苦手で、英語を見るだけでも嫌だと思ってしまう生徒や、英語を英語で学習するというマインドセットができていない生徒には厳しいかもしれない。
- 石田 直也
- 青翔開智中学校・高等学校 教諭
プロフィール
大学在学中、オーストラリアにてDiploma of TESOL取得。その後現地語学学校にてインターン。帰国後『ベーシックジーニアス英和辞典第2版』(大修館書店)の発音部分を監修。現在は、青翔開智中学校・高等学校高等部に所属。高校1年生の担任を担当。 …