さまざまな長さの本文+データを収録。大学入試に向けて、読み取る力を伸ばす検定教科書
最終更新日:2023年2月17日
- おすすめしたプロフェッショナル
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西原隆一 / 鹿児島第一高校
LANDMARK 英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ / Pocket Speaking
啓林館
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
本文の長さがパート1からパート4まで徐々に長くなり、短いパートからある程度の長さがあるパートもある。音読やシャドーイングにちょうどいいものもあれば、じっくり読ませたいものもあるので、好きなようにカスタマイズできる。音読教材としての良さに加え、本文に基づくデータを生かした活発なアクティビティも行えて、生徒と一緒にワクワクしながら、授業の組み立てを考えていける。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
教科書の本文の内容は良いが、上級層(英検準1級レベル)の生徒たちには簡単すぎる時がたまにある。アクティビティである程度レベル調整は出来るが、「読む」となったときに、そのあたりのレベル調整が課題である。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
本校は大学入試の対策を重視しているため、ある程度の長さの文章を読ませたい。令和4年度の教科書改定に伴い、変更を検討してさまざまな教科書を見ている中で、他の多くの教科書は絵や図が多すぎて、英語を読むという点で少し物足りないと感じていた。本書は、本文はレッスン1で100語程度あり、レッスン2、3と回を重ねるごとに語数は増えていく。文量がちょうど良い。
状況(クラスの人数やレベル):
すべてのクラスが普通科で、今年の1年生は4クラス。(そのうち1クラスは特進クラス)いずれも1クラス20名程度。普通クラスは、上位レベルは英検2級にチャレンジする生徒から、下位はベネッセの進研模試・スタディサポートのGTZ(学習到達ゾーン)でD1レベルまで幅広い。特進クラスには1年生で準1級に合格する生徒もいる。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
共通テストには、グラフから読み取った情報に答える問題も載っている。その対策としては、文法の学習と分けて本文の内容にできるだけ深く入って読み取る力をつけたい。本書は、左側に本文、右側に本文の内容に関連した解説やデータが載っており、データと本文をミックスして授業が行える。データに基づく議論などのアクティビティを通じて、より深く本文の情報も理解できると期待したから。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
教材の構成(全体構成、ページ構成):
1冊にレッスン10まであり、各レッスンは見開きで7~8ページあり、構成は以下のとおり。
・まず最初にタイトルと、レッスンの導入の活動。例えばレッスン1は、新たに高校に入学した生徒たちが「高校生活でどんな目標を持つか」というテーマ。どんな部活動に入りたいか?など簡単なショートトークの質問があり、クラスメイトとペアで共有したり、文章を書いたりする。
・次に本文がパート1~4に分かれて、関連した話題が展開していく。レッスン1は1パート1ページずつだが、レッスン2以降は見開きで左側に本文、右側に本文の内容に関連した写真やグラフや年表などのデータが載っている。
・音読用に、パート1~4までの文章がすべてずらっとまとめられている(見開き1ページ)
・Comprehension パート1~4までのまとめが穴埋め形式の問題で掲載。
・Q&A CDを聞きながら、レッスンのテーマに関してのQ&A。
・ライティングやスピーキング用のメモ作成など、アクティビティ。
進め方(年/学期単位、授業単位):
コミュニケーション英語は週に3単位しかないので、1レッスンを2週間から2週間半(6~8単位)で扱う。1回の定期考査ごとに2レッスンずつは進めたい。
まずは本文の内容をしっかり扱う。テーマに応じて、本文の横にあるデータを使って議論させたり、アクティビティを入れる。例えば、レッスン3では、学校の制服に対する賛成意見・反対意見をグループで話し合い、グループの意見を1つ選んでクラスの前で発表する。ロイロノートのスライドを使ってプレゼンを作成し、発表させる。
アクティビティは、ペアワークや人1組のグループワークでプレゼンを行うなど、テーマに合わせて調整しながら行う。ちゃんと根拠に基づいて意見を述べられるように、できるだけデータを扱わせたい。その力は英検や共通テストにもいきてくる。
指導する上での工夫:
1レッスンに必ず1つはアクティビティを入れて、議論させる。正解の答えが出なくてもいいので、おもしろいアイディアをどんどん出させる。「分からない」「できない」などのネガティブ発言は禁止で、ふざけて変な答えを出したとしても、そこからどう発展させるかが大切。
英語が間違っていてもOKなので、自由に発言させる。グループワークの際のメンバーは完全にランダムで組むため、ものすごく英語力の高いグループもあれば、すごく苦手なグループもある。その中でそれぞれができる役割を見つけて行うことにより、それぞれに学びがある。
授業ですべてを教えるのは無理だと思っている。ただ、きっかけを与えられたらと思う。自分で自分に必要なことに気づいて、自宅での学習や放課後の学習につながって行けたらいいなと思っている。成功体験も大切だが、失敗を通して学べることを体験してほしい。私自身の失敗やトラブルを話して、完璧じゃなきゃいけない、というバリアを壊していきたい。
Q. 使ってみた結果
本文の説明の部分では生徒のテンションはそんなに上がらないが、活動の準備にはかなり積極的に取り組んでいる。1年生の最初は、英語で大きな声を出してプレゼンをするのに抵抗もあるが、毎回のアクティビティで「しっかり声を出して話しましょう、大きな声で話しましょう」と言い続けると、ただの棒読みから、伝えるための言語に変わってくる。だんだんと慣れてきてそれが普通になってきている。最初にそれを教えないと、その後2年生、3年生になってもできないので、「今は忍耐しながら勇気をもってやりましょう!」と指導して、生徒も少しずつ自信を付けている。
話すのは苦手でもアイディアがおもしろかったり、逆に、話すのは上手でももう少しおもしろいアイディアが出せないか、という点は共通テストで問われている力にリンクするところがあるので、「今回やったことは入試でこんな風に問われているんだよ」とモチベーションを高めている。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
進学校で共通テストを目標にしている学校。読む量がしっかりあるので、文章量のバランスがちょうど良い。英語と情報処理能力を同時に身に付けたい学校。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
英語を苦手としている生徒が多いクラスには読む量が多いと思う。他の教材の方がアクティビティメインで楽しいものがあるかもしれない。
- 西原隆一
- 鹿児島第一高校