ことばが子どもの未来をつくる! 英語・日本語の枠を越えた言語力を育む英語教育カリキュラムとは(前編)

最終更新日:2023年2月10日

日本では、1980年代中盤に端を発した英会話重視の英語教育政策が次々と打ち出されてきました。しかし、その政策は期待される成果をあげているとは言えないようです(下記グラフ参照)。英会話偏重で英語力は本当に向上するのでしょうか?

出典:産経新聞記事:中高生の英語力、政府目標に届かず 文科省調査

 

ラボ教育センターのこども英語教室「ラボ・パーティ」では、英語でのアウトプットの活動も大切にしながら、思考とアイデンティティ確立の重要な要素である「母語」を大切に考えた教育を実践しているそうです。 今回は、ラボ教育センター広報担当の竹内美貴子さんに「ラボ・パーティ」の英語・日本語の枠を越えた言語力の基礎を育む独自のカリキュラムについてお話を伺いました。(聞き手:五十嵐 美加)

 

異年齢グループで取り組む英語劇

(竹内)ラボ教育センターの言語事業グループの広報を担当しております、竹内と申します。今は広報の担当となって5年目です。普段は、子どもたちにワークショップを行ったりしていますが、ちょうどこの夏はアメリカに子どもたちをホームステイに連れて3週間ほど行ってきました。

ラボ・パーティを主催しておりますラボ教育センターですが、新宿に事務所がございます。創業が1966年、ちょうど東京オリンピックが終わった後です。オリンピックがあるたびに英語教育は盛んになる傾向があり、東京オリンピックが終わった後も日本が英語ブームに沸いていたタイミングで5歳から英語を始めましょうということで始めました。その頃は5歳から英語を始めるなんて、虐待じゃないかとまで言われたこともあった時代でしたが、英語教育熱を持って家庭に入られたとても優秀な女性の方々が、子どもたちに何かできないかと手を挙げてくださってスタートしました。

ラボ・パーティの教育についてお話していきたいと思います。レッスンのことをパーティと呼び、週に1回、年齢によって違いますけれども45分〜1時間、指導者のもとに集まってレッスンを行います。必ずしも小学校1年生のクラス、2年生のクラスと分かれているのではなく、少し縦長の異年齢でこのグループ活動は行われています。

毎週のプログラムです。プレイルームは0歳〜3歳未満のお子さまと保護者です。挨拶した後に英語の歌、マザーグースなどを行って、テーマ活動(英語劇)を行います。年代によって取り上げる素材は違いますけれども、基本的には、英語の歌やマザーグースでウォーミングアップをして、ラボのメインプログラムであるテーマ活動で物語を英語劇にしていきます。幼いお子さまは劇ごっこから始まりますが、年齢が上がるに従い自分たちで英語の劇にしていきます。

 

家庭でもしっかりインプット、パーティで楽しくアウトプット

ラボは、家庭で英語を聞く個人の活動の中で英語をインプットします。週に1回のパーティの活動、英語劇のテーマ活動をグループで行うときに、英語をアウトプットします。この往還関係が大きく子どもたちに作用していると思います。英語の音声は、週に1回の教室で英語を聞いている(インプットする)だけでは足りません。日常生活のなかで十分に聞き、さらには聞いた音声をアウトプットすることが必要だと考え、このような環境を整えています。

ラボ・パーティでは、母語の習得にできるだけ近い形で英語を身につけていきたいと考えています。母語の習得といいますと、まずリスニングがあって、それからスピーキングがあって、その後リーディング、ライティングと進んでいきます。

 

私達大人が学校で受けてきた英語教育は、リーディング、ライティングが多かったと思います。ラボの場合は家庭でリスニングをして、グループ活動でアウトプットとスピーキングをしていきます。十分に音声に慣れてからリーディング、ライティングをするようにします。その方が、できるだけ母語に近い形で英語を習得できるのではないかと考え、56年間進めてまいりました。

 

それだけではなく、英語を実際に使用するには、コミュニケーション力も大切なのではないかと考えていて、コミュニケーション能力をつける活動も重要視しています。

教室はこのような感じです。机があったり、本を見ながら何か書いたりということはなく、机や椅子のない状態、子どもがリラックスできる状態で毎週の教室は行われています。異年齢で年齢幅のあるグループで構成されていることもおわかりになると思います。

 

マザーグースからシェイクスピア・宮沢賢治まで多様で豊富な英語音声教材

実際使っている教材です。私達は英語の音声教材などをラボ・ライブラリーと呼んでおります。内容は絵本から、マザーグース、昔話、ファンタジー、シェイクスピアや宮沢賢治までございまして、現在まで作り続けてきた英語の音声教材はトータルで150の作品がございます。

 

五十嵐先生も、ここにある絵本の中でお子さまに読んでいらっしゃるものはありますか。

 

(五十嵐)もちろんです。『はらぺこあおむし』を持っています。

 

(竹内)この写真には、英語が原作の作品、日本の絵本を英語にした作品があります。長く本屋さんで売られている人気の絵本もあると思います。

作品は全てCDで録音されているものがセットになっています。それを各家庭で子どもたちが聞きます。聞くといっても、つねにじっと座ったり絵本を見たりしながら聞くのではなく、子どもは何かをしながらでも耳にすることができます。例えばおやつを食べながらなど、何か他のことをしながらでも英語を聞くことができます。母語を身につけるのと同じように、普段の生活の中で英語の音声が流れている環境をぜひ作ってくださいとおうちの方にはお願いしています。

 

母語を習得するとき子どもは、その場に流れている、または話されている音声を,集中していなくても聞いているものです。面白い音を拾ったり、繰り返される音から覚えていったり、またはママやパパが発する言葉から覚えていったりするように、ずっと集中して聞かなくても、生活の中に英語音声が流れていることを習慣化する環境を整えています。

 

家庭で英語を聞くという活動と、パーティでのテーマ活動、このインプットとアウトプットをこの教材が可能にさせているということです。

『THE THREE BILLY GOATS GRUFF(三びきのやぎのがらがらどん)』『三びきのやぎとがらがらどん』という教材を、ご用意しましたのでお聞きいただければと思います。

 

~教材音声~

ごっこ遊びのように配役も主体的に子どもたちが決める英語劇

英語と日本語が交互に録音されていて、後にはBGMのように音楽も流れています。子どもは家でこのCDを耳にしていくということです。素材が物語なので、子どもはいろいろなことをイメージしながら考えています。それぞれの子どもの発言がとても面白いんですけれども、こういった発言をもとに、自分たちのイメージや不思議なところを仲間と擦り合わせながら教室で劇にしていくんです。

 

劇を作るときは指導者が、「あなたは何の役ね」「こっちから出てきて、そこで止まって」「はい、そこでセリフを言って」などと指示することは一切ありません。全て子どもたちが自由に動いて、仲間と話し合いながら劇をつくります。子どものお医者さんごっことかままごとは、自分たちで好きに作っていくと思いますけれども、それに近いと思います。

まず物語の英語を聞くことから始まって、テーマ活動の英語劇で動いてみて、自分で考えてみて、役になりきって、例えばヤギやトロルになりきって英語のセリフを言ってみる。そうやって英語を相手に伝えていき、それが主体的な英語になっていく。自分達でテーマ活動をつくって、人に見てもらって達成感が生まれる。これを何度も何度も繰り返して、ある意味トレーニングしていくうちに、英語での自己表現と対話が可能になってきているということです。

 

後編に続く・・・

ことばが子どもの未来をつくる! 英語・日本語の枠を越えた言語力を育む英語教育カリキュラムとは(後編)

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