基本事項が一つ一つ丁寧に取り上げられた教科書。教員用データが充実しているのでテスト問題がつくりやすい!
最終更新日:2023年3月21日
- おすすめしたプロフェッショナル
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中田 啓一郎 / 千葉聖心高等学校
VISTA English Communication Ⅰ New Edition
三省堂
- おすすめのポイント
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Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
平成15年から使用している。生徒の英語力に差がある。入学時に英検3級まで保有している生徒もいれば、英検4級や5級、またはアルファベットの書き方をすべてマスターできていない生徒もいる。
そもそも勉強の習慣がない生徒が非常に多く、どのように授業を展開すれば良いかという課題があった。
状況(クラスの人数やレベル):
1年生全クラスのコミュニケーション英語の授業に導入。
1年は全部で5クラスあり、1クラスの人数は30人。英語の授業では、1クラスを15人ずつ2つのクラスに分けて行なっている。少人数授業がねらいなので、学力別ではなく出席番号順に分けている。そのため、英語レベルは、英検5級程度から3級程度までバラつきがある。
15人1クラスにつき、教員1人。他の類似教材ではなくなぜこれか:
本校は英語力にバラつきがあり、アルファベットの書き方が苦手な生徒も多い。平成15年から使用している間に、別の教科書への変更を考えたが、本校の生徒の学力や難易度に合った教科書がほかになかった。多読させるスタイルではなく、基本事項が一つ一つ丁寧にまとめられているという点が、他の教科書より優れていると感じる。
本校の1学年の英語の授業では、基本事項を身に付けさせることを主眼に置いているため、その指導方針にも合っている。
また、教員向けの指導書も充実しており、生徒向けには準拠したワークブックがあるので教科書の内容を補充できる問題集がある点も良い。Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
レッスンは1~10までに分かれている。
扱われているテーマは身近な話題からSDGsにつながる話題まで多彩。各レッスンとも、見開きページの左側に英文、右側に文法の解説や設問が掲載されている。
レッスン1~3は高校英語への導入部となっており、ダイアログ形式の本文が2つのセクションに分かれて構成されている。
レッスン4以降は、最初の見開き1ページがレッスンの導入部になっており、その後、本文が見開き1ページずつ3つのセクションに分かれている。レッスンの最後の見開き1ページは、まとめのページになっている。各レッスンにはQRコードがついていて、デジタル教科書を閲覧できる。
レッスンの間には4コマ漫画や歌などの「一息コーナー」も掲載されている。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
コミュニケーション英語の授業は1週間に3コマある。1コマは50分。毎回の授業では前半25分と後半25分に分け、前半に講義、後半は独自に作成した小テストをやらせるという流れで進めている。教科書に書かれている英文の和訳や文法問題を授業内で細かく教えるというより、演習問題を暗記させたり、演習問題をもとに作成した小テストをたくさん解いていく「ドリル学習」をさせたりすることに重点をおいた授業を行なっている。
講義の部分では、「この日は単語だけ学習する」「この日は教科書のここまでやろう」と、学習する範囲を決めて授業をしているが、25分の時間が来たら範囲の途中でもそこで講義を終わらせ、ドリル学習に移っている。見開き1ページ分を約2コマで終わらせているようなペース。
講義の授業では、25分のうち最初の10分間を音読の時間に当てている。レッスン内の新出単語や例文などを、全員で読んだりペアになって読ませたりと、さまざまなパターンで音読させている。
ドリル学習に使う問題は、教科書に掲載されている演習問題などをもとに、独自に作成している。演習に使われている例文1つに対して、単語などを少しずつ変えながら、同じ構文の問題を何問も作成して1枚の小テストを作成している。小テストの数は、各レッスン30個ほど。
小テストの問題は、学期の初めに学期末の定期テストの範囲まですべて先に作成してしまっている。作成した小テストを教室の壁に貼り付けているので、生徒はその中から自分の学習の進捗度合いなどに合わせ、好きなテストを選んで取り、問題を解いていく。
テストが終わったら授業内で教員が採点する。生徒各自の学習進捗表を作成しているので、合格したら表に終了のチェックを入れていくという仕組みにしている。
学期末までにどのテストまで終わっているかは生徒の学力によって異なるが、合格した小テストの数を評点に入れているので、生徒は頑張ってテストを受けている。
小テストには音読の問題もある。生徒同士で音読スピードをストップウォッチで測定し合いながら、「何秒以内で読む」など、設定されたスピードをクリアしたら合格というようにしている。
基本的に、小テストは定期試験の範囲内のどの問題を解いても自由。例えば、試験範囲がレッスン1から3までの場合、「レッスン3の問題まで終わっているが、テスト前なのでレッスン1の問題をもう一度やってみよう」など、繰り返し受けることも可能。
1年間で教科書を1冊最後まで終えられないが、スピードより学習の習慣を身に付けさせることを重点としている。終わらなかった残りの部分は2年生に持ち越して続けている。
指導する上での工夫:
勉強のやり方が分からない生徒に対して、どのように勉強したら良いかを教えている。授業で一生懸命勉強しても、家庭での学習方法が分からなければ成績は上がらない。自立して学習するための方法を模索した結果、授業時間内にもドリル学習のような指導方法を取り入れている。生徒の英語力に差があるため、小テストの問題作成では2択問題のように簡単な問題からスタートして、単語のスペルの穴埋めや単語を並べ替えた英文作成など、徐々に難易度を上げて、英語が苦手な生徒でも取り組みやすいよう工夫している。
語学に関しては、「読み」ができないと上達しないので、音読にも力を入れている。
Q. 使ってみた結果
生徒は楽しそうに取り組んでいる。休み時間などに「合格のサインいくつたまった?」という会話をしているのを聞いたこともあり、うれしく感じた。
小テストに合格した数が成績に反映することが分かっているので、生徒は一生懸命やっていた。さらに定期試験の範囲を小テストにしているので、小テストを頑張れば定期試験の点数も上がる。
Q. 良かったところ
教員用のデータが非常に充実しているのが良いと思う。
ドリル学習のように、同じことをいろいろな角度から学ばせたいという指導法に適している。私のように、小テストの問題を作るというやり方をする教員には使いやすい教科書だと思った。
難易度的にはかなり易しい教科書なので、繰り返し学習をするには最適だろう。今まで英語が苦手だった生徒も、テストで良い点を取れたことによって自信をつけ、学習への意欲がわいていた。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
演習問題に使われている例文がやや教えにくいと感じるものがときどきあった。
例えば、文法事項を教えるための例文に使われている単語や文章の構造が複雑すぎるときは、文法事項を教える前に、単語や文章の構造の説明から始めなければならない。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
英語が苦手な生徒が多い学校に向いているだろう。
1つのことをさまざまな角度から丁寧に教えるという指導方法に適している。人数が多いとそのような指導方法は難しいため、少人数で授業できる学校にも向いている。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
英文をとにかくたくさん読ませたいという多読スタイルで、情報処理能力を上げたいという指導方法には不向きだろう。
- 中田 啓一郎
- 千葉聖心高等学校