「全英語の授業ってどう進めたら良いんだろう…?」悩んでいる教員におススメ。サポート万全、Teacher’s manualも揃った本書で生徒の4技能を鍛えよう
最終更新日:2023年4月18日
- おすすめしたプロフェッショナル
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山木 望 / 広島三育学院高等学校
English File Intermediate – Student’s Book with Online Practice
Oxford University Press
- おすすめのポイント
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文科省による教科書の改訂がなされる以前から、本書(All English)は英語4技能を生かせる作りであった。1冊が10ユニットに分かれ、1ユニットは大まかに単語と文法のセクションに分けられる。それぞれのセクションでは豊富なリーディング問題やスピーキングのアクティビティ、リスニング問題が掲載されており内容は充実している。該当セクションで習った単語と文法が、自然とその後の読解の文章や問題文に使われているため、生徒は問題演習を通じて効果的に復習ができ知識を定着させやすい。
また、授業内で活用できる「文法」「読解」「コミュニケーション」のための教材プリントが全て用意されているため、教員が自作プリントを準備する必要がなく助かっている。生徒は本書のオンライン学習サイトにもアクセスでき、英語音源を聞く、本文スクリプトを読む、文法問題を解く、など授業内や家庭学習でも大いに活用できるのが魅力である。
Q. 対象としたクラスの特徴(学年、人数、授業目標等)
国際英語コースの生徒を対象。人数は1クラス15人ほど。2022年より、他コースの生徒も希望すれば本授業へ参加が可能になり、3名ほどが実際に参加した。
国際英語コースの入学基準が英検準2級合格以上ということもあり、大学進学の希望に関わらず英語が好きで深く学びたいと思う生徒たちが多い。英検1級を取得して卒業していく生徒もいる。
Q. 課題意識、導入の経緯
導入時には赴任していなかったため詳しくはわからないが、「国際的に使える英語を学びたい」と願う生徒たちのニーズに合う教材はないか?と教員間で話し合われてきた。そんな中、本校の系列校であるイギリスの大学を教員研修として訪問したとのこと。およそ10年前のことである。英語を第二言語として習得するための生徒たちのクラスで本書が使われており、現地の教員からおススメ教材として紹介された。その後導入を検討し、本校でも7~8年前から本書を使用している。
Q. 実際の使い方
英語コミュニケーション(高1週3コマ、高2週4コマ)の授業で本書を活用中。中間考査、定期考査それぞれで1ユニット、合計2ユニットを1学期分で終わらせるペースで進めている。
ユニット内の単語のセクションは難易度がそこまで高くないため、本書とは別に単語帳のDUOも使用し小テストを実施しながら語彙力を強化している。また、リスニングのセクションはボリュームが多いため、リスニングのみを授業で扱うのではなく他の項目と混ぜたりしながら生徒たちが飽きないようにしている。
最終的に高校3年間で1冊終わればいいと考えているが、例年高3の2学期には終了していることが多い。特にこの数年はコロナ禍で短期留学に行けなかったため授業の進度も速く、高3になる前に終了していた。本書を終えた後はさらに難易度の高い教材を演習問題としてプラスしている。
Q.工夫したポイント
本書を使う国際コースは、元々英語に対しての意欲が高い生徒が多い。しかしながら、どんなに意欲があってもやはり「全英語」で進める授業は慣れるまで難しいため、生徒たちの反応を見ながら、文法の説明箇所には日本語も適宜使っている。高2ではネイティブ教員の英語授業になるため、高1は準備期間として丁寧に指導することが重要だと感じる。徐々に日本語での説明を減らしていき、高2間際にはほぼ英語に切り替えるイメージで指導する。実際に、高2になりたての生徒たちは、初めこそ「先生が何を言っているのかわからない!」とネイティブ教員の授業に苦戦する姿もあるが、1学期が終わる頃には順応しているようだ。高1から丁寧に取り組んだ土台が生きるのだと思う。
Q. 実施した結果
3年ほど使用したが、高1から使っていた生徒たちのスピーキング能力が特に伸びているのを感じる。本書内には各セクションを学ぶごとにスピーキングのアクティビティーがあり、ペアワークやクラスワークで実際に英語を話す機会が増えているからだろう。リーディング能力よりもスピーキングやリスニングの能力が伸び、「使える英語」が指導できているという実感がある。世界中で使われている教材の強みを感じる。リーディングも内容がそこまで難しくなく、文法もあまり細かくはやらずオーソドックスな内容のみ扱っているため、生徒は飽きずに授業に参加してくれている。
しかし、日常生活に関してのトピックがメインで社会問題やSDGsのトピックはなく、大学入試対策としてそちらは別の教材で補う必要があると感じる。また、「結婚」などのトピックも出てくるため、使用を想定されている年齢は高校生よりも少し上かもしれない。
Q. 今後に向けて
現代ではAIが発達し、Google翻訳などの機能を使えば翻訳や読解は簡単にできるようになった。英語を取り巻く学習環境は昔と比べ大きく変化したように思う。生徒たちにとってこれらはもはやこれらは切り離せないもので、教員としても「AI翻訳ツールを使うな」とは言えない。しかし、生徒たちが英語学習を通じて求めているのは「自分の言葉で、英語を使ってコミュニケーションをとりたい!」ということである。教員として、生徒たちのこの気持ちを何よりも大切にし、英語を学ぶ楽しさを伝えたいと思う。
だからこそ、授業中にいつも自問自答をするように心がけている。
「これはAIでも教えられることだろうか?それとも人間にしか教えられない英語の力だろうか?」
- 山木 望
- 広島三育学院高等学校
プロフィール
関西出身。幼少期から英語に興味があり大好きだった。高2でオーストラリアに10ヶ月ほど留学を経験し、教育実習を通じて英語教員への道に進むことを決めた。大学卒業後、沖縄の学校での勤務を経て本校へ異動し、約10年「生徒たちが受け身ではなく、自ら参加するような授業をす…