日常的な話題から社会問題まで、豊富なトピックをとおして4技能5領域をバランスよく伸ばせる検定教科書
最終更新日:2023年5月22日
- おすすめしたプロフェッショナル
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高杉 達也 / 筑波大学附属中学校
ONE WORLD English Course
教育出版
- おすすめのポイント
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おすすめのポイント
英語教育の基礎をしっかり押さえた検定教科書。「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能5領域をバランスよく伸ばす授業を実現できる。日常会話から社会問題にまで目を向け、自分の意見を発信できる力を養う。
Q. 対象としたクラスの特徴(学年、人数、授業目標等)
学年と人数:中学1~3年生(それぞれの学年にあわせてOne World 1, 2, 3を使用)各クラス41人
英語能力のレベル感、動機付けの強さ:英検5級から1級を取得する生徒まで、かなり幅広い。一斉授業で指導を行う。
授業目標:学校として「検定教科書を大事にした指導をしよう」という方針。検定教科書は社会的な話題にも触れているので、日常的な話題からスタートして、最終的には社会的な問題についても学んだことをアウトプットできるようになってほしい。
個人的に達成したいこと・こだわりたいこと:授業の中で、生徒対教師、生徒対生徒でいろんなインタラクションを持つようにしたい。上記でも触れたように、最初は日常的な話題かもしれないが、学年が上がるにつれて、社会的な議論ができるようになればいいなと思っている。
Q. 課題意識、導入の経緯
新課程に変わるタイミングで導入したので、今年(令和4年度)で2年目。
ともすると、読むこと、聞くことに重点が置かれがちだが、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能5領域をバランスよく伸ばす授業を目指している。
他の教科書と比べると文法事項の学習が中3の早い時期に終わるので、その後の期間で応用・活用を行うことができ、しっかり定着させることができるのは大きなポイント。難易度的にも生徒に合わせたものを選びたかったので、その点でも本校の生徒にちょうど良いレベル。
また、一番後ろに付いている「Activities Plus」という付録が魅力的。その中でも特に「Question&Answer」というセクションは、本文の文法事項を「活用」につなげる工夫が盛り込まれている。単元の進度に合わせて、学習事項が5つのセクション×15問の問題と解答(赤字)が載せられていて、付属の赤シートで隠して自学自習もできる。現状まだうまく活用できていないが、今後活用できれば良いと思っている。Q. 実際の使い方
授業における展開:教材構成は1レッスンにつき3パート×9レッスン。週4単位ある英語の授業のうち1時間はネイティブとのTeam Teachingで別授業として使うため、本教科書は週3時間使用している。他校では1パートを2時間(文法パートで1時間・本文パートで1時間)かけて扱っているとよく聞くが、本校では、1パート1時間で扱う。1時間の中で、文法→本文導入→内容理解→音読→時間に余裕があればリテリングなど簡単なアウトプット活動を行う。
他校と比べると進むペースは速いので、授業時間内に理解が足りなかった点は復習を通して理解できるよう、復習を徹底して行わせる。翌時の授業の冒頭でレビューパートを設け、内容に関する英問英答など、どれだけ理解しているかを確認できるような活動を行っている。
そして1レッスン(3パート)終えたら、授業1~2時間を用いて、発表活動や応用的な活動などアプトプット活動を設定している。長期休暇明けには、全員参加の音読コンテスト「Reading Show」も行っている。教材は生徒が自由に選んでOK、50秒間読み切ることを目標に、クラスの前で音読する。主な評価基準は、聞き手に伝わる音声で音読できているか、教科書本文にどれだけ感情をこめて読めるか。学期に1度の頻度で開催し、順位は生徒の投票によって決定する。Q.工夫したポイント
授業準備で工夫していること:本校では、授業中に教員が使う英語を毎授業スクリプトアウトしてTeacher Talkを作る。各学年の主担当が授業の流れを概要として知らせてくれるので、その概要に沿ってそれぞれの教員がTeacher Talkを作成する。自分自身の英語の勉強にもなり、どういう仕掛けをどういうタイミングで行うか文面化できるので、しっかり練った授業ができる(授業は基本的にはAll Englishだが、指導手順などは日本語で書かれる箇所もある)。
新しい教科書になってどの教科書でも英語ディベートが扱われているので、英語ディベートができるように、中1の最初の段階から、教師と生徒が自然に英語でやり取りできる雰囲気づくりを心掛けている。教師がロールモデルになると思うので、こちらが意見を言う姿勢や、リーズニングする態度を見せていく。生徒間で発言するときは、必ず一文で終わらず二文以上述べるように指導し、話を膨らませられるように意識させている。評価で工夫していること:バランスよく評価することを意識している。読むこと、聞くことに評価が偏りがちだが、発表活動やインタビューテストなど話すことや、定期考査に書くことも入れて、4技能5領域をしっかり評価できるように工夫している。
Q. 実施した結果
生徒の成績の変化等:1年生の最初は一文で答えるのが精一杯だった生徒たちのほとんどが、3月のインタビューテストでは、質問に対して三文以上で答えることができていた。ALTに対して積極的に質問できる態度も養えたという感覚はある。
授業目標や工夫の意図との対比:一緒に1年生を受け持っているもう一人の教員とも話したが、「1年でここまでできたら大したもんだね」と手応えを感じている。私個人の目標である「ディベートを行う」という点でも、2年生、3年生へと今後にうまくつながっていくのではないかと思う。
Q. 今後に向けて
授業では、どうしても事実確認の発問が多くなってしまう傾向があるが、もっと生徒たちに教科書の字面を超えた考え方ができるような発問をしたい。生徒自身の意見や考えを述べさせるためには、題材に対して自身がどう思うかという評価発問や、行間を読んだうえでの推論発問などを工夫していかないといけないと思うので、今後研究していきたい。
他の先生方へ:今の教科書は難易度も上がってきているので、中学校の教科書をしっかりと読んだり聞いたり書いたり話したりできれば、海外に出ても心配ないような英語力が付くはず。検定教科書を幹にして指導できる力を付けていくと良いと思う。
- 高杉 達也
- 筑波大学附属中学校
プロフィール
筑波大学附属中学校教諭。 大学卒業後、東京都立中野工業高等学校(4年)、千代田区立九段中等教育学校(7年)、東京都立小石川中等教育学校(3年)を経て現職。 東京都に奉職時は、教育研究員、東京教師道場リーダー、教育委員会主催研修の講師などを歴任。東京都中学校英語…