ニュースがわかる世界知図
最終更新日:2022年2月23日
- おすすめしたプロフェッショナル
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松本浩欣 / 森村学園中等部高等部
ニュースがわかる世界知図
昭文社
- おすすめのポイント
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Q.良かったところ
本教材は、日本語で書かれた全カラーの資料集・地図帳で、いま知っておくべきニュースや話題が、厳選されたテーマを切り口に語られていて無駄がない。また、資料で得た知識を地図上で確認すると、より多角的に理解が深まる。毎年情報がアップデートされるため、常に「今」の世界を学び、感じ、考えるきっかけになる。例えば、英語で学んだことと、世界史の授業内容でわからなかったことが、この本で調べて深く理解できるようになったなど、他教科の学習と組み合わせた時に知識が繋がり、大きな気づきになったという声も上った。
Q.困ったところや改善してほしいところ
特にないが、本教材は少々かさばるので、生徒に毎日持ってきてもらうのが少し心苦しい。
Q.導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
2005年頃から前任の私立女子中高一貫校にて導入。現在、講師として勤務している東京外国語大学でも本教材を活用している。本教材を通じて国際教養を深め、自らの言葉で説明し、発信できるようになって欲しい。 同時に、データから情報を読み解き理解するメディアリテラシーを高める狙いもある。
・問題/課題:
コミュニケーションツールである英語で、何をどのように語るのかが重要であると感じている。特に、国際人として「言うべきこと・言うべきでないこと」の見極めは、しっかりとした知識とデータに基づいている必要がある。その知識を使ってコミュニケーションを取ったり、新たな価値を作り出していくプロセスに授業があればよいと考えている。そのアプローチの一助となるのが、本教材である。
・状況(クラスの人数やレベル):
現在は、東京外国語大学の専攻言語や地域を横断した授業で、1クラス25名の学生に向けて使用。これまでは中学生・高校生向けにも使用しており、高3生向け自由選択講座で、本教材を使用した経験もある。
・他の類似教材ではなくなぜこれか:
毎年新しい情報がアップデートされ出版される。カラーで見やすい資料が満載で、年齢を問わず興味を惹かれる。最新の社会的事象を知ることができるだけでなく、その背景まで詳しい解説が付く。取り上げられているテーマも、難民問題や紛争などの硬派なトピックから、世界遺産や世界の絶景などの柔らかい話題まで守備範囲が広い。書店で気軽に手に入れることができるのも利点。
Q.実際の使い方
【中学生・高校生】
前任校で土曜日の自由選択の授業や、探究の授業時に活用。「各国要覧」というページに各国の首都・人口・ 言語・民族・通貨・国旗などの情報が一覧でまとまっている。 これまでは、好きなデザインの国旗を選ばせ、その国旗のデザインを英語で説明したり、そのデザインの由来とその国の歴史、統計などについて、観光ポスターを作りプレゼンをするなどの取り組みを行い、更にクリエイティブな活動にも発展させてきた。
【大学生】
専攻言語・地域を問わない講座にて活用。専攻を混ぜた3、4名の小グループを作り、「教育における多様性」など、様々なテーマでディスカッションやプレゼンテーションを実施した。例えば、インドネシア語専攻、英語専攻、アフリカ地域専攻の学生たちが、本教材を使用しながらテーマに沿って、多国間を比較したプレゼンテーションを実施。それに対し、近隣の国を専攻している学生などから、近隣諸国との関係について質問が出たりなど、議論を交わしていく。ディベートが目的なのではなく、構築的に、より良い案を共に作り上げていくプロセスが深い学びにつながると考えている。プレゼンテーションやディスカッションを行うには、話すための内容(知識・情報)が不可欠であり、それを補ってくれる本教材が役立った。また、opinion / fact / truthという観点でディスカッションを振り返るときも有用である。
・指導する上での工夫:
世界で起きている出来事をまだ自分事に感じにくい中高生に対しては、視覚的に興味を持てそうな所から入ると取り掛かりやすいと感じる。また、わかりやすさだけに力点を置かず、複雑な経緯の上に成り立っている現在の世界を、さまざまな観点から俯瞰しつつ、自分事として捉えられるように心がけている。世界は決して遠いものではなく、ここは世界の一部だということをどう伝えられるかを考えながら指導している。
Q.使ってみた結果
【中学生・高校生】
初めは「かわいいから」という理由で国旗を選んだ生徒も、調べていくにつれ、悲惨な歴史を知りショックを受けることもあった。だが、ほとんど知らなかった国について初めて調べ、課題がどこにあり、それがなぜ起こり、どうしたら改善できるのかを自分事として考えたことは貴重な学びになったようだった。また、調べるだけでなく、それぞれがクラスの旗をデザインし、その意味を英語でプレゼンするなどの活動も行った。
【大学生】
大学生からも大きな反響があった。初めは「日本語の資料でしょ?」と少し軽く見ていた学生も、本教材の「情報」の鮮度と量に驚いていた。さらにその情報を英語で他者に伝えるプレゼンテーションを体験する過程で、自ら問いを立てて思考を深めることで、他者に自分の考えを整理して伝えることがいかに難しいかを学んだ様子だった。講座終了後、毎年最新版を購入し続けている学生も多い。
Q.利用が向いているクラスや生徒
小学生~大人まで。教科を問わず、使い方はアイディア次第で無限だと感じる。普段の授業で使う教科書では扱っていないようなテーマや地域について、スパイス的に扱っていくのもアリだと思う。休み時間などに本教材を眺めて、新たな気づきを得る生徒も多い。
Q.あまり合わないと思うクラスや生徒
特にない。
- 松本浩欣
- 森村学園中等部高等部
プロフィール
早稲田大学を卒業後、神奈川県の私立女子中高一貫校で教員としてのキャリアをスタート。特進コースの立ち上げに関わり、高い進学実績を挙げる。在職のまま国内の大学院で比較文化修士、教育学修士を取得後、オーストラリア メルボルン大学にて応用言語学TESOL修士号取得。東…