Explore!未来を切り拓く英語教育の推進~自ら学び仲間と高め合う授業の創造~

最終更新日:2022年8月30日

1.   授業概要: 授業の対象者、人数、目的

・対象:中学校1年生

・人数:56名(2クラス分) さまざまなレベルの生徒が混在している

・目的:中学1年生なので、進学先を考えてというよりは、本校のCAN-DOリストに合わせて生徒たちの目指す力を付けていく。モチベーションを高めて英語の授業に臨めるようになると、その学習態度は家庭学習にもつながり、結果的に学力の底上げになる。そういう良いスパイラルができるようにしたいと考えた。

 

2.課題意識: どのような課題を乗り越えたいと思ったか。また、課題解決のポイントがどこにあると考えたか

・実施の背景(課題):本校の生徒たちは、地域の6つの小学校から進学してきており、それぞれの小学校で英語を学んでいるが、生徒により英語力の差が激しい。入学時にアンケートを取った結果、約半分の生徒が「英語が好きではない、楽しくない」と回答していた。英語教育に対してあまり積極的ではない生徒たちが、モチベーションを高めて、前向きに授業に取り組めるようになる方法を研究した。

・課題解決のポイント①:モチベーションを高めるには、生徒に「自分がやっていることが通じた」というのを肌で感じさせることが大切である。そのための1つの方法として、教科書で教える授業の構成を、言語活動と結び付けてデザインした。各学期の最後に行うパフォーマンステストを大きなゴールとして定め、それを達成するために必要な力を積み重ねていくカリキュラムをデザインした。

・課題解決のポイント②:新学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」を行う指針が示された。この方針を反映した「教え込まない指導法」を目指して、カリキュラムをデザインした。

 

3.授業設計方法とポイント: 学期における構成、必要に応じて学生等からの取得情報や他教員・教科との連携

・設計:各学期の最後までにどのようなことを達成すれば良いのか、学期の初めに課題の提示をし、その課題クリアに向けて、教科書の各ユニットで関連するポイントを考えながら学習する。また、その課題がAuthenticであることも意識した。

内容:例えば、1学期末の目標は「アメリカへ交流活動に行きました。そこで初めて会ったアメリカ人に自己紹介をすることになりました。相手に分かるような自己紹介をしてください」という目標にした。この課題も、本校は毎夏アメリカと交流活動をしているので、実際に体験できることを念頭に置いて設定した。教科書の各ユニットの中で、自己紹介に関係するところはどこか、どのような表現を使えるか、考えながら授業を進めていく。4月から7月までの間にどれくらい成長したのか、最後のパフォーマンステストで行う発表を通して肌で感じることができる。

なお、2学期は「友達に自分の家族を紹介する(他己紹介)」、3学期は「日記を書く」という目標を設定した。

 

4.授業準備とポイント: 準備するテキスト、ITツール等

各学期の最初に、学期ごとの最終目標と、教科書の各ユニットで学ぶ、その目標に関連する学習ポイントを表にして渡す。(検定教科書は、啓林館の『Blue Sky』を使っている)

ユニット内の単語練習には、単語カードアプリ「クイズレット」も使っている。教員が問題を作ってリンクを配信しておく。最初の使い方だけ授業の中で説明し、あとはゲーム感覚で生徒同士が休み時間などに自主的に行っている。ICTは自学ツールとして効果的だと思う。全生徒がChrome Bookを持っていることから、GoogleスライドフォームやFlipgridを使用している。

 

5.授業実施とポイント: 授業の具体的な進め方、授業中の説明や求めたアウトプット

・授業の進め方

教科書の各ユニットと学期の目標との結びつきを意識してもらうため、ユニットごとに「どのような場面で今学んでいることを使えそうか」を考えてもらっている。以前は「この文法のルールはこうだから、こういう場面ではこう使うんだよ。じゃあみんなで練習してみよう」みたいなトップダウンの教え方だった。しかし、今年度は「教え込まない」ということをテーマに授業を展開した。また、授業においてペア活動に多くの時間を当てている。50分授業中、区切りながらではあるが合計30分程度は「スタディ・バディ」というペアを組んで言語活動をさせている。例えば過去形を学ぶとしたら、「ALTに「週末何をした?」と聞かれたときあなたなら何て言う?まず昨日の事を友達と話してみよう」と自由に話させるところからスタートする。「こういうことを言いたいけどどうすればいい?」という生徒たちの声を拾って、「これを言いたいなら、これを使うといいよ」とアドバイスを与え、もう1回会話させる。口に出して発声してもらうための工夫になる。つまり、まずはチャレンジさせ、困ったら仲間・教師・教科書を使って答えを見つけ、再チャレンジさせるという手法である。

スタディ・バディは、意図的にできる生徒とできない生徒を組ませる。モチベーションの低い生徒は、間違えることに対する不安が原因になっていることが多いので、できる生徒と組むことによって、教え合いが生まれ、積極的な発言につながる。レベルや学級内の様子に応じて、学期に1回シャッフルする。

・アウトプットの方法  

随時会話の機会を設ける他に、学期の途中でパフォーマンステストの中間審査として、「Flipgrid」というディスカッションのサイトを用いて、生徒が各自アウトプットしたものを授業中に録画してアップロードする。サイト内の設定で動画の時間を設定できる仕組みになっており、大体1分半くらいを目安に行う。

クラスメイト全員分の動画を閲覧できるので、自分のを聞き、友達のも聞いて、「こういうことを入れるといいな」など、アイディアの交換が行える。授業内でも、ペアの生徒の動画を見てお互いによかった点を話し合う時間を設けたり、サイト内で採点機能があるので、教員が点数を付けてフィードバックする。目標とのギャップを体感して、事前に示しておいたルーブリック評価基準を目指して自己調整を図る機会となる。

学期末には、クラスの前で1人ずつ発表を行う。1学期の初めに試しに行ってみた自己紹介では、設定を1人20秒にしても時間が余ってしまった。しかし、使える表現を積み重ねていくことで、7月には1分半は話せるようになっていた。

2学期の「家族紹介」では、写真を見せながら紹介を行う動画をアップ。3学期の「日記を書く」目標では、「冬休みのある日の出来事」というテーマで、Google スライドを使って、スライドショーと音声を入れてプレゼン動画を作成した。コロナがなければ、最終発表はプレゼン大会を行いたかったが、コロナの影響で3学期は最終発表もFlipgrid を使って行った。

 

6.評価とポイント: 授業内外での評価方法、フィードバック方法

●評価の観点・タイミング

・中間審査(成績評価には入れていない。目標達成のためのアドバイスの時間とする)

・学期末の発表会(成績に記録する)

生徒たちは、ルーブリックを見ながら自己調整を図り、テストへ臨んだ。

 

●フィードバック方法

ALTと共に学期末の発表を聞き、その場で口頭で感想を述べる。さらに、評価を書面で渡す。評価基準はALTと共通理解し、評価を行った。

 

7.授業を実施した上での成果と課題: 想定通りに進んだか。また、得られた成果や判明した課題

・成果:苦手な生徒も、期待以上に積極的に参加していた。勉強に対する取り組みがよくなかったが、積み重ねていくことで、自分で勉強するようになっている。英語の授業に関するアンケートの結果、モチベーションが上がってきた。例えば、4月と7月を比較してみると、「英語の勉強が楽しいと感じるか?」という項目では、「楽しい」という回答は47.3%→ 63.2%に、「今後英語が上達していくと感じるか?」という項目では「感じる」という生徒は27.2%→ 40.4%に上がっていた。

・課題:ペアでやり取りを行うと、どうしても生徒の力の差が生じる。力のある方の生徒が自分のパフォーマンスを最大限に引き出すためにどうしたらよいか、対生徒、対教師、どちらがよいのかという点が今後の課題になる。

まとまりのある文章を作成するのはまだ難しい。基本文だけをつなげても、相手に伝わる文章にはならない。そのためにも中間審査は大切。自分に足りない力を確認することができる。

 

8.授業を参考にする先生へのメッセージ: 上記を参考にして自分で実施をする先生へのアドバイスや期待すること

新学習指導要領が始まって、多くの先生が「教え込まずに、自分で学んで主体的に行う」という指導に取り組んでおられると思う。勉強が得意ではない地方の公立高校などで、生徒のモチベーションが低いなと感じられる場合、モチベーションを上げる1つの方法として、教科書のユニットを言語活動と結び付けてデザインするこの方法はよいのかなと思う。失敗を恐れない生徒の育成にもつながる。

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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