英文添削から指導案づくりまで?! 活用の幅は無限大!教員のお助けツールChatGPTの使い方を徹底解説!

最終更新日:2024年5月10日

GIGAスクール構想が提唱され、現場にもICT教育の推進が図られていますが、何ができるのか、どこから導入すればよいのかと困惑している先生方も多いのではないでしょうか。デジタルツールや学外のコンテンツを積極的に活用し、最近ではChatGPTを駆使して授業作りに取り組まれているという岩瀬 俊介先生(学校法人石川高等学校・石川義塾中学校)に、英語の授業におけるChatGPTの活用アイデアをお聞きしました。

岩瀬先生は、2024年6月に明治図書より『中学英語サポートBOOKS 英語教師のためのICT&1人1台端末「超」活用法・応用編』を出版予定です。その中でもChatGPTや生成AIの活用例からPrompt例まで多数紹介されているとのことですので、ぜひ本記事とあわせてご覧ください。

「この学校にはスタサプ講師がいる」学外コンテンツにも積極的に取り組む理由

―― ICTの活用には、もう長く取り組まれているのですか。

初任校が東京の都立高校だったのですが、たまたま各教室に1台ずつプロジェクターが入った年で、どのように使えるかな、と思い、試行錯誤を始めたのが約14年前です。私はコンピューターに詳しかったわけでも、「ICTをやろう!」と強く思っていたわけでもありません。本当にたまたま、面白そうだったので始めたのがスタートです。

―― 先生は2022年からスタディサプリの講師もされていますが、学外での活動を始められるきっかけは何だったのでしょうか。

まず一番には「経済的、地理的な理由から発生する教育環境格差を解消し、すべての人たちに学ぶ機会と楽しさを提供したいというスタディサプリ(旧 受験サプリ)の理念に共感したからです。自分がそれまでずっとやらなければと思っていたことを、個人以外でも実現できると思いました。また、もう1つには、学校の広報としてスタディサプリを捉えていたという点です。本校は地方の私立校で、部活などを通じて知ってくださっている方々はいましたが、もう少し特色を出したいと感じていました。そこで、2020年の1月頃にYouTubeチャンネルを始めました。本校は前任校よりも働き方にゆとりがあるので、学校に通えていない人たちにも自分の授業を届けたいな、という気持ちで始めました。ただ、その直後にコロナがあり、Zoomでのオンライン授業にいち早く取り組んだことが結構バズりまして。

その流れから、YouTubeで開催していた「英語講師オーディション」に参加したところ、優勝することができたんです。その後、スタディサプリの英語講師の話があり、選考ののち講師になることになりました。当然、東京への移動は長距離になりますし、学校と両立できるかと迷いました。ただ、この「田舎の学校にスタディサプリの講師がいる」ということは、学校にとって大きな宣伝になると思いましたし、全国から本校を目指してもらいたいという気持ちがあったのでお受けしました。

講師紹介(岩瀬 俊介)|スタディサプリ

YouTubeにしても、スタディサプリにしても、作っている間は両立が大変ですが、撮影が終わればまた少し時間的な余裕が出てきます。今もいろいろ準備しているところです。今後も可能な範囲でどんどんコンテンツを出していきたいと思っています。

「生徒にChatGPTを使わせたら勉強しなくなるのでは」実際どうだった?

―― 先生がご担当のクラスではiPadやChatGPTを使った授業をされていると伺いました。どのような形で活用していらっしゃるのでしょうか。

そうですね、これからは誰よりも生徒たち自身がAIなどのテクノロジーを使う時代になっていくと思うので、現段階でのシンプルな例として、ライティングの添削にChatGPTを取り入れています。従来は私が集めて添削していましたが、生徒には「まずは必ず自分で書いてみなさい」と伝えた上で、書いたものに対して、助言や修正をしてもらう流れです。

ただ、ChatGPTは「教えたがり」なので、一方的に説明されるのは困りものです。最近は事前の設定で、「必ず返答は2文以内にして」「答えを言わないで、なるべくこっちが気づくような問いかけをして」などとし、授業の中ではうまく工夫して使うようにしています。

―― 積極的に授業に取り入れることで、ChatGPTに限らず、他の新しいサービスでも「ちょっと使ってみようかな」とハードルが下がるような気がします。

学校で指導しなければ、間違った使い方や短絡的な使い方に終始してしまう可能性があります。ChatGPTに限らず、現在利用中の英語学習アプリ「abceed」の音読判定ツールなども、決して完璧ではありません。次々と出てくる新しいサービスを生徒が使ってみることで、その良さ悪さ、使い方も体験できているのかなと思います。

―― ChatGPTを使った添削などに対して、生徒からの反応はどうでしょうか。

導入初期段階では「使わせたら勉強しなくなるんじゃないか」「ChatGPTを使えば何でもできてしまうのではないか」という議論があったので、使用直後によくアンケートで反応を見ていました。生徒たちも実際に使うことでいろいろと感じてくれたようで、「こういう使い方じゃ意味ないなと思った」という感想もありました。

現在の生徒の使用頻度や方法はまちまちですが、聞く限りでは、国語の授業でいろいろ考えるときに壁打ちとして使ってみたり、数学の別解を聞いてみたり、うまく利用している生徒もいる印象です。思ったよりも「楽をしよう、ズルをしよう」という視点にならなかったので安心しました。

以前、オンライン英会話がついているサービスを利用していたこともあり、生徒にAIとの会話とフィリピンにいらっしゃる講師の先生、どちらで勉強したいか尋ねたことがありました。すると、ほとんど全員がAIを選んだんですね。夜、自由な時間にネイティブの先生と25分間、教科書を教えてもらえるプランだったのですが、生徒としては「寝落ちしちゃうんじゃないか」「後ろに映り込む弟が迷惑かけるんじゃないか」といろいろ考えたら利用できなかった、とのことでした。

我々ぐらいの世代になると、「ネイティブの先生のほうが良いに決まっている」と思うのが大多数だと思いますが、生徒世代にとっては実はAIの方が気が楽なんですよね。途中で「もう今日はいいや」と思えばプチッと終えられますし、一からやり直すこともできるというのが生徒たちにとっては大きいんだなと感じましたね。

オーラルイントロダクション、テスト問題、指導案まで!岩瀬先生のAI活用法

―― 先生ご自身は教員としてChatGPTをどう使っていらっしゃいますか。

ChatGPTは英文作成が得意なので、教科書の本文リライトや、本文から特定の品詞を抜いたワークシート作り、特定の文法項目を使った例文作りによく使います。私が1番面白いと思うのは、教員自身への背景知識のインストールです。オーラルイントロダクションでは、教科書本文に入る前に、関連したトピックや背景情報を生徒に伝えるので、教員は授業前にテーマについて学ぶ必要があります。

以前ムーミンのパッセージを扱ったとき、初めはなかなか興味を持てなかったのですが、作者の本を何冊も借りてきて、読んで初めて「ああ、ムーミンって面白いんだな」と思えたんです。最近、同じようなことでWinnie-the-PoohについてChatGPTとやり取りしていたら、それだけで面白く感じられました。ときどき事実と異なる情報も出てくるので気を付けなければいけませんが、教員の背景知識の活性化にChatGPTは大変使いやすいと思います。

他には「このパッセージで、タスクベースでカリキュラムを組んで」と指示すると、1時間目、2時間目、最終的にこういうタスクを達成できます、といった指導計画案を作ってくれます。ルーブリックのたたき台も作ってくれますね。

また、定期テスト作りでも役立っています。教科書の本文をそのまま出題するのでは、なかなか英語力を測ることは難しいかと思います。できれば授業で学んだことを試せるような別のパッセージを出したいですが、一からの作成は大変な作業です。そこでChatGPTに「こういう表現を入れて、こういう文法項目を入れて、◯◯語ぐらいの、どれぐらいのレベルのパッセージを作って」と指示すると作ってくれるんですよ。しかも最近は音声化ツールも優れているので、リスニングの問題も作れます

―― ルーブリックしかり、テスト問題しかり、AIがベースを作ってくれる分、先生方の役割が少し変わってくるかもしれませんね。

工数が削減できるので、その分違うところに時間リソースが当てられるのは助かります。これまでは作家のように頭を抱えながら自分でテストの英文を書いていたのですが、「こんな感じのパッセージなんだけど、良いテーマでリライトできないかな」と、AIとやり取りしながら作れるようになったので、時間削減にはなったと思います。

また、AIは初めの一歩をやってくれるのが大きいですよね。スライド作りの1ページ目、英文作りの1行目が一番大変です。AIがスライドを作ってくれる「Gamma」というサービスがあるのですが、最初にキーワードで出てきたスライドを少しずつ修正して、最終的に自作のスライドが完成します。これを何もない状況から作るとなると、最初の1スライド目から「どうしようかなあ」と考え込んでしまうので、最初のファーストドラフトをバッと作ってくれるのが便利ですね。

最近はどんどん技術が発達しているので、数ヶ月前はイマイチだなと思ったことも、今同じことをAIで試してみると段違いに良くなっています。それに、リクエストに何十時間でも付き合ってくれるのがAIの強みでもありますね。こうしてよとか、こうじゃないよとか付け加えると徐々に使いやすいものへ近づいていきます。自分でチューニングしたり、SNSを見て使っている方の事例を参考にしたり、そういうこちら側の使い方も大事かなと思います。

―― 次に試してみたいこと、やってみたいことはあるでしょうか。

たとえば文法を学ぶだけなら、私の動画やスタディサプリを見るとか、あるいは参考書を読めばいいですし、授業ではこういう力をつける、というそれぞれの役割をよりはっきりさせて、使い分け・組み合わせで生徒たちの英語力がさらに高まるような取り組みをしていきたいですね。

私が今やっている授業は、生徒の実力はついているので私は問題ないと考えていますが、クラス全員が英語好きになっているわけでもなければ、英語力が急激に高まっているわけでもありません。そういう意味で英語好きを爆増させるモチベーションアップ法などの取り組みに挑戦してみたいと思っています。

取材・構成:小林慧子/記事作成:吉澤瑠美

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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