教育トーク : 英語学習におけるリテリングの有用性 ~自分の言葉で説明できるのは理解の証~

最終更新日:2022年5月19日

プロフィール

  • 早稲田実業学校 英語科教諭 秋山新太郎

  • こども教育宝仙大学・青山学院大学 五十嵐美加

    2007年~和歌山信愛中学校・高等学校、2012年~慶應義塾大学社会学研究科修士課程、2014年~東京大学大学院教育学研究科博士課程、2020年~東洋英和女学院大学教職・実習センターを経て、現在、こども教育宝仙大学(実践英語担当)、青山学院大学(心理学応用演習担当)兼任。 修士課程在学中、英国オックスフォード大学への留学経験有り。

 

中学校では2021年度から、高校では2022年度から新学習指導要領が実施されます。英語は「話す」活動において「やり取り」と「発表」の2領域に分けて目標が設定されました。

しかし、「やりとり」や「発表」のために、毎回の授業でクラスのみんなが前提知識を持っているトピックを考えるのは大変です。

また新学習指導要領では、これまで以上に主体的に学びに取り組む態度の育成が重要視されています。ただ、何をもって主体的な学習態度とみなすのか、そして、主体性をどのように育めばいいのかなど、課題は山積みです。

そこで今回は、リテリングを活用して、英語のスピーキングスキルだけでなく、主体的に学ぶ態度、つまり、自律的な学習態度の育成に取り組んでいらっしゃる早稲田実業学校の秋山新太郎先生(英語科教諭)にお話をお伺いしました。

 

読んだものを説明できなかったら読んだ意味がない

(五十嵐)今、意識して実践してること、探究学習や教科横断的指導などが流行りのキーワードになっていますが、英語の中で意識してやっていることがあれば教えてもらえますか?

 (秋山)今年着任だったんですが、いきなり高校3年生の担当でした。年度初めにやりたいことを聞いたところ、スピーキングを練習したいと言われましたので、コミュニケーション英語の時間に必ずリテリングの活動を入れました。

どこの学校でもそうだと思いますが、英語が得意な子と苦手な子はいます。苦手な子には、リテリングは難しいかな、楽しくないかなと思っていたのですが、割と評判が良かったです。英語ができない子はできない子なりに、きちんと日本語を使わずに英語で話そうとします。最近、スピーキングの指導で「型を与えない」ことのメリットもある、という記事をよく見かけます。自由にやらせてみてもいいのかな、と考えました。

実際、生徒はちゃんと型を与えなくても話そうとするし「英語を勉強しようという気にもなるんだな」というのを今年一年間やって再確認できました。授業の終わりにリテリングシートを配るのですが、最後の方はみんなリテリングのために教科書を理解しようとか、リテリングのために聞こうとか、そういう風になってくれていました。生徒の資質にも合ってたのかもしれませんが、前向きに使ってくれましたね。

 (五十嵐)リテリングは前任校から引き続きやっていましたか?

 (秋山)やっていました。

 (五十嵐)あえて聞きますが、リテリングの有用性ややることの効果は何なんでしょう?

 (秋山)生徒が自分の理解を確認できることと、英語を話す機会を作れることです。

まず、理解の確認については「読んだものを説明できなかったら読んだ意味はないよ」と人に言われたことがあります。読んだからにはその知識なり知恵なりを使ったり、人に伝えたりして初めて価値が出ます。それは日本語でも英語でも関係なくて。読んで説明できなかったら、それは理解できてないってことだと思います。

だから、リテリングをしてみる。リテリングにはワークシートがあり、ピクチャをいくつか載せていて、ピクチャとキーワードが並んでいます。例えば、1枚目と2枚目のピクチャは説明できるけど、3枚目は説明できないとなったらそれは3枚目のところだけ理解できてないというなので、そこは読み直す必要があるということになります。

生徒が、自分で自分の理解の度合いをはかれるというのは利点の1つで、あとは英語を話す機会づくりですね。毎回毎回スピーチとかフリートークとかだとトピックの設定も難しいし、大変です。でも読んだ内容について説明するとなればwhatを考える必要はないから、How to tellの部分に集中できるので、そこに意義はあるかなと思います。

 (五十嵐)それで先ほど「型を与えすぎない指導」の流れがあるという話がありましたが、その話と今の話はどう絡んでくるんでしょうか。

 (秋山)例えば、中学生なんかだと特にあまり話せないから、A: What do you have in your bag? B: I have 〇〇 in my bag. というような会話のモデルを与えて、それに沿って答えさせるワークシートを作る人が多いと思うんです。そういう型を与えないと話せない、授業にならないと考えている先生が多い。一方で、カバンの中身を聞くのであれば、What is in your bag?と聞いてもいいわけです。キチッとした型を与えてしまうと、この聞き方は生徒からは出てこないわけです。そのように型を与えないからこそ、生徒が、自分で使える表現と使えない表現に気づくというか。だから私はリテリングの時に、型は与えずに自由に自分の言葉で説明するように意識させています。実際、生徒は意外とできる。いい効果があったなと思います。

 

リテリングは「教えて考えさせる授業」の理解確認のフェーズ

(五十嵐)凄くいいと思います。私の博士課程の時の指導教授が「教えて考えさせる授業」を提唱していました。

例えば、真っ当な探究学習なら良いのですが、学習者たちにその探究学習に取り組むだけのレディネスがない状態で、「考えてみましょう」「自分で見つけてみましょう」と言われても、何を考えたらいいかわからない、何も見つけられないという子が出てくる。

一方、塾に通っていたり、文化的・教育的資本が整っている家庭の子なんかはレディネスがあって、「自分でやってみなさい」と言われて何をやればいいのかすぐ理解してどんどん進んでいける。

でも、準備が整っていない、前提となる知識やスキルがない子は「何をやったらいいんだろう」とポカーンとしていただけで授業が終わる。それで教師自体は説明しない、教えない方がいい、いかに気づかせるかが大事だと思ってる先生がいます。

でも、気づくにしても、気づくための材料をまず与える必要があります。やはり前提知識はクラス全体でちゃんと揃えてあげて、つまり、教えるところはきっちり教えてあげて、準備段階を整えてあげて、その後、その教えたことがしっかり分かったかどうか、理解の確認をしなきゃいけない段階がある。

教えて考えさせる授業というのは4段階あるのですが、1つ目は教師からの説明の段階、2つ目は説明されたことに対する理解確認の段階、この理解確認の段階で「教わったことを自分の言葉で説明してみましょう」という活動をやります。そして先ほど秋山先生も言ってましたが、ちゃんと自分の中でクリアになってないことは説明しようとすると言い淀んでしまう、だから、自分の言葉できちんと説明できるってことはそのことがきちんと理解できているかの証拠になります。

その辺りを生徒同士で相互に説明し合ったりして理解を確認する。その段階を経て、ようやく応用的な、探究的な活動に入っていく。理解したことを使って、何か応用的な課題をやる。それで最後の段階で、振り返りをやって、今日学んだこと、まだよく分からないこと、自分がどこまでわかって、どこからわからないかを考える。この4段階でやってくのがいいよねという考え方なんですよね。

それで、いま秋山先生の話を聞きながら、リテリングは理解確認の意義があるんだなって思いました。読んだものを読みっぱなし、カッコ埋めの課題をやって終わり、じゃなくて、自分の言葉で文章として説明できる。それで「自分の意見言いなさい」というような課題ではなくて、読んだものはみんな一緒で、与えられた読解課題の文章の解説が教える段階で、それに基づいて自分で英語を使って説明してみる、理解確認の段階になってるんだろうと。本当に凄く良いと思いましたし、リテリングの効果は高そうです。

 (秋山)自分はそこまでは出来なかったのですが、大学の先生にアドバイスをもらったときに言われたのは、どこかの段階で話した内容を書かせた方が良いということ。書かせたものを見れば生徒の理解が一目瞭然なので、教師の説明がどうだったか、どこが伝わっているかが分かる。良いリテリングの共有も可能になるので、やる価値はあると言ってもらいました。自分はまだそこまで出来ていないのですが、今後できたらなと思います。

 (五十嵐)リテリングっていうのは書くのも言うのもどちらもありますか?

 (秋山)まずは言うのが先で、自分が言ったことを最後文字起こしする段階をいれてもいいと思います。

 (五十嵐)それで授業の中ではまとまった文章をまず読み、それをリテリングする感じですか?50分の中での配分はどうなっていますか?

 (秋山)私の授業のだいたいの組み立ては、最初にウォーミングアップを1、2分。次にオーラルイントロダクションで大まかな内容説明を5分くらい。解説が10分~15分、単語・フレーズの確認を10分、音読10分、残った時間でリテリングとなっています。

リテリングは最初に何を言うのか、組み立てをワークシートに記入させる。これは3分くらい。なるべくキーワードやフレーズだけを書き込んで、英文は書かないように指導します。英文を書いてしまうと、どうしても「読む」活動になってしまいます。難しいですが、あくまで「スピーキング」の活動だと繰り返し伝えました。その後、組み立てが終わったら、1分でリハーサル。一人でつぶやく時間をとります。発表はペアで1分ずつ。少し短いくらいで大丈夫です。時間が余ったらパートナーを変えてもう一回やらせます。その時は1分間リハーサルの時間をまたとり、1回目で言えなかったところを中心に練習させてから、もう一回やります。

2回目だから、どんな生徒でも1回目よりは上手く言えます。ガッツポーズしている生徒もいましたね。時間をしっかりとれる日だとリテリングで10分程度とか。レッスンにもよるので、そんなに時間を取れない日もありましたが、最低でも準備、リハーサル、本番で6分は使います。

 

解説の段階では教科間の連携も意識したい

(五十嵐)しっかり解説してもらった文章をリテリングするわけですね。解説では具体的にはどういうことを扱っていますか?

 (秋山)難しいところは和訳もやってあげる必要があります。それでも基本的には文の構造を意識して欲しいので、例えば強調構文だとか、単語を拾うだけでは意味が取れない複雑な構造のところを主になります。

あとは、表面的な理解に留まりがちなところも解説します。例えば、農業改革に関するレッスンです。食料生産を上げるために、中東とかに緑を増やそうという「グリーンレボリューション」というのが1960年代くらいにあったのですが、それで、どんどん灌漑設備を増やした結果、今度は水が足りなくなってしまった。現代では水の使い方についての革命、「ブルーレボリューション」が必要だと言われています。

そうした内容のレッスンですが、農業などには生徒はまったくなじみがない。irrigationの訳が「灌漑」というのが分かったとしても、灌漑とは何するのか、どういう仕組みなのかなどが分からない。本文中に “drip irrigation”という新たなやり方が紹介されていて、点滴灌漑っていう日本語があてられていますが、教科書には写真がないので、どんなものかわからない。「点滴灌漑」という言葉だけとって理解したつもりになってしまう。それだけは防ぎたいなと意識してましたね。文構造はもちろん説明しますが、和訳を見て、「この『灌漑』ってそもそも何?」などはよく聞いてました。リテリングのワークシートの中にも、点滴灌漑の解説で使う写真を入れておいて、「それについて説明できないとダメだよ」と暗に伝えていました。

 (五十嵐)灌漑とかだと、社会の地理とか、そういう分野が関わってくるのかなと思います。しかし、社会の授業で灌漑が説明されていてもちゃんと授業聞いてるのかとか分からないかもしれないですね。

 (秋山)そうですね。レッスンの内容を教わってる場合は、「知ってる人?」とか言って、「知ってるんだ。では説明して」と出来るから楽しいですね。

 (五十嵐)やはりそのように少しずつ、一つのことだけでもピックアップして教科間で連携できるといいですよね。

 (秋山)今年は新任だったのでフランクに尋ねたりできなかったですけど、前任校では、事前にこれ授業でやりました?とか探りを入れていましたね(笑)

 (五十嵐)教科横断的な指導、意識してますね。

 (秋山)意識していますね。せっかく専門家がいっぱいいるわけですから。

 (五十嵐)結局その知識のネットワーク、つまり知識は結びつきがある方が絶対定着するし印象に残る。この授業でやったことが別の授業でも使えるとなればとても良いですよね。

 (秋山)間違いないと思います。

 

リテリングでは細かい文法は棚上げ、内容が大切

 (五十嵐)それでリテリングのワークシートは最後は提出させますか?

 (秋山)いいえ、提出はさせなかったです。

 (五十嵐)リテリングのフィードバックはどんな感じでやっていたのかと思いまして。

 (秋山)peer review(※生徒同士のフィードバック)を必ず入れてました。peer reviewだとあんまり厳しいことは言えないのですが、いいことばかり褒めるだけじゃなく、ここをこうやった方がいいとか改善点も言うというやり方を必ずやらせてました。

 (五十嵐)リテリングの際は文法の細かいところは問わなかったのでしょうか?

 (秋山)問わないです。とにかく「自分の言葉で内容を伝える」という点を重視していたので、間違った内容でなければ問題ないです。そこは主眼じゃないので。

 (五十嵐)目的はあくまでも読んだ内容の理解の確認なので、文法的なことはこの時は問いません。文法などは他のところで見る機会を確保してフォローします。

 (秋山)高校の教科書もこの4月から変わりますが、結構リテリングが出来るように編集されてる教科書は多い印象です。

 (五十嵐)先生方みんな効果的に活用なさってるのでしょうか?活用なさってないとしたら、自分の言葉で説明することの価値を先生方があんまり認識されてないのかな。なんか物理的にやる時間がないというよりも、やらなくてもいいと思ってるのか。

(秋山)その前に使い方が分からない先生も多いのではないでしょうか。先ほど言ったようにやはり型を与えないとできないだろうと考えている先生は、ワークシートづくりが大変でやらなくなったりもあると思うんですね。

 (五十嵐)ワークシートのサンプルを見せてもらうことできますか?

 (秋山)大丈夫ですよ。

 (五十嵐)ぜひ見せてもらいたいです。私も大学の授業でちゃんとリテリングやろうかなと思っています。

 (秋山)面白いですし、学生さんも楽しいんじゃないかなと思います。(ワークシートを表示しながら)

 (五十嵐)このワークシートは作るの結構時間かかりますか?

 (秋山)私の場合、授業冒頭のオーラルイントロダクションで内容全体に触れます。そのイントロダクションで使う写真をそのままこのワークシートに持ってくるんです。「秋山はこんなふうに説明してたな」というモデルを最初に提示できるので、一石二鳥でした。教科書の付属データにリテリングシートがあり、この5枚の写真のうち2枚は教科書データのものですね。キーワードとメモのところも、同じワークシートに載っているので、最低限であればすぐ出来ると思います。私の場合はもう少し足して作っていますが。

 (五十嵐)では基本的にはこのキーワードを使って、ピクチャ―の順序通りに説明すればそのストーリーになるというものですか?

 (秋山)はい。私はそこを意識して作っています。

 (五十嵐)大変勉強になりました。今日はお時間ありがとうございました。リテリング、教員養成課程の学生を指導する際にも意識してみます。

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

国際教育ナビ編集部員による特集記事です。先生方にお寄せいただいたご意見の中からテーマを選出し、当編集部ライターが取材の上記事を作成しています。

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