英語の授業における探究的学びの促進 ~外部との連携を通して~ ②外部連携を実現するためのコツ

最終更新日:2022年2月28日

英語の授業で主体的・対話的・深い学びを高めるため、外部連携を取り入れた授業を実施している。(外部連携授業内容については前編参照

外部連携授業を実施するにあたって、連携先との目線合わせが重要であると実感した。ここでは外部連携授業を実現するために、どのように連携先(今回は企業)と接しているかについてご紹介させていただく。

 

■連携先の授業とのかかわり

連携企業は初回授業で講義を行い、また最後の授業で成果発表に参加してフィードバックを提供した。

最初の講義の目的は「教科書の学習内容と企業との関連性を示し、課題提示を行うこと」と設定し、具体的には1回の授業を使って、企業がどのような事業を行い、生徒にどのような課題を行ってもらうかを説明する授業とした。

成果発表の目的は「提示された課題に対する生徒のアプローチの仕方を提案すること」と設定し、具体的には1回の授業を使って、生徒が企業の講師を相手に、課題解決のためのプレゼンを行う授業とした。

 

■連携先:(2021年の例)

オリィ研究所 COO 結城 明姫 様

オリィ研究所は、コミュニケーションテクノロジーの開発を行っており、代表作に、分身ロボット「OriHime」がある。難病や高齢で寝たきりの人がインターフェースを通してロボットを遠隔操作することで、社会参加を支援するロボットである。 

 

対象生徒:探究科1年生

対象科目:総合英語

テーマ:アンドロイド研究について(CROWNⅠ Lesson 9)

「ロボットと人間の関係」という観点から、オリィの技術に関連付けた

 

■発表会実施までの連携先との流れ:(2021年の例)

3/24 交渉成立(対象1年生入学前)

7/13 打ち合わせ(課題の設定)【課題:自分たちの住む地域の施設等に、OriHimeを提案せよ】

8/19 打ち合わせ

8/30 連携授業①(企業講義)

【 通常の授業 】

9/24 連携授業②(発表会)

10/11 振り返り

 

■連携ポイント:CAN-DOリストの活用

2020年に連携授業1例目を実施したとき、「今回の生徒は英語レベルが高かったので実現できたのではないか」という意見が担当者の中で出た。連携先との打ち合わせ時に、生徒レベルと到達目標を共有できていたか?を考えるようになった。そこでいろいろな生徒のレベルに対応できるようにするため、CAN-DOリストを活用できるのではないかと考え、2回目の授業では活用してみた。

連携授業の準備として、数カ月前の交渉時から、CAN-DOリストを使用し、企業側の講師と目線合わせを行った。通常CAN₋DOリストは、内部向け(教員・生徒向け)というイメージがあるが、外部向けに使ったのは珍しい事例だと思う。数カ月先をイメージし、外部連携時までに、どのくらい英語が話せる状態で、どのくらい書く力を付けているか、生徒のレベル感を共有した。

CAN-DOリストを使用しなかった1例目は、生徒のレベルに対してかなり難しい課題が出た。「高校生なので易しめの英語でお願いします」と伝えていたが、「易しい」のレベル感を言葉だけで伝えるのは難しいのだと分かった。2例目は、最初はやはり難しめの課題を設定したが、CAN-DOリストがあったことによって、生徒にふさわしいレベルの課題設定ができた。

 

■企業からの評価

2回目実施時の発表会では、企業から生徒発表に対して以下のようなフィードバックがあった。

・ユニークなアイディアを多く出してくれた。

・課題が地元に基づいていたので、地域の状況が良く伝わって、地域のことが良く理解できた。

(中学英語や高校の英語表現でも地域紹介というタスクはある。他の地域の方がしっかり理解できたのは大きい)

・インフォメーションギャップをきちんと埋めることができた。

・英語で高校生ときちんとやり取りできたことは新鮮だった。

 

また、本取り組みへの感想として以下のようなコメントをいただいた。

・打ち合わせ時のレベル確認がうまく行った。

・こういう機会が、高校生の進路意識にも影響すると思う。

・連携授業に興味を示す企業も多いはず。

 

■今後に向けて

外部連携に取り組む先生へのメッセージ:

外部連携で最先端のリアルなものに触れてもらうことで、生徒の意欲も違う。教員にとっても、現場の人に扱ってもらうことにより、教科書の中だけの話ではなく、良い学びの機会になる。その連携先とより効果的な授業を実践するためには、CAN-DOリストの活用をお勧めしたい。

どの学校でも、CAN-DOリストの作成には時間と労力を費やしている。せっかく作ったCAN-DOリストを、校内だけでなく校外にも活用してみるのはどうか。加えて、動画などでも生徒の現状を共有するなら、連携先にとっても生徒のレベル感の目安が分かり、協力しやすくなるかもしれない。

この記事を書いた人

国際教育ナビ編集部

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