それでも私は教員になりたい 〜 教職課程で学ぶ学生たちの座談会 〜 (後編)

最終更新日:2022年7月24日

 前回は、東洋英和女学院大学の「英和教職実践研究会(ETC)」ご協力のもと、国際教育ナビ編集部から教職課程を履修する3、4年生の方々へ「なぜ教員を目指すのか」についてインタビュー。一人一人の原体験や目指す将来像を伺いました。

 後編では、中学・高校での教員経験もある同大講師の五十嵐先生が、学生たちの思いをさらに深堀り。取材を見に来てくださっていた同大准教授 尾崎先生を巻き込みつつ、教員を育成する大学のあり方についても議論しました。

 

[参加者]

4年

臼杵ふたばさん(人間科学部 人間科学科)

木村咲花さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

鈴木はる香さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

 

3年

風元優花さん(人間科学部 人間科学科)

杉崎知美さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

森晟捺さん(人間科学部 人間科学科)

Fさん(人間科学部 人間科学科)

 

教員

尾崎博美 准教授(博士(教育学))

五十嵐美加 講師(人間科学部 人間科学科)

 

より良い教育現場を作るには、中の人になって変えねば

 

(五十嵐)これだけ教員はブラックだと言われているのに、それでも教員になろうとしている、あなたたちのような学生はすごいよ。その気概はどこから来るんだろう?

 

さっき木村さんは「生徒に慕われて、生徒の自己実現も支援できる。そういう人間関係から来る幸福感が魅力だ」と言っていたけど、生徒とうまく折り合いがつかなかったり、不登校の子がクラスに何人も出たりしたら、プツって心の糸が切れちゃう先生もいるんじゃないかな。「教員の魅力とは何だろう」っていうのを、もっと深堀りしてみたいな。

 

(臼杵)私は小学校のときから社会科が大好きでした。教員を志望したのは、社会科に関することをずっと続けられるからなんです。だから私は学級運営より教科指導のほうが楽しみですね。

 

(五十嵐)教科が好きで、その楽しさを伝えたいということ?

 

(臼杵)「楽しいからみんな歴史にハマって!」とまでは思いませんが、将来、社会に出るときに、授業でポロッと話した社会科の内容が何かのヒントになったらいいなというのはあります。

 

(五十嵐)たしかに、先生が楽しそうだと見ているほうまで楽しくなってくるから、「この教科が好き」というきっかけは良いよね。一方で、つまらないとか、その教科を特に面白いと思っていない先生は「こんなつまらないものを勉強したくない」という生徒の気持ちが理解できるだろうから、それも大事だと思います。

 

 

(F)私は、「ブラック」と言われているこの状況を変えたいです。日本の教育体制ってあんまり変わっていないんじゃないかなと思うんですよ。全体的に堅いなって思うこともあるし、コロナ禍になってやっとオンラインが普及し始めたじゃないですか。きっと私の考えにも問題はあるだろうし、「自分の思いどおりにしたい」とまでは思わないですけど、今の学校とか教育制度の中で疑問に思っていることがいっぱいあります。

 

(五十嵐)それは大事な点かもね。皆さんが親になる頃の、次世代の子供たちが、今のこの教育をそのまま受けていていいのか、という考え方はある。より良い教育現場を実現するには中の人になって変えねば、ということですね。

 

みんなも、経験から、学校には良い先生もいれば、微妙な先生もいるって思うよね(苦笑)。全員良い先生ならみんなハッピーなのに、なんでそんな指導をしちゃうんだろう、って先生も残念ながらいる。だから、みんな良い先生になってほしいなと思って、大学で教員養成に携わるようになりました。

 

東京都の公立中学校で教員をしている知人いわく、「以前に勤めていた学校と今の学校を比べたら、休みやすさが全然違う」って。管理職の先生が「休んでもいいよ、休んだときはお互いさま」みたいな空気を積極的に作ってくれればいいけれど、そうじゃないと休みづらいよね。ぜひ管理職になって、あるいは教育委員会や文科省に入って現状を変えてほしい。

 

生徒にとって良い環境を整えるため、つまり、学校現場でより多くの“良い先生”を確保するために、先生にとっての働きやすさの改善も必要ということだよね。

 

大学は「定額学びたい放題」、勉強を授業や実践に活かして

 

 

(森)私は小学校のときに「こんな勉強をしていても、将来使わなくね?」って勉強自体への興味を失ってしまったんです。だから、自分が勉強しようと思えるような授業をすれば、生徒たちも勉強しようと思えるんじゃないかと思って、教員になろうと思いました。

 

先生方はいろいろな工夫をして授業をしてくれていましたが、私自身「つまんないな」という先入観もあったから、結局私が勉強を楽しいと思えるようになったのは大学に入ってからなんです。だから自分と同じようになってほしくないという気持ちが強いです。

 

(五十嵐)教育心理学という分野もあるように、教育と心理は結構重なる部分もあります。そういう動機付けには心理学の知識が必要だろうね。この子にはこういうアプローチでやったほうが面白いと思ってもらえるとか、この子は競争心をあおったほうがやる気になるとか、個々の特性を見てどうモチベーションを高めるかというのは完全に心理学の領域だし。一方で、どんな内容を教えるかという点は教育の範囲。行ったり来たりしながら、学問と学問を連携させて指導できる先生になってほしいですね。

 

(森)ありがとうございます。なります。

 

(五十嵐)私自身は、授業で教育心理学を半期履修したぐらいで、あまり深掘りして勉強しなかったから、動機付けや認知特性についても深い知識がないまま教壇に立っていた。その反省もあって、教員を一度辞めた後は大学院に進学して、しっかり教育心理を勉強し直しました。

 

皆さんは、心理学の先生も身近にいるし、せっかく学べる環境にいるんだから、たくさん学んで必要な知識を得てほしい。言ってしまえば大学は「定額学びたい放題」ですから、興味ある授業は自ら聴講して、勉強して、自分の授業や実践に生かしてもらいたいな。

 

教育心理学という観点では、生徒との距離感についての質問がありましたが、生徒によって異なる部分もあると思います。ピタッと、お母ちゃんみたいな感じで寄り添ってあげたほうがいい子もいれば、放っておいてほしいタイプの子もいる。でも共通して大切なのは、信用できる大人だと思わせることだよね。離れていても「いざというときは頼ってくれていいぜ」という視線を送り続けるとか、うそをつかないとか、絶対に味方でいるとか。そういうことが大事だと思います。

 

 

(五十嵐)プライベートについても質問があったね。やっぱり休日にちゃんと休めるかどうか、ワークライフバランス的な話が聞きたい?

 

(臼杵)一般企業でもそうだと思いますが、教員は平日朝から晩までお仕事じゃないですか。だから、たとえば休日にジムに行くのが楽しみで平日頑張れているとか、そういうモチベーションがあるなら知りたいです。あとは家族との時間が取れているかどうかも気になります。教員同士でご結婚される方も多いじゃないですか。そういう家庭ではどうしているんだろう、って。

 

(五十嵐)お母さんやお父さんが先生という人はいる? あ、この中にはいないんだ。

 

(杉崎)私は祖父が教員でした。20年前に辞めたんですけど、教頭をしていました。その時代の先生はすごく忙しかったらしくて、朝7時に出て夜9時に帰っていたそうです。

 

(五十嵐)そうなんだ。「自分の子どもの教育は後回しになっている」って言われなかったのかな。

 

(杉崎)男性ですし、時代が時代だからそれが当たり前だったんじゃないかなと思います。祖父の話しか身近な例がないので、詳しくは分からないですが。

 

(五十嵐)男性は仕事に専念して妻は家庭で家事育児を頑張る、という時代だったんでしょうね。今は、だいぶ変わってきていると思うけど。

 

教員を志す学生たちに、大学は何をしてあげられるのか

 

(五十嵐)今日はみんなの素晴らしい覚悟が聞けて良かったです。教員にしかない、職業としての魅力があると私も思います。志望する人が少なくなってきていますが、社会に必ず役に立つ仕事なのでぜひ教員になってもらいたいです。

 

尾崎先生! 先生から質問はありますか?

 

(尾崎)え、私ですか?(笑)じゃあ、私は教育学をみんなに教えているけれど、本学の教員養成課程は、みんなから見てどうですか? 教職課程は、登録者全員が最後まで履修するわけではなくて、違う進路が見えたとか、普通に心が折れたとか、いろいろな理由で辞めてしまう学生もいます。そんな中でも、今日集まってくれたあなたたちは教員への道にまい邁進している。教員養成課程として私たちは何をやってあげればいいのかな、って。

 

五十嵐先生のように職務経験があると、ゼミの先生とはまた違ったアドバイスができる側面もあると思うし。どういうことを求めているのか、聞いてみたいです。

 

 

(鈴木)良いか悪いかで言えば、すごく良い教員養成課程だなと思います。

 

(五十嵐)やった!

 

(鈴木)長年教員養成をしている女子大ということもあって、少人数で手厚く見ていただける体制ができているのかなと思うんですが、一人一人の面談にしっかり時間を取ってくださるのがありがたいと思っています。

 

(五十嵐)ドロップアウトしちゃう子とかは、どうなんだろう。

 

(木村)履修が大変だから、というのはあると思います。ドロップアウトするのは、他にやりたいことがある人だと思うので。でも、授業がオンデマンドになって、ドロップアウトする人は減った気がします。オンデマンドのほうが自分で時間を決めて進められるので、履修の難易度は、対面授業中心だった頃より下がっているイメージがあります。

 

(F)私は一時ドロップアウトしかけました。1年生の頃はまだ教職を考えていなかったので、教職課程に進んでから2年生で取らなきゃいけない授業が増えてしまって、「落としたらどうしよう」というのがプレッシャーでした。不安を重く捉えてしまう性格なので、結構つらい時期もありましたが、なんとか乗り越えられたことが今は自信になっています。

 

今も、履修の関係で去年取れなかった講座を取っているんですが、最初の授業で、隣の席に2年生の子が座って「よろしくね」と話し掛けてくれたんです。私が3年だとは知らなかったんだと思いますが、同学年のようにフレンドリーに話し掛けてくれたのが私もうれしくて、このまま隠し通すつもりで「こちらこそよろしくね」と言ったら、授業の最初に先生が「この列は先輩の列です」と言っちゃって、その隣の席だった子が「すいませんでした」って急に他人行儀に(笑)

 

(五十嵐)そこ伏せておいてくれたほうがありがたかったかな(笑)確かに「原則、2年次に履修すること」という授業は多いかも。ゼミも学年ごとに分かれているし、違う学年で交ざり合って学ぶ機会が少ないのかな。

 

(風元)私は、その一部始終を見ていました(笑)みんな一緒に教員を目指しているんだから、そういう学年や年齢の差をごちゃ混ぜにして、「みんなで目指そう」という環境が作れたらこのETCにも意味があるのかなと思います。

 

(五十嵐)そうか、ETCを活用してもらえばいいんだね。別に勉強するつもりじゃなくても、「しゃべりたい人はしゃべりにおいで」って。

 

 

(尾崎)以前からかもしれないけど、最近はより本格的に活動している様子がうかがえたり、五十嵐先生からETCの活動を聞いたりしていて、すごく良いなと思っていました。教員も一生懸命教えるけど、同じ目標を持つ学生同士で感じ合い、共有していく経験は、教員が与えられるものではないからね。面白かった。勉強になりました。

 

(五十嵐)無茶振りしてすみません(笑)ありがとうございました。

 

(尾崎)みんな!教員になるなら、無茶振りに耐える資質も大切ですよ!(笑)

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