それでも私は教員になりたい 〜 教職課程で学ぶ学生たちの座談会 〜 (前編)

最終更新日:2022年7月23日

 かつては子どもたちの憧れの職業だった「学校の先生」ですが、昨今は過酷な労働環境や保護者トラブル、待遇の悪さなどが問題となり、教員を志す学生も年々減少の一途をたどっています。今、それでも教職課程を履修し、教員を目指す学生たちはどのような思いを持っているのでしょうか?

 東洋英和女学院大学の「英和教職実践研究会(ETC)」にご協力いただき、教職課程を履修する3、4年生の方々にお話を伺いました。

[参加者]

4年

臼杵ふたばさん(人間科学部 人間科学科)

木村咲花さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

鈴木はる香さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

3年

風元優花さん(人間科学部 人間科学科)

杉崎知美さん(国際社会学部 国際コミュニケーション学科)

森晟捺さん(人間科学部 人間科学科)

Fさん(人間科学部 人間科学科)

 

「先生のようになりたい」私の進路に影響を与えた恩師たち

 

―― 皆さんが教員を志すに至ったきっかけや原体験について教えてください。まずは4年生の木村さんから。

 

(木村)私が教員を目指しているのは、中学校の担任の先生の影響が大きいです。日々忙しい中でも生徒一人一人を気にかけてくれる先生で、体育の授業でも、得意・不得意隔てなく誰でも楽しめるように工夫をしてくれて、体育が苦手だった私はとても助けられました。

あとは、卒業式のときに体育館で、長渕剛さんの『STAY DREAM』を歌ってくれたんです。

 

―― すごい。先生1人で、体育館で歌ってくれたんですか。

 

(木村)1人で、40人ぐらいの私たち生徒に、ギター弾き語りで歌ってくれて。そういう人柄にも魅力を感じて、「こういう先生になりたいな」と思ったのがきっかけです。

私自身は英語が好きだったので、教員という仕事を通じて英語の魅力や楽しさを生徒たちに伝えられたらいいなと思って、中高の英語の教職課程を取っています。ちょうど2週間後から教育実習がスタートするところです。

 

(鈴木)木村さんと似ているんですけど、私も中学時代の英語の先生に憧れて教職を取っています。中学の頃に所属していた剣道部の顧問の先生が英語の先生で、その先生にはたくさんお世話になりました。

当時、私は英語が苦手で、なかなかテストの成績が伸びないときにもよく相談に乗ってもらいました。他の生徒からも厚い信頼を得ていて、その先生の存在は大きかったと今でも感じています。

 

 

(風元)私は小学生の頃から、学校の先生になることが将来の夢でした。小学生のときに、クラスの雰囲気を盛り上げたり、一致団結して何かに向かう姿勢を作らせたりするのがうまい先生がいて、その先生に憧れて「先生になりたい」と思っていました。

中高時代も影響を受けた先生が何人もいたんですが、だんだん先生の難しさも知るようになってきて。ネットでも「先生は過労になりやすい」「とにかく忙しい」と言われているのを見て、私には無理かなと諦めかけていました。そんな中、たまたま心理学や人間学に興味があって入学したこの大学で、資格について調べていたら教育資格課程があるのを見つけました。

これまでにお世話になった先生に憧れる気持ちは変わらずあったので、これも運命というか巡り合わせというものなら、私も教員になれるんじゃないかなと思って挑戦し始めました。

 

中高時代の体験から教職の道へ「心のサポートもしてあげたい」

 

―― 皆さん、学生時代に教わった先生の影響は大きいのかもしれませんね。森さんはどうして教員を目指そうと思ったのでしょうか。

 

(森)私は、皆さんのように直接的に教員に憧れたわけではなく、スクールカウンセラーになりたくてこの大学に入ったんですけど、いろいろな授業を受ける中で、心理学より教育学に関心があることに気付きました。授業自体も教育学の授業のほうが楽しくて、楽しいと感じているなら資格取得も負担なく楽しく取れるんじゃないかなと思い、教職課程を取り始めました。

 

―― ということは、今目指しているのはスクールカウンセラーではない?

 

(森)今、目指しているのは教員です。教育学と心理学を別々に扱うのではなく、関連させながら生徒たちと接していきたいなと思っています。私、小学生のときにスクールカウンセラーの方にお世話になったことがあるんですが、それまではずっと担任の先生に相談していたのに、途中から急に「スクールカウンセラーの人に相談してください」と切り替えられて、ちょっと寂しい思いをした覚えがあります。

教員のほうが生徒と接している時間は長いですし、勉強だけでなく心のサポートもしてあげられたらいいなと思っています。

 

(F)私は、高校生のときに、学校が怖くて休みがちだった時期があるんです。部活はすごく楽しかったんですけど、それ以外が全部嫌になっちゃって。でも今は、その高校生のときに自分でもできることがあったんじゃないか、と後悔しています。

学校を恐れたり、後悔を抱えたりする生徒はなるべく少ないほうがいいですよね。みんな楽しい学校生活が一番だと思うので、今度は自分がそういうきっかけになれたらいいなと思って。私自身が教育というものを勉強する、という意味を含めて、教員免許状の取得に踏み切りました。

 

 

(杉崎)私は、アナウンサーになることが小学生の頃からの夢で、実は教員は第一志望ではありません。

 

―― なるほど。ではどのような思いから教職課程の授業を受けていらっしゃるのでしょうか。

 

(杉崎)この大学に進学することは早くに決めていて、アナウンサーを目指す気持ちも変わっていなかったのですが、教職免許を取れるということを知って、受けてみようと考えました。

というのも、高校のときに2年間担任だった先生が、生徒との距離がすごく近い先生だったんです。よく「杉崎さん大丈夫?」と声をかけてくれたり、歴史の先生なのに世界史の質問にも答えてくれたり。生徒に寄り添ってくれる先生だったんですよ。

アナウンサーと教員はあまり近い職業とは言えないけど、人前で話すことは似ているし、その先生に良い指導をしてもらって今があるから、教職課程で学ぶのも良い経験になるんじゃないかと思って勉強しているところです。

 

(臼杵)急用で遅れちゃった。失礼しました。

 

―― 4年生の臼杵さんですね。教育実習の準備などもあってお忙しい中、ありがとうございます。教育実習はどうですか。楽しみですか、怖いですか。

 

(臼杵)私の場合は母校に戻るケースなので、学校の仕組みや先生の顔ぶれは高校在学中と大きく変わりません。知ってる先生方の中で実習できるので、その部分は心強いというか、なんとなく想像がつきます。

でも、私が担当する社会科は、今年の4月から教科書ががらっと変わっています。その内容に私自身が付いていけるかというのが、教科指導の面でちょっと不安ですね。教科の面の変化には、アンテナを張らなきゃなと思っています。

 

減少する教員志望生、それでも教員を目指す理由は?

 

―― 「先生って大変そう」というお話が先ほどありましたが、先日も教員志望の学生が減っていることがメディアで報じられていました。

教員志望の学生が減っている理由は「長時間労働など過酷な労働環境」と94%が回答、教員志望者減少に関する教員志望の学生向けアンケート結果まとめ – 日本若者協議会

 

―― 少子化も進んでおり、採用枠の縮小や将来性という意味でも、教員を諦めて会社員になろうかと考える学生も増えていると聞きます。教員という職業に対するネガティブな印象を、皆さんはどう捉えているのでしょうか。

 

(鈴木)私は、広島のほうで教員をやっている先輩に定期的にお話を聞いています。「授業以外にも事務作業が多い」とか、生徒だった頃とは違う視点のお話を聞いていると、確かに大変だなと感じます。でも、企業に就職するのも教員に就職するのも、それぞれに大変なことはあると思うんです。

教員は精神的に大変なことがあるというのは授業でも学んだので、そこをどう工夫して乗り越えていくか、今後実践しながら考えていけたらなと思ってます。

 

―― 授業でもそういう話が出るんですね。

 

(森)ありました。部活の顧問をしている先生を例に一日の時間割をグラフにしたものを見て、どんな工夫をしたら効率化できるか、という話し合いを授業の中でやっています。

 

(風元)私も、中学生のときの職業インタビューで、当時の担任の先生に1日のスケジュールを聞いたことがあります。私がインタビューした先生は家族がいて、かなり遅くまで事務作業をするので、家事はその後、寝るのも深夜になってしまうという話をされていました。でも大変だと分かった上で教職課程を取っているので、それは十分に覚悟しています。

 

 

(木村)今、教育実習に向けて指導案を作成しているんですが、やっぱり指導案ひとつ作るにも大変ですし、ワークシート作成にも時間がかかります。全部やったとしても、計画どおりにいくとは限らなくて……それが教員の面白さでもあると思うんですけど、大変さはひしひしと感じています。

それでも私が教員を目指したいと思っているのは、アルバイトで知り合った先輩で、今は中学校の先生をやっている方が、大変そうにしながらも「生徒と過ごす時間や、授業で生徒と交わすコミュニケーションは、他の仕事にはない魅力」と話していたのが印象的だったからです。

部活動が大変という話も聞きますが、神奈川県では部活動を専門の方に任せて、教員は授業準備や学級運営に時間を回そうという取り組みもあるそうです。まだ一般的ではないですが、将来的にはもう少し普及してくると思うので、今よりはブラックではなくなるのかな、と期待しているところです。

 

―― 兼任ではなくコーチのような人が入るということですね。運動部だと、朝早くから夜遅くまで練習をして、土日も出て、というケースが珍しくないですよね。

 

(木村)そうなんです。それに、自分が未経験でも部活の顧問をやらないといけない場合もあるので、そういう意味でも大変だとは聞くんですけど、改善の兆しがみられるので、その点は気にせずやってみようかなと思っています。

 

生徒との距離感、ワークライフバランス……現役教員に聞きたいリアル

 

―― 今、現役の教員の方々に聞いてみたいことや、教員を志すにあたって気になっていること、心配なことはありますか?

 

(F)私は、人との距離感を測るのが苦手なので、生徒との距離感をどうしているのかが気になります。私自身、生徒としてコミュニケーションを取りやすい先生もいましたし、苦手な先生もいました。お互い人間なので、しょうがないと思うんですけど。

生徒と先生って大人と子どもで、家族じゃないし、他人じゃないし、すごく不思議な関係だと思います。だからこそ、距離感の測り方はすごく興味もありますし、不安でもあります。

 

(森)それで言うと、私の出身中高は先生との距離感がものすごく近かった。職員室に行って大きい声で先生を呼ぶのも珍しくなかったし、度が過ぎて授業を真面目に聞かない人もいました。他の学校では先生と生徒がどういう距離感で接しているのか分からないので、距離感の問題は私もすごく気になります。

 

―― お2人は特に生徒との距離感、関係性に深く関心があるのですね。教育実習が目前に控えている4年生の皆さんは、なおさら切実に聞きたいことがあるのではないでしょうか。

 

(臼杵)休日は何をされているのか、ちょっとプライベート的なところが気になります。結婚されてご家庭のある先生もいらっしゃるでしょうし、例えば仕事は好きだけど、仕事とは別に目標がある方もいらっしゃるかもしれないし、教育実習では知れない側面も聞いてみたいですね。

 

 

(木村)臼杵さんの話に関連するんですけど、ワークライフバランスっていうんですか、家庭と仕事のバランスをどう保っているのか、お子さんがいる方はどういう休日の使い方をされているのか、私も聞いてみたいです。

 

(鈴木)私は、教員の一日の流れを聞いてみたいなと思いました。私たちはまだ生徒の目の前にいるときの仕事しか知らないので、その陰の「大変」と言われている部分が具体的にどのようなものなのか、知っておきたいなと思います。

 

(木村)あと、特性や障害のある生徒がクラスに2、3人はいると思うので、多様性というか、どういうふうにクラスを運営しているのかというのはちょっと聞いてみたいですね。

 

(後編に続きます)

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