「みんなはどうしてる?」生徒の主体性を育てる授業のアイデアを共有 〜英語授業研究学会 関東支部 第28回秋季研究大会 レポート〜

最終更新日:2023年2月23日

去る11月23日(水祝)、英語授業研究学会 関東支部の第28回秋季研究大会が開催されました。過去2年はコロナ禍の影響からオンラインに切り替えての開催が続きましたが、今回は昨今の状況を鑑みて久々のリアル開催を決行。非会員でも参加可能と聞き、国際教育ナビ編集部も参加させていただきました。

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現役教員が授業を磨き合う「英語授業研究学会」、11月23日に関東支部秋季研究大会を対面形式で開催! | 国際教育ナビ

文教大学・東京あだちキャンパスのAITADE HALLが今回の会場。2021年4月に開設されたばかりの新しい講堂です。あいにくの冷たい雨に見舞われましたが、会場には110名近くの参加者が集いました。

開演前にはロビーで出版社などがブースを構え、学参書や教材のプロモーションで賑やかな様子。ホールの中では声をかけ挨拶を交わす先生方も多く、この場が先生方にとってコミュニティとしても機能していることがうかがえます。

関東支部長の阿野幸一先生(文教大学)による開会挨拶の後、目玉企画のビデオによる授業研究が始まりました。実際に行われた授業の模様をビデオで見て、オーディエンスの質問に授業を担当した教員が答えたり、授業分析者からフィードバックを受けたりするものです。

自分以外の教員が行う授業を見る機会は決して多くありません。生徒とどのようなやり取りをするのか、どのようなタスクを出すのか、自身の抱える課題と照らし合わせながら、持ち帰れるヒントやアイデアを模索する時間です。

今回は菅原和人先生(群馬県伊勢崎市立第三中学校)による中学2年生への授業と、先日国際教育ナビにもご登場いただいた今田健蔵先生による高校3年生へのコミュニケーション英語Ⅲの授業が発表されました。

▲ 今田健蔵先生(東京大学教育学部附属中等教育学校)

今田先生の授業研究発表が行われるにあたり、参加者には指導計画や生徒の答案をまとめたものが資料として共有されます。これらを参照しながら参加者はビデオを見ていきます。

今田先生が授業に設定したテーマは「はじめてのナラティブライティング」。説明文のようなエッセイライティングは何度か機会があるかもしれませんが、小説や物語のような創作文を書く機会はめったにありません。教科書にある物語の続きを書くという課題を設定し、段階を踏んで生徒に挑戦してもらうというのが授業の内容です。

30分ほどにまとめられたビデオが流れた後、参加者からは質問が続々と挙がりました。例えば、「言いたいことがあるのにうまく英語で表現できない生徒に対して、うまく発言を促す方法は?」という質問に対し、今田先生はビデオの内容にも触れて回答。

「まずは待って、思いつく限りの言葉を引き出してみる。それを私のほうで組み立てて手本を見せるようにしている。あとは授業の中で話す練習を取り入れ、生徒の中にチャンク(決まり文句)のストックを増やしている」と実践していることを紹介しました。

最後に分析者の久保野雅史先生(神奈川大学)から、この授業から得られた気づきが発表されました。「題材となった物語はルーマニア革命をテーマにしている。私はその背景をより深堀りしたくなる性分だが、今回の授業では背景を特定することで想像が限定されることを懸念し、今田先生は生徒にあえて説明していなかった」とコメントし、生徒への情報提供によるメリット・デメリットを指摘しました。

またオールイングリッシュが実践されていることに触れ、「グループワークでは日本語で思考を深めている一方、『先生と話す際には英語で話そう』という約束事が徹底されている点には学ぶところがある。また、不完全な発話に対する今田先生の対応も良かった。適切で平易な表現を使って生徒のフォローをするには英語力、瞬発力が求められる。英語力に自信があれば、生徒のモデルになる授業ができる」と分析しました。

▲ 久保野雅史先生(神奈川大学)

授業研究に続いて、今回の秋季研究大会のテーマとなっている「主体性を育む授業」について考えるパネルディスカッションが行われました。参加者には入場時にアンケートが配布され、身近な実践例が募集されていました。

パネルディスカッションは、このアンケートとその場での挙手による発言や質問を取り入れて行われる、全員参加型のセッション。コメンテーターや司会の面々のざっくばらんで和やかな雰囲気にも後押しされ、参加者からは「音読のリピートをやめてみた」「なぜ英語を学ぶのか、アンケートを取ってみた」などさまざまなアイデアが共有されました。

▲ パネルディスカッションの模様。左から司会の五十嵐浩子先生、コメンテーターの中島真紀子先生、阿野幸一先生、豊嶋正貴先生

最後に、藤平敦先生(日本大学)を迎え「子どもを主語にした学習環境づくり」と題した講演がありました。現役教員時代は高等学校英語科の教員として教鞭を取られ、現在は全国各地の学校を巡り、いじめや不登校について取り組まれてきた先生です。縁あって8月に登壇された全国大会のシンポジウムでも濃いお話があったそうで、会員の方々からの熱いリクエストにより今回の登壇が実現したとのこと。

講演では、「子どもを主語に」するとはどういうことなのか、さまざまな事例を基に語られました。生徒に学習の振り返りを促すアイデアや、授業の中に生徒一人ひとりの居場所を作るアイデアは、多くの参加者にとって授業運営のヒントになったのではないでしょうか。また、中央教育審議会(文部科学省)の方針に触れた話題は、国の教育施策に資する調査研究に携わる藤平先生ならではの貴重な情報でした。

13時から17時30分まで4時間半にわたり開催された秋季研究大会でしたが、人に教え伝えるプロフェッショナルのお話は非常にわかりやすく、体感的にはあっという間でした。何が正解かを一方的に教わる場ではなく、「私はこう取り組んでいる」「私はこんなことに悩んでいる」というリアルな声を発信・受信する場という印象で、こうした等身大の教員が集い語れる場にアクセスできることは先生方にとって大切なことではないかと感じました。

今回の参加者は半数以上が全てのプログラムに参加していたようでしたが、各プログラムの間には休憩があり、希望するプログラムのみ参加することも可能です。春季・秋季研究大会だけでなく月々の例会も、非会員でも参加可能です(有料、会員は無料)。機会があれば一度学会の様子を覗いてみてはいかがでしょうか?

詳しくは英語授業研究学会の公式サイトをご覧ください。

英語授業研究学会
https://eijuken.smoosy.atlas.jp/ja

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