脱一方通行!ペアワーク中心設計による発見型コミュ英授業実践例【後編】
最終更新日:2023年9月13日
【サマリー】脱一方通行!ペアワーク中心設計による発見型コミュ英授業実践例
新学期の緊張やテストのプレッシャーから解放され、中だるみしがちなこの時期。一方通行になりがちなコミュニケーション英語の授業は特にマンネリ化しやすく、活気ある授業にしたくとも、今までの文法・訳読中心の授業から抜け出せないという悩みをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。
そんな先生方のために、今回は、コミュ英におけるぺアワークの達人、名古屋経済大学市邨高等学校の岡本篤先生をお招きいたしました。
岡本先生は、コミュ英の授業で文法解説・訳読を一切行わず、代わりに音読やペアワークを取り入れて、生徒参加型の授業を行っておられます。生徒の「できた!」「話せた!」を引き出す工夫を学び、生徒の発話であふれるコミュ英授業を実現させましょう!
※【前編】より続く
文法解説はしない
文法本来の目的は、不定詞とか関係代名詞という言葉を覚えることではなく、 あくまで英語が読めて聞ける(インプット)ようになり、書けて話せる(アウトプット)ようになることです。
文法は、日本人が第二言語として英語を学ぶ上での補助的な位置づけだと思うので、文法を教えるなら、生徒が「必要だ」と思う仕掛けが必要です。
それを使ったアウトプットの機会とインプットの必要性を作りだすことで「伝えたいから、分かりたいから、文法が必要だ」と生徒が思わない限り、いくら上手に説明しても使えるところまで持っていけません。
文法を扱うときは、自分に当てはめて言える表現を探します。例えば、中3レベルでは、 この括弧に自分のことを当てはめてペアで伝え合います。
このとき教員が陥りがちなのは、“the best of” “have been to”など、文法の決まり表現の方を括弧抜きしてしまうことです。でも実際に大事なのは「TDLに何回行ったか」など、人によって答えが違う部分です。人それぞれ違うから尋ね合い、伝え合う、それがペアワークをやる意味だと思います。
その中で、生徒から「こう言いたいとき、何て言えばいいんですか」と聞かれたら、文法チャンスです! 細かく教えたくなりますが、テキストや文法書に載っている場所だけ教えます。
文法解説をクラス全体でしないのは、結局、説明を聞くのは受け身な学びで理解止まりですが、実際に使って伝え合うのは自発的な学びだし、自己表現できるからです。
帯活動は2種類
教科書やプリントの本文に入る前、授業の冒頭にやっている帯活動は2つです。
①What’s New
アウトプットの機会として、毎回自由な話題で5行程度の英作文を宿題にしています。翻訳ソフトやChat GPTを使ってもOKです。授業の冒頭にペア同士で、5分~10分くらいの時間を取って発表させます。自分のことを詳しく話すための引き出しとして持っておき、それを使う機会としています。
②単語帳の音読
ウォーミングアップに5分ほど行います。飽きないようにいろいろなバリエーションを付けながら行っています。
単語帳の音読練習は、朝一の目覚まし、声出し練習、テンポ作り、 ペア活動の導入になります。単語テストもあるので、とりあえず音だけでも練習しておくと、何回もやるうち目に焼きついてくるので、単純作業だけど良いインプットだと思います。
褒めた方向に伸びる
以前の自分は「遅い」「うるさい」「寝るな」など、いわゆるネガティブワードを使って、ダメな生徒に対してアプローチしていました。でもやっていないことを責めるのではなく、やってあることをすごく褒めれば、「あ、あの人もできてる。じゃあ自分もやらなきゃ」と、周りにも良いプレッシャーになります。ネガティブを責めるより、できてることを褒める方が明らかに効果的だと分かったので、これは続けていこうと思います。
■振り返り
本校では、英語に限らず毎時間、授業の振り返りをさせています。全員iPadのノートアプリで書かせており、これが実際の画面です。
読んだ証拠に線を引いたりしますが、 コメントは一切書きません。全部読むのは大変ですし、コメント書くのは面倒なので、3回に1回ぐらい良い振り返りをピックアップして、クラス全員の前で褒めています。
「じゃあ僕もそういう視点で書こう」という意識が芽生えるので、内容もどんどん深まって、褒めた方向に伸びていくと感じます。
まとめ
楽しいとか好きというのは、結局モチベーションです。よくあるのが、テストの点が悪くて英語が嫌になること。例えば、4月は授業中すごく生き生きと頑張っていた子が、テスト結果は悲惨な点数で、そのテストを返した途端表情が曇り、テスト明けの授業から「どうせ自分はできないんだ」と別人のように暗くなる…。だとしたら、テストなんてやらない方がいいと思います。
それで、テストを返すとき意識しているのは、「悪かったのはたまたま、良かったのは実力だから。点数が悪かった人は忘れろ。それで英語が嫌いになるんやったらやらんでいいわ」とか言って、モチベーションを保てるような声かけをしています。
冒頭にもお話しましたが、結果を求めなくていいと思います。生徒の進学実績や英検に何人受かったかも、結果論です。ベストを尽くした結果の数だと思うので、何人をこの大学に受からせなあかん! というところからスタートしちゃうと、お互い苦しいです。
それに、高校だけの英語じゃありません。小学校・中学校でも英語をやっています。そこでトラウマを植え付けられたのか、英語嫌いで入って来る子もいます。その嫌いが、少なくとも嫌じゃないぐらいにさせられたらいいなと思います。この先も人生は続いていくので、英語をもう1回やってみようかなと思ったときに、「なんかこの授業楽しかったし」と思えたら頑張れて上手くなる、このループが再スタートするのかなと思います。
最後に、こんな振り返りを書いていた子がいます。
これループしてますよね。宿題はやらなきゃいけないことで、確かに苦痛ですが、その最初の一歩を踏み出せば、復習になりできるようになる→できるから授業が分かる→分かるから楽しい→楽しいからもっとやりたい→もう1回やる。これがどんどん回っていくので、この動きを止めないように、日頃の授業をやっていきたいと思っています。
構成:松山まりな/記事作成:渡邉由佳理