脱一方通行!ペアワーク中心設計による発見型コミュ英授業実践例【前編】

最終更新日:2023年9月13日

【サマリー】脱一方通行!ペアワーク中心設計による発見型コミュ英授業実践例

新学期の緊張やテストのプレッシャーから解放され、中だるみしがちなこの時期。一方通行になりがちなコミュニケーション英語の授業は特にマンネリ化しやすく、活気ある授業にしたくとも、今までの文法・訳読中心の授業から抜け出せないという悩みをお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。
そんな先生方のために、今回は、コミュ英におけるぺアワークの達人、名古屋経済大学市邨高等学校の岡本篤先生をお招きいたしました。
岡本先生は、コミュ英の授業で文法解説・訳読を一切行わず、代わりに音読やペアワークを取り入れて、生徒参加型の授業を行っておられます。生徒の「できた!」「話せた!」を引き出す工夫を学び、生徒の発話であふれるコミュ英授業を実現させましょう!

授業でペアワークを活用する理由

本校(創立117年目)は元女子商業高校で、共学になるとともに普通科に移行し、今年21年目です。学力帯としては中間層が多く、英語は得意な生徒もいれば、ずっと苦手意識を持っている生徒も入学してきています。

私が授業で大切にしているのは「英語が楽しい」ということです。点数がどれだけ良くても嫌いなことは続きません。逆に好きなこと・楽しいことは続けられるし、頑張れます。
結果を急ぐ必要はありません。教員はどうしても英検や大学受験の結果を求めてしまいますが、卒業した先の人生の方が、断然、長いのです。英語の授業で毎日寝ていた子でも、その後、海外に行って今は英語がペラペラ、という子もいます。だからその場で結果を出す必要はないかなと思います。

私が育てたい生徒像は、楽しく英語の授業に参加してくれる子、もっと学んでできるようになりたいという向上心・前のめりになって聞く姿勢がある子、そして、間違いや失敗を恐れない子です。さらに、自分の足で自立自走し、学校から離れた後も自分で上達・習熟してくれる生徒を育てたいと思っています。

楽しい授業であるためには、自分で気付き、自分で分かり、自分を出すことが大事だと思います。
自分を出すには、聞いてくれる相手がいるわけです。自分の話を分かってもらえる、認めてもらえるというのは、しゃべる側にとってすごく嬉しいことです。だから今度は相手が話すことをこちらが分かってあげる、認めてあげる。そうやってお互い助け合い、学び合うための1つの方法がペアワークだと思います。

ペアワークにはきちんと目的があって、ピン(1人)・ペア(2人組)・グループ(3人以上)を使い分けることは非常に重要です。
ペアワークそのものが目的ではなく、目的の手段としてのペアワークなので、ペアワークを生かすためには、ペアでやる意味をちゃんと生徒に理解させておかないといけません。

自作プリントで本文理解

私が担当するコースで使っている「LANDMARK Fit」を例にお話しします。
教科書は、左ページに本文、右ページにちょっとしたアクティビティが載っています。

そのままでも十分ですが、私がやりたい授業に合わせてテンポ良く進むように、再構築しました。

■授業の段取り

①概要把握(だれの、どんな話?)
②音読できるか(ちゃんと声に出して読めるか)
③内容理解(おおざっぱ⇒詳細へ)
④音読しながら内容理解ができるか

この4つのステップを、4技能をバランス良く使いながら行うためにはどうしたらいいかを考えて構成したのが下記のプリントです。

■自作プリントの活用

「本文」は、単なる教科書のコピペではなく、所々括弧抜きしてあります。最初にこれを行う理由は、本文を目で追えるようにするため音声と文字に集中させるため、単語の発音を意識させるためです

次に「未修の単語表」です。通常は、英単語が書いてあって、日本語の意味を埋めていくパターンが多いですが、それではただの意味調べになってしまいます。むしろ日本語の意味を見て推測し、本文から単語を抜き出した方が英語の勉強になるので、日本語ではなく英単語を書く表にしてあります。

「本文のT/F」は、なるべく単純明快な正誤問題です。この選択肢も、よく見れば内容理解のヒントになっています。T/Fをする目的は、音読しながら概要を把握させるためです。

裏面は、左上に「一文抜き出し問題」が3問ほどあります。この問題は、新出の文法表現や特殊な語順になっている部分を意識的に抜いています。目的は、この日本語がなんでこの英文になるんだろうということを意識してもらうためです。そこですぐ理解する必要はないので、まず考えてくれればいいなと思います。

次に「Summary」で、本文のあらすじを日本語で簡潔に書かせます。そのときのポイントはいきなり書かせないこと。いきなり書かせてしまうと、できない子は手が止まり、几帳面な子は全訳書きたがり、眠い子は寝る…。ペースがバラバラになってしまいます。まずはどんな話だったかペアと話し合って、十分アイディアが出てきた状態で書いて整理すると、劇的に違います。

左下の「英語Summary」は、英文のサマリーに下の選択肢から単語を埋めていきます。

「リテリングの絵とキーワード」では、教科書のデータをそのまま活用しています。リテリングは今年から始めたので、繰り返しやると慣れていくよ、ということを強調しています。2列で隣同士のペアを、1つずつ前後にずらして入れ替え、それを3~4周します。1ペアは大体2分くらいで、生徒の様子を見ながら時間を切っています。「本文や英語要約からパクっても日本語交じりでもいいから、何回もやってるうちに、日本語がちょっとずつ英語になっていけばいいよね」と言っています。

■授業展開の一例

このプリント構成に合わせて授業を展開していきます。1コマで全部扱うのは難しいので、生徒の理解度に応じて、2コマくらいに分けて扱います。
 
1~14のうち、赤の部分がペアで音読する時間、青の部分がペア活動なので、結果的にほとんどの活動がペアワークで進んでいく形です。

※【後編】へつづく

構成:松山まりな/記事作成:渡邉由佳理

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