English Grammar in Use 中級
最終更新日:2022年2月24日
- おすすめしたプロフェッショナル
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横内敦 / 神奈川大附属中・高等学校
English Grammar in Use
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q.良かったところ
【かゆいところに手が届く】
本教材には、日本の教材ではカットされがちな「英語の細かいニュアンス」部分が多く載っている。この細かいニュアンスの違いは日本の大学受験上は不必要かもしれないが、英語を本質的に理解してもらうために、こだわって教えたい部分だ。将来的に英語を使う場合でも後々大切になってくると感じる。
(例)go to ~とgo to the ~の違い
I go to school 私が「学生」として学校へ行く場合に使う
I go to the school 私が「保護者など学生以外の立場で」学校へ行く場合に使う
I go to hospital 私が「患者」として病院へ行く場合に使う
I go to the hospital 私が「家族や友人などの立場で」お見舞い等で病院へ行く場合に使う
【使われている語彙】
本教材の中で使われている語彙は、英語ネイティブにとって極めて使用頻度の高いナチュラルなものばかりである。全英語で書かれた教材のため、生徒はわからない単語があれば調べるが、それにより自然と高い語彙力が身に付いていく。教材内の例文や問題も含め「生きた単語」ばかりなのでCommunicativeな授業の活用に役立った。
Q.困ったところや改善してほしいところ
デジタルの「eBook」付きなので、テキスト内容をオンラインでダウンロードすることができ、生徒は自宅での学習に利用しやすい。一方で、ユニットごとにすぐに配れる確認テストのようなものはないため、必要があれば教員は補足教材を自作するしかない。ユニットや単元ごとの確認テストなどが簡単にダウンロードできればありがたい。
Q.導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
前任校、グローバルクラスの高1生に本教材を使用していた。「TOEFLやIELTSにも対応できるような国際的な英語力を身に付ける」ことがグローバルクラス創設時からの目標であったため、海外の出版社からでている教材を主に検討していた。オックスフォード大学出版局のStretchを採用して、4技能バランス型の授業を行っていた時期もあったが、国内の大学入試に向けて文法への心配もあり、本教材を副教材として採用した。
問題/課題:
グローバルクラス創設という学校にとって初めての試みの中、教材選びは教員間でも多く議論が繰り広げられた。4技能を高める授業をすることは必須だが、アウトプットを重視するあまり、「文法」項目の指導が弱くなってしまわないだろうかと不安に思う日本人教員がいた。「不安感がある中で日々生徒に向き合うのは良くない」と話し合い、英文法に重きが置かれ、なおかつ4技能育成へ発展させやすい本教材を選ぶことにした。
状況(クラスの人数やレベル):
1クラス35名~40名、グローバルクラスの高1~高2生向けに使用。本コースには英語が好きな生徒が多く集まっていた。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
多くの文法教材は、日本の大学入試を前提に作られており「日本の中ではこれだけ知っていればいいだろう」という「壁」のようなものを感じていた。この「壁」が英語を学ぶ生徒の邪魔をしているように思え、とても嫌だった。一方、本教材は知りたいことがかなり細かく載っており、他の教材との違いが明らかであった。例えば、本教材は1冊145もの細かいユニットから成り立つが、「冠詞」を扱うユニットは71~78の8つ分もある。生徒たちは「なぜaを使うのか?」「theを使うのか?」について大変細かいニュアンスの違いを学ぶ。一般的には「冠詞」は軽く扱われがちで指導に時間をかけないことが多いが、深く学ぶことで後々の読解力に大きな差が出てくると感じている。
Q.実際の使い方
検定教科書と併用しながら、本教材を副教材として「コミュニケーション英語」、「英語表現」の授業で分担して使用。1年間で1冊の内容をやりきることを目標に、ALTと共に2名で授業を担当した。実際には高1の1年間で全ての内容を修了することは難しく、引き続き2年次にも使用した。
【教材の構成】
本教材には145のユニットがあり、1ユニットは見開き2ページで完結される。左ページには、実際のシチュエーションに合わせた文法説明や例文紹介が多くされており、自然な流れで文法のルールや使い方を学ぶことができる。また、各例文の横にはチェックボックスが用意されているので、読んだかどうかチェックするのにも役立つ。右ページには、実際の会話にそのまま使える例文の練習問題が、カラーイラストとともに多く載っている。選択問題も多く難易度は高くないが、単語を文法に合わせて正しく直して書き換える問題などもあり、理解を十分に深めることができる。
(例)スタートの文法項目である「Present and past」の構成
1 Present continuous (I am doing)
2 Present simple (I do)
3 Present continuous and present simple 1 (I am doing and I do)
4 Present continuous and present simple 2 (I am doing and I do)
5 Past simple (I did)
6 Past continuous (I was doing)
このような流れで「現在形」「過去形」を学んでいく。
【活用方法】
生徒の予習を前提とした上で、基本的に全英語で授業を行った。授業内では、文法項目を使った実際のコミュニケーション活動を極力入れるよう努めた。例えば、現在完了のユニットの回では「現在完了形を使ってインタビューしてみよう!」とペアワークを実施。また、冠詞の細かいニュアンスを学んだ回では、実際の英文記事を用いた自作プリントを用意し、冠詞の使われ方を確認。学んだ文法の知識を「実際にどう使えば良いのか学んでもらう」ことを心がけた。50分の限られた授業時間の中で、テキストに書いてあることを教員が長々と説明することに意味がないと思っていた。生徒はあらかじめ予習し、その上でわからなかった箇所の質問をしてくるので、教員の説明時間を減らすことができた。よって説明は授業内の10分~15分程度に抑えられ、残り時間はペアワークなどのアクティビティーに使うことができた。ちなみに、問題の答えはテキストの一番後ろに掲載されているため生徒自身で確認できる。高1・2生には検定教科書や本教材を使用してCommunicativeな授業をし、高3生にはReadingや読解、和訳などの受験対策に力を入れた。
指導する上での工夫:
全英語の教材ということもあり、生徒がどのような反応を示すか教員間で不安もあった。ただ、本教材は生きた英語の例文や問題演習で構成され、さらに解答も掲載されていることから、文法学習プラスαの効果も期待できる。生徒自らが自分の学びに責任を持ち、その学びを教室の中だけではなく、外(授業外の時間)にも繋げていくことができるように「自律学習」へと移行することを可能にしてくれる。こちらから丁寧に説明をしてあげるのでは生徒は受け身の学習者となり、いつまでも学びに対して消極的になってしまう。まずは失敗してもいいから、本教材の内容を自分の力で予習や復習し、そして授業外での英語使用へと繋げていくように、指導をするように心がけた。将来的な英語学習を見据え、「自律学習」へと導くことができる教材であると実感している。
Q.使ってみた結果
初めは「難しい」と戸惑っていた生徒もいたが、次第に慣れていき自主的に勉強する姿勢が身に付いた。本教材は全英語の教材のため授業も基本は英語で行ったが、細かい文法説明は日本語で行うこともでき、問題なく理解できていた。また、本教材を使って日々学んでいることへのステータスや自信を生徒たちが感じてくれ、「もっと英語をやらなくちゃ!」という意識が芽生えていったようで、大変嬉しかった。本教材で深く英語を学んだ生徒たちは、その後、日本の大学受験でも十分な成果を残すことができていた。英検2級には多くの生徒が合格し、準1級を取得する生徒も出た。
Q.利用が向いているクラスや生徒
英検準2級相当の力がある生徒は十分に理解できると思う。グローバルコースなど英語に特に力を入れている学校におススメしたい。また、本教材は細かい英語のニュアンスが学べるため、「何となく」英語を理解したままになっている帰国生にも向いていると思う。
Q.あまり合わないと思うクラスや生徒
本教材は日本語で指導することも可能だが、細かく全てを日本語で説明しては「生徒が英語に接する時間」を減らしてしまうことになる。生徒自ら、調べたり確認することでReadingスキルも高まるため、基本的には英語での授業進行が良いと感じる。よって、教員にはそれなりに高い英語力と指導力が求められるかもしれない。また、大学受験対策の教材ではないので、効率的に入試対策をしたい人は不安を感じると思う。
- 横内敦
- 神奈川大附属中・高等学校
プロフィール
山梨県出身。高校時代に1年間のポートランド留学を経験し、その後明治学院大学へ進学。大学で出会った恩師に影響を受け、英語教員の道に進むことを決めた。大学卒業後、前任校の私立高校にて15年間勤務しグローバルクラスの立ち上げに携わった。2007~2011年にコロンビ…