パラグラフライティングの真髄
最終更新日:2022年7月6日
- おすすめしたプロフェッショナル
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大塚崇史 / 星稜中学校・高等学校
パラグラフライティングの真髄
マクミラン ランゲージハウス
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
各章で「パラグラフの構造、FactとOpinionの区別、トピック文、サポート文、コンクルード文」を学ぶことで、「英語の文章を書く技術」を体系的に確実に身につけられる点が秀逸です。また、本教材では「プロセスライティング」を重視しており、「ブレインストーミング→パラグラフメモ→パラグラフ作成→見直しと修正」を反復練習しますので、試験本番で実際にやるべきことを定着させることができます。さらには、6種類のブレインストーミングを紹介していますので、生徒それぞれが自分にとって最も取り組みやすいものを見つけることができるのも特徴です。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
本書『パラグラフライティングの真髄』の上梓にあたり、編訳者代表として原書の編集・翻訳に携わりました。原著の『Writing Paragraphs』(Dorothy E. Zemach and Carlos Islam, 2011, Macmillan)はインターナショナルスクール用の教材です。「Fact/Opinion課題」など日本では中学校まで習ってこなかった部分や、テーマが「高校生のアルバイト」や「ピアス」など日本文化になじまない部分もあったため、授業では必要に応じて補足説明を入れました。なお、本書『パラグラフライティングの真髄』はマクミラン日本支社撤退により増刷中止となったため、2022年1月現在、後継となるパラグラフライティング教材を新しく開発しています。この新刊は、日本の英語教育現場に基づいた書き下ろしですので、日本の英語の先生方がもどかしく感じる部分はほとんどないのではないかと思います。
Q. 導入の経緯や、採用の意図と狙い
【経緯】
例年、本校の英語表現の授業では「1年で文法を学習し、2年で文法を復習し、3年で英作文(和文英訳)に挑む」というカリキュラムでしたが、これでは自由英作文(パラグラフライティング)を学ぶのが共通テスト後になるなど、時間的余裕がありませんでした。近年では国公立大学を中心として自由英作文を出題する大学が増えていることに加え、どの英語資格検定試験もライティングセクションで自由英作文を出題しているという現状を踏まえ、2021年度は2年次に本書を導入し、自由英作文の本格的な学習をスタートさせました。【意図と狙い】
自由英作文に取り組ませることによって、英語で自分の意見を表現するのはもちろんのこと、高校卒業までのライティング技能のゴール地点を示し、それを達成するために必要な英語の基礎力(語彙・文法語法・例文の定着)の重要性に気づかせ、和文英訳の力を逆算的に上げていくことも狙いとしました。また、クラス全員分の自由英作文の答案を添削するには、膨大な時間が必要です。定期試験における採点作業についてはなんとかこなしていますが、日常的に自由英作文を添削するのは至難の業です。そこで、授業と並行して『スマートレクチャーコレクション』という啓林館のオンライン添削講座も導入し、大学入試に出た自由英作文の類題を用いて、全員分の答案を毎月定期的に添削してもらいました。【他の類似教材ではなくなぜこれか】
学校採用品の中で、検定教科書・準拠教材・副教材を含め、自由英作文に特化した教材はそれほど存在していないことに加え、市販の英語資格検定試験や大学入試問題の対策本とは異なり、「ブレインストーミングのやり方、FactとOpinionの区別、トピック文・サポート文・コンクルード文の書き方、パラグラフを書く順番、見直しと修正のやり方」などについて、手順を踏みながら段階的に学んでいける構成が秀逸です。Q. 実際の使い方
【テキスト構成】
本書は「パラグラフの構造」「FactとOpinionの区別」「トピック文の書き方」「サポート文の書き方」「コンクルード文の書き方」「サポート文を書く順番」「対比対照のパラグラフ」「因果関係のパラグラフ」など、12のレッスンで構成されています。1レッスンは6ページ程度で、パラグラフを読んだり書いたりする問題セクションと、パラグラフの書き方やブレインストーミングのやり方などについて学ぶ解説セクションでできています。【使い方】
高2Aコース(特進コース)・高2中高一貫理数コースで本書を使用しています。国公立大学志望者が多いクラスです。各クラス20~30名程度です。
問題セクションは、事前に予習を課した上で、授業で生徒を1人ずつあてて答案とその根拠を言ってもらい、その後正解を確認して解説を加えます。解説セクションは、必要に応じて補足説明をプラスします。各レッスンの最後にあるパラグラフライティング課題は、①ブレインストーミング、②パラフラフメモ、③パラグラフ作成に取り組ませた後、④グループワークまたはペアワークで原稿をブラッシュアップしてもらい、⑤それぞれのグループの代表者5名程度にプレゼンしてもらいます。プレゼンは、タブレット端末とスクリーンで発表者のパラグラフ答案を画面共有しながら、生徒には日本語で内容を口頭発表してもらい、⑥それと同時並行で教員(私)が「語彙・文法語法」の観点から英文を修正していきます。⑦生徒の口頭発表が終わったら、「パラグラフの構成・アイディアの質」の観点から講評を全体に伝えています。なお、1レッスンあたり3コマ程度のペースで進めています。【指導する上での工夫】
本書は、世界各国のインターナショナルスクールで使用されている『Writing Paragraphs』(Dorothy E. Zemach and Carlos Islam, 2011, Macmillan)の編訳版であるため、日本の中学校までの英語教育で欠けていることを補足しながら授業を進めています。たとえば、アメリカの国語教育ではふつう小学校低学年からFactとOpinionを区別する活動が行われていて、それは「Fact/Opinion課題」として有名ですが、日本の国語教育や英語教育でこのような課題はほとんど扱われてこなかったため、アメリカの小学校で使用されている絵本的な「Fact/Opinionクイズ」を導入した上で、本教材Unit6の「Fact/Opinion課題」に取り組ませています。Q. 使ってみた結果
日本の教材に不足している「英語の文章を書く技術」を身につけるのに最適です。また、語彙・文法語法・例文に対する生徒の意識が格段に高まりました。一方で、とにかくたくさん英文を書くことになるので、ミスを恐れず積極的に英文を書く生徒も次第に増えていきました。その結果、全国模試や英語資格検定試験で自由英作文の得点率が大きく向上しました。たとえば大手の全国模試では、昨年度は約50%だった平均得点率が、今年度は約60%まで上昇しました。
【生徒たちの反応】
2021年9月から12月までの4ヶ月で6レッスン進んだところで、生徒に本書についてのアンケートをとってみました。具体的に書けていた感想を下に載せておきますので、参考にしていただけたらと思います。・事実と意見の違いを区別しながら文の構成を考えられるようになった
・主観的か客観的かを考える習慣がついた
・文章を書くときの基本的な構成が自分の中で明確になった
・日本語とは違う英語特有の段落の成り立ちがわかった
・トピック文を書いた後どのようにして書いていくかが分かった
・主張と理由を書くことに慣れることができた
・パラグラフの作り方や注意すべき点が段階的に出てきて分かりやすかった
・ブレインストーミングのやり方を勉強して、アイディアをたくさん出せるようになって、パラグラフが書きやすくなった
・国語にも生かせたのでよかった
・正しい書き方だけでなく悪い例も書かれていて、どこが悪いかの説明があるのがよかった
・イラストや例文が豊富にあって分かりやすかったQ. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
個別学力検査に自由英作文を課す大学や英語資格検定試験を受験する生徒がいる学校におすすめします。特に、自由英作文に取り組ませる中で、トピック文の理由を書かせてもそれが理由になっていなかったり、そもそも理由と具体例の区別ができていなかったり、共通テストでも問われ始めた「事実と意見の区別」でつまずいている生徒がいるように感じられている先生方に、おすすめです。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
特にありません。
- 大塚崇史
- 星稜中学校・高等学校
プロフィール
1977年、石川県金沢市出身。慶應義塾大学大学院文学研究科英米文学専攻後期博士課程単位取得退学。他県での予備校講師勤務、中高一貫校立ち上げを経て、現在は石川県の学校法人稲置学園星稜高等学校教諭。2017年、マクミラン ランゲージハウスより『パラグラフライティン…