実は音読用教材としてピッタリ!
最終更新日:2022年9月12日
- おすすめしたプロフェッショナル
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尾上裕美 / 常翔学園中学校・高等学校
2022年度版 英検準1級 過去6回全問題集
旺文社
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
本書は英検の過去問題集のため、時間を計り本番に向けた「試験対策」ができるのはもちろんのこと、問題は4技能バランスよく入った良問で、普段の授業内での指導にも活かせる。特にリスニングのパッセージ問題は大問1題およそ150語前後なので「音読指導」に大変向いていると感じる。また、短いながらパラグラフが意識された英文なので1つのパッセージ内で内容が完結しており、わかりやすくて良い。繰り返し音読することでたとえ生徒が文章を丸暗記してしまっても、文章のパラグラフも自然と学ぶことができる。テーマも「Happiness and Success(幸せと成功)」や「The Canada Lynx(カナダオオヤマネコ)」など、想像しやすい身近なものから普段あまり触れないようなものまで幅広く、新しいことを知る良い機会になっている。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
特にない。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
4技能バランスよく学習し、実力を適切に試せる検定として「英検」に力を入れている。本書は英検の過去問題集なので、本書を継続的に取り組んでいくことで英検の合格率を高めていけると考え、7年ほど前から本書を授業内での指導に導入している。英検に合格することはもちろん目標の1つではあるが、英検対策をすることで英語力を高め、共通テストにも対応できる力をつけることも大きな狙いである。
問題/課題:
英語力を高めるためには「音読」が非常に効果的だと感じているが、入試対策などで忙しい高3生にとって、検定教科書を使っての音読はボリューム面でも負担が大きかった。教科書の長文を短く区切ってしまうと内容がつながらなくなってしまうことも多い。何か適切な音読教材はないかと考えていた。
状況(クラスの人数やレベル):
現在、高3は14クラスあり、コースにより様々であるが1クラス25~45名程度。学園内の大学を含め、ほぼ全ての生徒が短期または4年制大学への進学を目指している。海外大学への進学者も毎年出ている。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
リスニングのパッセージ問題は日々の音読指導にたいへん活用しやすいと感じており、高3生には準2級~準1級の問題を使っている。級が上がるにつれてパッセージの量も難易度も上がるので、生徒たちの英語力や使用時期によって使い分けることもできる。リスニングは生徒たちが最も苦手とする分野の1つであるが、「リスニング力を高めれば読解力も必ずつく」という信念を持って指導している。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
本書には英検の過去問が問題用紙、解答用紙ともに6年分載っている。掲載6年分の全ての音声(リスニング・面接)をアプリやダウンロードで聞くこともでき、試験の傾向や攻略ポイントについても書かれている。もちろん解答や訳、詳しい解説付きなので生徒が自学自習するための教材としても向いているだろう。数回分ではあるが、英検の公式ページにも過去問や音声とともにダウンロードができるようになっているのでそちらもおススメしたい。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
週5コマある「コミュニケーション英語」の授業内で、高3向けに本書を使用。1コマ50分のうち冒頭の10分を使って本書の「リスニング・パッセージ問題」を音読する。残りの時間は別教材を使用している。英検は、準2級・準1級のリスニング問題はPart1~3の3部、2級はPart1~2の2部に分かれている。
・準2級:Part1と2が「会話文」、Part3が「物語文や説明文」
・2級:Part1が「会話文」、Part2が「物語文や説明文」
・準1級:Part1が「会話文」、Part2が「説明文など」、Part3が「アナウンス文など」
パッセージ問題に該当するのは準2級ではPart3、2級・準1級ではPart2である。
準1級のPart2には150語前後の少しまとまった英文がA~Fの6題出され、それぞれおよそ1分ほどで読み上げられた後に、文章に関する問題に2問答える形式。授業内ではこのA~Fの文章を毎朝音読している。訳は用意せず、解説もほとんどしない。たまに重要単語をワンポイントで教える程度。生徒は体に文章を浸みこませていくように何度も何度も音読を繰り返すため、6題を読み込むのにおよそ1カ月程度はかけている。授業ではまずは全体でコーラスリーディングをした後、生徒それぞれのペースで各自音読やシャドーイングをしている。
指導する上での工夫:
10分間という限られた時間ではあるが、毎日のように繰り返し音読をしているとどうしても生徒が飽きてしまう。英語が得意な生徒は特にそうなりやすい。そのため、公式ページからダウンロードできる音声に関しては一人ずつダウンロードをさせ、得意な生徒には見本音声の1.5倍速でシャドーイングを指導したり工夫している。逆に苦手な生徒には0.5倍速でじっくり聞いて改めて音読をさせるなど、生徒のレベルによって適切な指導を心がけている。一番大切なことは、生徒が「言葉に意味を乗せて発音するようになる」ことだ。音読が作業になり、ただのお経になってしまっては意味がない。音読の効果、意味、やり方をしっかりと伝えるようにしたい。
Q. 使ってみた結果
本書を使い英検指導に力を入れた結果、2019年度に本校で初の1級合格者が出た。昨年度も準1級合格者を担当クラスから2名出すことができ、一定の効果を実感している。生徒たちからも「音読しながら訳がわかるようになってきた」とおおむね好評である。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
英検受検を目標にしていたり、バランス良く4技能の英語力を高めたい生徒。英検は級が分かれているので自分のレベルに合ったものがあると思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
特にない。英検受検を考えていなくても、英検の内容は大学入試にも直結している。決して無駄にならないので、ぜひ前向きに取り組んでもらえたらと思う。
- 尾上裕美
- 常翔学園中学校・高等学校
プロフィール
三重県出身。大学進学を機に関西へ。2013年4月より本校で勤務し、今年で9年目になる。 中学時代、英語がとても苦手で英検5級にも不合格。そんな自分が高校で1から英文法を学び直し、高2の秋には英検2級に合格!大きな成功体験となり、英語教員を志した。「ちょっとずつ…