脱講義型授業!アウトプット重視の中堅校向け。アクティビティを通じて使用法を直観的に学べる教科書
最終更新日:2022年11月11日
- おすすめしたプロフェッショナル
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岡本篤 / 名古屋経済大学 市邨中学校・高等学校
LANDMARK 英語コミュニケーションⅠ・Ⅱ / Pocket Speaking
啓林館
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
教員向け指導用データのなかに「関連入試問題」として、レッスンに関連する長文がある(例えば慶応義塾大学の入試問題など)。テストに利用し、初見での長文読解練習に活用できている。
文法解説が巻末にまとめて掲載されている点は、好みが分かれるかもしれないが自分は賛成派。従来の教科書は、本文の隣に文法解説が載っているパターンが多いが、本教材は、文法解説が知りたい生徒は必要に応じて自分で巻末を見るという形になっている。
従来型では、こんな文法があって、それを使ったこんな文章がある、では読んでみよう、という順番。そうではなくて、文法など知らない状態で読むところからスタートして、こんな内容だったね、ところでこういうことが伝えたい時はこんな表現を使うんだよ、のような順番や感覚の方がどちらかというと言語習得の上でナチュラルだし、入りやすいと思う。文法の勉強という印象が強いと拒否感を示すような生徒にも抵抗が少ないのでは。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
特になし。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
今年度2022年から、新カリキュラムに変わったタイミングで高校のコース編成も一新し、一から教科書を選定した。去年までは各コースのレベルに合わせてコースごとに教科書を変えていたが、今年度は統一して高1の全コースで本教材を導入した。
統一した理由は、コースごとに教科書のレベルが違うと、テスト結果や成績が教科書の難易度に左右されてしまい、推薦の際にも公平に判定できなくなるため。例えば、下位コースで易しい教科書を使って授業をして高い成績が取れて、上位コースで難しい教科書を使って授業をして成績が悪かった場合、評価と実力が逆転してしまいかねない。同じレベルの教科書で成績を公平に評価できるよう、評価基準も統一した。授業の進め方やテスト範囲もなるべく合わせている。
レベルによって理解度も違うため生徒によってはやや強引になっているかもしれないが、画像とテキストのバランスもほど良く、中間層に幅広く使いやすい教材ではある。
状況(クラスの人数やレベル):
1クラスの人数は、38-39名くらい。
レベルは、高1の全コースなので幅広いとはいえ、中間レベルの学力層が最も多い。しかし、なかには中学レベルが十分に身についていない生徒もいる。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
英語科の教員でサンプル教材を全部見て、多数決で決めた。有力だった他の候補としては、東京書籍の「Power On」や、LANDMARK Fitシリーズ(本教材のやや簡単版)。
Fitより本教材を選んだ理由は、できるだろうレベルに甘んじるよりもレベルを向上させたくて、目指したい英語レベルに合っていたため。
LANDMARKの2種類は、どちらも説明もすべて基本的に日本語でなく、英語で書かれている点が特徴的。文法説明が逐一ない点も含めて、本校が取り入れているGDM教授法(母語を介さず直接英語で教える方法)に合っている。
内容面では、アウトプット活動や自由度を好む場合は相性が良い。各レッスンの最後に内容読解、コミュニケーション(ペアワーク活動)、クリエイティブ(作品を作って発表するなど)のような授業内の活動で使えるものがセットで入っている。そのようなセットはどの教科書にも入っているが、難易度や自由度の塩梅が教科書によって違う。本教材は、穴埋めだけでなく自由に書かせるところがあるなど、難しいが自由度が高い。やりやすく準備されても穴埋めするだけだと、そこから理解を深めていく必要がある。その点でも生徒が自分の考えを表現しながら、理解を広げたり深めたりできる点が良い。
実際やってみると、授業内ではこの部分にあまり時間が取れないことも多いが、状況や内容によって課題に出したりテストに出したりしている。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
全体構成は、レッスンが10個、読み物が2つ
各レッスンごとのページ構成は、
導入(見開き1ページ)
パートごとの本文(1レッスンは4~5パート、1パートは1~2ページ)欄外に新出単語や豆知識
本文全文(全パート分、見開き1ページ)
問題(見開き1ページ)
本文に関連した様々な英文、アクティビティ(各1ページ)
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
本教材を使用する「英語コミュニケーション1」の授業は、週に2コマ。放課後の学びを大事にするという学校の方針で、もう一つの英語の必修授業である「論理表現1」と共に、今年度から週の授業時間が週3コマ→2コマに減っている。
1コマ50分の授業では、まず冒頭で帯活動を2~3種類実施する。具体的には、単語の音読練習を約5分、「What’s New」と呼んでいる活動を10~15分。これは毎回の宿題で、自由な内容の日記を5~6行英文で書いてきたものを、ペアで発表し合ったり、個別に発表させたりする。
残りの25~30分で読解を、ペア活動を中心に行う。ペアで発音練習や読み合わせを10~15分、内容読解もペアで話しながら行い、答えをシェアする。
最後の5分は毎時間「Metamoji Classroom」を使用して生徒各自が振り返りを書いて提出する(端末間の連携は授業支援アプリ「MetaMoji Classroom」を全教科で使用)。自分のことを振り返り、自己分析させることが目的。教員が授業後に確認し、その振り返りに対して指導を変えたりフィードバックをしたり、以降の授業にも活かしている。
本教材の教科書本文のリスニングや音読練習ができ、AIが音読を採点してくれる有料オプション「Pocket Speaking」も利用しており、課題にまではしていないが実施回数と点数を評価の一部として利用している。
指導する上での工夫:
一方的な説明だけの時間はなるべくゼロに近づけて、授業を活動で埋めることを意識している。講義ならオンラインで良いし、一人で黙々とやるのなら家でやれば良い。授業でしかできない活動をしようと思い、ペア活動などアクティブラーニングをメインに授業を組み立てている。
例えば、何か考えさせる場合も、お題を振ってペアで話をさせる。書いて見せるなら話した方が早いし、英語に限らず、言葉を発して話すことで考えが整理されてまとまるという利点もある。考えがまとまらないうちに書こうとして、書いて消してを繰り返すようなことにもならない。ブレインストーミングのようにまず話して、話すうちに頭の中で整理されてある程度まとまった内容を、必要ならさらに書いて整理する。この順番は英語の4技能と同じリスニング・スピーキング・リーディング・ライティングの順で、言語習得の自然な順番とも言える。
どこまでやるかは内容によって判断する。一問一答のような内容なら話すだけで終わりで良い。自分の考えを述べるようなものは、考えをまず話させてから授業内や家で書かせて提出させたり、テストで出したりして評価に使うこともある。
リスニングやリーディング、スピーキングも主体的に取り組まざるを得ない活動にしている。本文を読む際は、まず教員がチャンクごとに間をあけながらお手本音読し、それを聞いてチャンクごとにスラッシュを打たせる。その後、生徒にペアやトリオで音読させる際は順番を決めておき、ピリオド交代かスラッシュ交代かを指定する。
そのため、お手本音読のリスニングでスラッシュを打てていないと、生徒は次にスラッシュ交代で自分が音読する際に区切りが分からない。交代で音読する際は、話す方は話さないといけないし、待っている方も次の自分の番の開始位置が分かるように目で追っていく必要があるので、どちらにしろ読むことになる。自然と主体的に取り組み、方法を変えて音読することで同じ文章の繰り返し練習でも飽きにくい。
和訳や文法解説も、講義形式での説明はせず、主体的に学べるような自作プリントを併用している。ワークシートに日本語であらすじが書いてあり、一部空いている部分を生徒が自分で教科書の英語本文内から探して埋めていくとヒントが積みあがり、合わせると全体の意味が分かるようなプリント。教員が上手く説明したと思っても伝わっていないこともあるし、教えてもらえるのを待つような癖もつけたくない。英検や模試のように、初見の英文でも粘り強く読めるように仕向けたい。
本文内容を問う問題についても、問題の和訳や解答解説は時間をかけて説明しなくても、必要なら生徒が自分で調べれば済む。問題で本文理解度を確認するよりも、本文自体の概要を把握できる方が重要。自作プリントで大まかなあらすじを理解し、内容読解はペアでシェアはもちろん、指名した何名かが要約を発表してクラス内で共有する。その後、内容理解ができたら、再度音読することで定着を図る。
Q. 使ってみた結果
題材にとっつきにくいものがない。例えば、高校生になるにあたって夢を描こうという話、学校の制服が必要かどうかに対して賛成反対のような自分の意見を出せるもの、ノンバーバルコミュニケーション(言語以外で行うコミュニケーション)の話など。
授業ですべてのレッスンを取り扱うことは時間的に難しいので、前述の例のような読んで深まりそうな内容を選んでいる。そういった深まりそうな題材のレッスンがそれなりに入っている印象。ただ、授業数の少なさから現状は深めるまでの時間がなかなか取れていない点が残念。
レベルとしては、以前使用していた桐原書店のWORLD TREKとあまり大差を感じない。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
中堅校か、少し上の学校にちょうど良いレベルだと思う。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
教材の構成の面で、従来の講義型の授業には向かないと思う。最近のトレンドだろう見開きで全文掲載されているページは音読向きだし、アクティビティも多い。文法解説が巻末にまとめられている構成も、授業内で逐一説明する場合は使いづらいだろう。
- 岡本篤
- 名古屋経済大学 市邨中学校・高等学校
プロフィール
名古屋経済大学市邨高等学校・英語科主任。南山大学外国語学部英米学科卒業。GDM英語科教授法での授業を実践する傍ら、入学委員・広報部として生徒募集にも携わる。趣味はギターとカラオケ。日々校舎の掃除や、見学会・説明会などイベントごとのチラシやポスターの作成に追われ…