興味を引く分かりやすいトピックで、長文を読み切る”スタミナ”を付ける!長文読解おすすめ教科書
最終更新日:2023年1月26日
- おすすめしたプロフェッショナル
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武田 幸太郎 / 神港(しんこう)学園高等学校
NEW FLAG English Communication III
増進堂・受験研究社
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
難しい話題ではなく、生徒の興味を引く分かりやすいトピックが多い。例えば、「空気で動く車」や「3Dプリンターにおける未来の変化」など未来を創造して考えるトピックや、「掃除で物を捨てる時に大切なこと」など身近な話題は、生徒の興味を引きやすい。載せられている実例も分かりやすい。例えば、空気自動車のChapterでは、実用化されているMDI社のエアカーについて画像付きで取り上げていたり、掃除のChapterでは、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんについての話などを取り上げている。SDGsや古文の話などもあり、理系・文系に関係なく興味を引くようなトピックがバランスよく扱われている。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
セクションの掲載順を「Skill」と「Chapter」を逆にしてほしい。「Skill」は生徒によって足りないものが違うので、どれをどの程度扱うかは生徒によって異なる点も大きく、個人的に「Skill」は入試直前のテクニックとして扱う方が良いと感じている。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:高校3年生のコミュニケーション英語で、7年ほど前の平成27年頃に導入。それまでは全コースで統一の教科書を使っていた。当時使用していた「VISTA」は難易度の低い教科書で、特進コースの中でも特に一般受験する生徒は、個人で別の問題集を追加で行い補足していた。特進コースは特進のレベルに合った別の教科書を使った方が良いのではないかという教員の声が多数上がったため、いくつかの教科書と比較し、本教科書の導入を決めた。
状況(クラスの人数やレベル):高3の特進コース。1クラス30人を習熟度別で2クラスに分けている。上位層で偏差値50弱程度のレベル感。
他の類似教材ではなくなぜこれか:授業の中でできるだけ長い文章を読ませたいと思う一方、特進でも偏差値50程度のレベルなので、急激にレベルの高い教材ではついていけない。十分な文章量を確保しつつ、できるだけ分かりやすいトピックが良いと思い、本教科書を選んだ。今後、偏差値が全体的に上がっていけば、もっとレベルの高いリーディングの教科書に変更していっても良いと思う。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
大きく2つのセクションに分かれており、セクション1「Skill」でリーディングスキルの学習、それを踏まえて、セクション2「Chapter」で長文読解に入る流れになっている。
セクション1「Skill」:1~10まであり、意味のまとまりで読むスラッシュリーディングの練習、代名詞の使い方など、リーディングで必要なスキルを段階的に学習する。1つのSkillは見開き1ページで、左側にスキルの解説、右側に150字前後の中長文があり、文の内容よりスキルのポイントにフォーカスして学習する。
セクション2は13のChapterで構成され、1Chapterにつき1つの長文が掲載されている。本文の長さは600語~800語程度あり、文の長さによって、1つのChapterが3~4つのパートに区切られ、各パートごとに「Comprehension」内容把握やリスニングの問題がいくつか載せられている。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
【年/学期単位】
英語コミュニケーションは1コマ45分×週4時間。高3の3学期は入試があるため、メインは1~2学期の期間で扱う。「Skill」の部分は、接続詞など、英語表現の授業と重なる内容もあるので、授業では「Skill」のセクションは飛ばして、セクション2の「Chapter」から入る。本文の長さにもよるが、大体1コマでパート1つか2つ扱い、1Chapterあたり2~4コマで進む。長文を読んでいく中でつまずいたら、該当するSkillに戻って見返す形で扱う。
【1コマ単位】
最初の5~10分は、Kahootやクイズレットを用いて、単語テストを行う。出題は本教科書の新出単語や副教材で使用している『英単語ターゲット』から、抜き打ちで10~20単語ずつ。その場で〇✕が表示されるので、ゲーム感覚で行える。その後、本文の解説を15分程度行った後、5~10分はペアになって音読をする。読めた人から終われるという形で、これもゲーム性を持たせて楽しめるように行っている。
章末問題のアクティビティにはライティング活動があるので、英検のライティング問題につながるような問いを作成して、それに対する答えを何人かに発表してもらい終了、という流れ。一例として、未来の車に関するトピックであれば、未来の車の必要性について自分の意見を50ワード程度で書く。
指導する上での工夫:学校として英検受験を勧めているので、アクティビティを英検に関連付けるようにしている。その際、教科書のトピックがおもしろい点を生かし、生徒の興味関心に重点を置いて、英検のライティングのオリジナル問題を作るようにしている。英検では、4つのキーワードから2つを使って意見を述べる形の問題が頻出する。例えば、「空気で動く車」については「将来ガソリン車はあるか、ないか、なぜそう思うのか」など、自分の意見やその理由が述べられるような形のお題にする。問題の答えを書いたら、何人か当てて発表させ、最後に提出させる。
Q. 使ってみた結果
一般入試で長文をしっかり読めるようになってきている。以前は、長文を読んで途中で分からなくなり頭が真っ白になってしまう生徒が多かったが、長文を読むうえでのスタミナがついたと感じる。数字で表すのは難しいが、受験の実績が上がっているのは確かである。
生徒たちからは、教科書を変える前は「簡単すぎる」「何のためにコレやってるんですか」という声があったが、教科書を変えてからはそういう声がなくなった。内容がおもしろいので、退屈そうにしている生徒は明らかに減っている。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
偏差値50前後の中堅よりちょっと下くらいのレベルで、進学を考えている生徒。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
リーディングにおいて文の長さが生徒のレベルに合っていることは大切だと思うので、上記のレベルより下位層で、英語に苦手意識があったり、長文を見るだけでも嫌という生徒には難しいと思う。
- 武田 幸太郎
- 神港(しんこう)学園高等学校
プロフィール
神港学園高等学校 英語科主任 武田幸太郎 1999年~兵庫県滝川中学校・高等学校、2005年~慶應義塾大学総合政策学部修士課程、2010年~一般企業勤務、塾講師等を経て2015年より兵庫県神港学園に英語教員として勤務 趣味は旅行。好きな旅行先は外国各地を巡るこ…