これ一冊で4技能統合型授業を網羅!楽しいアクティビティで英語力と創造性が身につく教科書!
最終更新日:2023年3月16日
- おすすめしたプロフェッショナル
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古川 英明 / 近畿大学附属高等学校
SHAPE IT!2
ケンブリッジ大学出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
本校では2017年度からUncoverを使用しているが、2021年から英語特化コースにて本書を採用している。Uncoverの良さを引き継ぎつつアップデートされた内容・構成となっているので教材を変えることはさほどハードルは高くなかった。
特に魅力に感じているのは、1分間のVlogを作るアクティビティが入っているところだ。
スクリプトを生徒自身に作ってもらうのでWritingの練習になる。テーマによってはリサーチ力、場合によっては英語の文献を読むつまりReading力も必要とされる。作ったスクリプトを元に動画を撮影してもらう。ここではSpeaking力が鍛えられる。制作した映像はロイロノートに提出してもらい共有する。テロップがついていたとしても、他の生徒の動画を見る際に必要なのはListening力だ。
Vlogの内容は”Inspiring person”など生徒にとって身近な話題を取り扱う。
多くの先生方が感じていると思うが、英語教育において4技能統合はとても大事な要素である。本書のアクティビティはそれを網羅している。
ちなみにLessonごとに取り上げられている文法や単語が使われているVlogが入っており、それをアクティビティを実施する際の見本としている。挿絵、テロップ、BGMが巧みに使われたクオリティの高い動画である。
本書のTeacher’s bookには、教員向けにテキストの使い方や授業組み立てのアドバイスが書かれている。そこに「Vlogを作らせてみよう!」とあるが、正直最初にそれを見た時は「このアクティビティをやるのは無理だろう。」と思った。
生徒のポテンシャル(そもそも映像制作ができるのか)や制作した動画を公開することで何か問題が出てこないか(エチケット、プライバシーなど)といった懸念があったが、実際に取り組んでみたらこれらは杞憂であり、想像以上に面白いアクティビティとなった。
生徒の意外な一面が見れたり、SNSやアプリが身近であるからか映像を作るということ自体には問題がなかった。トレンドにも教員が思っている以上に生徒は敏感である。
意外なのが、このアクティビティにおいて英語のレベルは正直関係ないという点だ。たとえ間違った文法を使っていても、わかりやすい・見やすい・面白いコンテンツを作ってくるかが重要になる。回数を重ねていくうちに「翻訳機能で作った棒読みのスクリプトは面白くない」「この英語だと伝わらない」など生徒自身が面白い映像の傾向を学んできて、映像のクオリティが上がると同時に、質を上げたいが故に自然と英語力も向上する。生徒の成長が見えて非常に面白い。
またこのアクティビティの良さは「教員が動画を作る方法を知っておく必要はない」というところだ。評価方法はテストやプレゼンテーションと変わらないので安心して取り組んでほしい。
ちなみに制作した動画はGoogle Driveにも保存して共有できるようにしており、生徒たちの思い出として卒業しても閲覧できるように保管をしている。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
【問題/課題】
進学コースと英語特化コースでUncoverを使用していたが「進学コースのパイロットコースであり国際バカロレア[IB]を取り入れる英語特化コースが同じ教材を使っていていいのか。」と考え、さらにブラッシュアップされた本書を導入する。【状況(クラスの人数やレベル)】
本校は基本的にコース問わずほぼ全員が近畿大学への進学を目指しており、希望する学部に入学できるよう日々学習に励んでいる。英語特化コースは国際バカロレア[IB]をベースにしており、他のクラスに比べて英語の授業数が多い。通常英会話の授業は週に1回だがこのコースでは3回実施している。1クラス40名前後、大半が近畿大学を目指すのに加え、海外大学への進学を目指す生徒も数名いる。2022年度は10名が志望している。【他の類似教材ではなくなぜこれか】
なんといってもリソースの充実度が高い。Cambridge OneというLMS(Learning Management System)があり、教科書、ワークシート、動画資料、Listening問題の音源、試験用問題など必要なリソースが全て収録されている。さらに生徒のタスク進捗状況や問題の正答率の管理などもでき、全ての業務がオンラインで完結する。これは本書及びケンブリッジ出版にしかない魅力だ。このリソースは教材の採用が決まると利用できる。授業では、生徒が持っている紙の教科書と同じページをプロジェクターで映しながら、ワンクリックでリスニング音声やビデオを再生することが可能。また問題を解くときに使えるタイマー機能も搭載されている。日本の教科書にはない仕組みだ。実は検定教科書も出ているのだが、日本の指導要領に合わせた作りになっているので、4技能を駆使したCommunicativeな授業をするには少々取り扱いが難しい気がしている。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
全部で10Unitsから構成されており、Topicはeducation, health, travel, planetなど様々であるが汎用性に富むTopicが厳選されている。1Unitの構成は以下である。
・導入(Unitで扱うTopicに関する概要がビデオでまとめられている)
・Vocabulary
・Reading(200-300wordsの文章と問題)
・Grammar in action(Vlogから始まり教科書の問題を解く)
・Vocabulary & Listening(さらに新しい単語が出てくる)
・Listening(何を意識しながら聞くべきか必ずTipsが書かれてある ex:inferring, using background knowledge)
・Grammar in action
・Speaking(問いを投げる→教科書の内容を教科書を見せずに聞かせる→意見交換→教科書の空欄を埋める→Video→Plan:自分たちで会話を作る)
・Writing
・Project or Around the World(プレゼンしてみよう、世界で起きている出来事に関する豆知識など)※授業では取り上げないこともある
ちなみにプレゼンテーションは教科書に関連した内容で、プレセンテーションweekを設け4〜5人のグループで取り組む。定期試験ごとにコミュニケーション英語の授業で4Topics、英語表現の授業で、授業に関連した4Topicsを担当教員が考え、生徒全員が取り組む。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
【進め方(年/学期単位、授業単位)】
年5回実施される校内の定期試験に合わせて、試験ごとに2Unit(1Unitを4コマ程度)ずつ取り扱うペースで進めている。テキストのレベルは1年生で2、2年生で3を使用中、3年生で4を採用する予定である。【指導する上での工夫】
Shape It!(教科書)に囚われ過ぎないように意識している。Materialは生徒のレベルに応じて変える必要があると考えているからだ。教科書の設問に物足りなさを覚えた時はTopicに関連した外部資料を引用してみたり、面白い記事があったら共有してみたり、と工夫をしている。また「とにかく発信しよう!”LOVE YOUR MISTAKES!”」と声をかけている。発信する機会を設けるべく、4人グループを組み1vs3で授業に関連するTopicを用いたスピーチをさせ、お互いにフィードバックをする時間を作っている。
Q. 使ってみた結果
楽しく学びのある授業を提供できていると実感できる瞬間が増えてきた。かつては寝ている生徒がいるのは当たり前だったし、つまらなそうに授業を受けている生徒も少なくなかった。
しかし寝る生徒はまったくいなくなり明らかにタスクに集中していて、「え!?もう授業終わり!?」と言う生徒や「先生!今日の授業面白かった!」と直接伝えてくれる生徒も増えた。
私自身「先生の授業は面白くない。」と生徒に言われ、情けなく思っていた時期があった。教員が話し続ける授業への疑問から、CELT-S・CELTAを取得した。教授法を学ぶと共にケンブリッジ出版の教材を使い始めてから改善が見え、生徒の反応にも変化が顕著に出たのは非常に嬉しかった。
試験の結果でいうと、ケンブリッジ英検を受験させたところSpeakingの成績が他進学校より上位であり、満点を取った生徒も複数いた。
進学実績については2021年度に導入したばかりなので出ていないが、これからの結果が楽しみなところだ。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
文法のセクションにおいて、Topicの流れやコンテクストを一致してほしいという願望がある。
たとえばTopicが”invention”のUnitにある問題で
- Isaac Newton invented the cat door.
→The cat door was invented by Isaac Newton.
- A dentist invented cotton candy.
→Cotton candy…………………………………………….
というpositiveをpassiveに書き替えるものがある。
ニュートンの後に突如わたあめの文章が出てくるなど、違和感を覚えることがある。
正直どの教材にも多い傾向で、コンテクストが統一されていると生徒の関心が分断されることもない。また、Readingのボリュームに少し物足りなさを感じている。単語数、内容の深さ、Vocabularyの多様性、新出文法など、日本の指導要領に照らし合わせると少なく、浅いと感じる点があるため、新聞やネット記事など別教材で補ったりしている。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
進学校かどうか、英語に特化しているかはあまり関係なく、1〜4までレベル別に監修されているので、どんな英語レベルの生徒にも使える教材だと感じる。
All Englishの教材であるため、高校1年生の最初は多くの生徒が「うわ…全部英語だ…」と苦手意識を持つ。しかし1学期が終わる頃には、総じて「意外といける…!」という自信を持っているように思う。間違えてもいいから発言することを促すこと、クラスメイトと英語を楽しく使う機会を増やすことが大事だと考える。
ちなみに初めから教員も授業を全て英語で実施する必要はないので、ご安心いただきたい。
また、Communicativeな授業をしたい先生には非常に使いやすい教材ではないだろうか。4技能が大事だと考えてる先生は多いと思うが、自分で準備しないといけないことも多いのではないだろうか。本書はその負担が比較的少ないのでおすすめである。
大学受験だけではなく、大学進学後、社会人になっても役に立つ教養や自己発信力を育める。
- 古川 英明
- 近畿大学附属高等学校
プロフィール
近畿大学附属高等学校グローバル教育室室長・IB(国際バカロレア)教育準備室CASコーディネーター・高大一貫英語教育主任・英語特化コース担任。ケンブリッジ大学英語検定機構認定CELT-S(2020年)およびCELTA(2021年)取得。神戸市外国語大学大学院修士…