わからないところの「あぶり出し作業」に最適!細かく丁寧な解説で、「自分で調べる癖がつく」英文法を論理的に学べる1冊
最終更新日:2023年3月6日
- おすすめしたプロフェッショナル
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對馬 洋介 / 宝仙学園中学校・高等学校共学部
Vision Quest 総合英語 Ultimate 2nd Edition
啓林館
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
文法書である本書を使うようになり、英文法の復習や予習の仕方に悩んでいた(る)生徒が、「まずは本書を開き、自分で調べる」という能動的な姿勢になった。また、授業中もいつでも本書を開き、読んでも良いことにしているため、理解も深まり自然と質問も増える。これが最も良かったところである。生徒自身でゴールに向かって踏み出したように感じられ、教員としてとても嬉しく、楽しい。本書は、「自立した学習者に育てる」という学校としての大きな目標に沿った教材である。また、授業中だけでなく家庭学習中にも大いに役立つので、本書を使った学習習慣が継続・定着しやすくなる。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
今年度(2022年4月)、高等部では新カリキュラムとなり「英語表現」の授業も「論理・表現」へと変わった。より論理的に英語を学びアウトプットすることが求められるなか、改めて文法指導の重要性を実感している。例えば、競技にとってルールを知ることが不可欠なのと同様、英語も文法なしに論理的な表現をすることはできない。生徒には、英語で何か疑問に思ったりしたことがあった際、自分で調べられる力をよりつけて欲しいと考えて いる。そのためには、学習することで大学入試にも対応できる文法書が必要だと考えている。状況(クラスの人数やレベル):
現在は、高1の「論理・表現」授業内で使用。1コマ50分、週3コマ。生徒たちは文法問題や読解でわからない場面に遭遇した際に随時、本書を活用している。他の類似教材ではなくなぜこれか:
毎年様々な教材を検討し、「生徒や教員にとって本当に価値のあるもの」か熟考している。本書はレファレンスがきちんと整理されていることはもちろん、随所にちりばめられている英文の多くが大学の入試問題から引用されている点で、生徒のみならず英語教員にも刺激となるであろう。特に最新の入試長文問題を文法の観点から読み解く“Integrated Reading”や生徒が陥りやすい英作文のポイントを解説した“Integrated Writing Skills”は、他の本とは異なる大きな特徴であり、採用の決め手の一つである。Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
単元ごとにページ構成は異なるが、全体のページ数は750を超え、基礎から受験対策まで対応した丁寧な中身になっている。文法を、ビジュアルでもわかりやすく体系的に説明しているのも特徴である。「英語の全体図」「各章扉の体系図」が掲載され「今、何を学んでいるのか」を理解しやすい。
例えば第一章では文の種類について学ぶ。まず大きく【平叙文】【疑問文】【命令文】【感嘆文】の4つに分かれ、そこから更に【平叙文】は「肯定文」と「否定文」、【疑問文】は「Yes/No 疑問文」「疑問詞で始まる疑問文」「選択疑問文」「その他の表現」に分かれる。「その他の表現」は更に「否定疑問文」「付加疑問文」「修辞疑問文」に分かれる…という分類が図で体系的に書かれている。
次のVisual Imageの欄では、日本語の疑問文、英語の疑問文の違いをイラストと文章でわかりやすく説明してくれる。
その後のページでは、例文を使った丁寧な文法解説に加え英作文のコツや実際の共通テストの問題も掲載されており、体系的な学びから実践への繋がりが感じられる。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
オリジナル教材とともに本書を常に利用。授業中は原則、常に卓上で開き利用して良い。また、教員の作成する教材には本書のページ数を記載してある。授業中に伝えられる情報量には限りがある一方、伝えるべき知識は多岐にわたるからだ。生徒がその場で確認したり、教員への質問や自身での復習にも役立つよう工夫している。 また、定着を促すために小テストも実施しているが、こちらも同様に該当するページ数を問題の横に載せている。問題を解いてみて分からないようならば、テスト中でも本書を利用しても構わない。生徒たちは付箋をつけたり線を引いたりしながら、本書を使って間違えた問題を振り返る。これを「あぶり出し作業」と呼んでいる。定期テストの結果は評価に入れるが、小テストの場合は実施後提出させておらず、点数を評価に含めない。テストで点数をとることを目的とせず、間違えることを恐れないで欲しいからだ。「間違えてもいいんだよ。わからないところが見つかって良かった!」と声をかけ、モチベーションを高めることを大切にしている。指導する上での工夫:
学校の全体目標として「自立した学習者に育てる」というゴールがあるため、教員が生徒に「教えすぎない」ことを意識している。教員が教えた気になってしまい、「あれ、これ前言ったよね?」とイライラしたり焦ったりしては本末転倒である。授業はオリジナル教材と本書をセットで進めるが、文法や表現でわからないところが出てきたときは本書を使って生徒自身に調べさせる。「一度自分で調べてみて、わからなかったら聞いてごらん」と伝えると、たいていは「わかりません、これってどういうことですか?」と聞いてくるのだが、それでいいと思っている。授業中もこれらのやり取りが教員と生徒間で活発になされ、生徒は「自ら考えること」を止めず集中できる。思考停止状態が最も悪いと感じるので、まずは自分で調べて考えてみるという姿勢が生徒に培われるよう、この指導スタイルを継続していきたい。Q. 使ってみた結果
中学から高校に上がったタイミングで本書を持たせたことで、「これからは自分で調べていくんだ!」という意識が芽生えた生徒も多くいるように感じる。また、授業が始まると当たり前のように英語辞典と本書を机の上に出し、本書と一生懸命に向き合う生徒の姿も見られるようになった。「教科書だけでは物足りないと感じるようになりました」という声も聞いた。引き続き継続して使用してくれたらと期待している。一方で、どうしても英語への苦手意識を払拭できず、成績がふるわない生徒にとっては本書は難しく、さらに英語が嫌いになってしまうかもしれないという懸念もある。そうならぬよう、個別でのフォローをするなどしっかりと生徒を見ていきたい。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
意識の高い生徒や、最低限の学びの姿勢がある生徒、一般受験での大学受験を目標としている生徒に向いていると感じる。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
本書をただ導入すること(持っていること)が目的になってしまうと意味がなくなってしまう。毎回の授業での活用や、家庭学習での本書の活用を教員が指導できない場合は向いていないと思う。
- 對馬 洋介
- 宝仙学園中学校・高等学校共学部
プロフィール
2016年より本校へ。現在は教務部長・英語科主任を務める。 自らが受けてきた英語教育に疑問を持ち、「自分が習ってきたように教えない」「生徒主体の授業をする」「常に自らが学習者である」ことをモットーにしている。いかに英語嫌いな生徒をうまずに知的好奇心を喚起する楽…