新課程「論理表現」への変更で手薄になりがちな文法知識の補完に最適!短時間でも取り組みやすく自学にも向いている参考書
最終更新日:2023年3月22日
- おすすめしたプロフェッショナル
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東間 裕人 / 茂原北陵高等学校
チャート式シリーズ EARTHRISE アースライズ総合英語
数研出版
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
コアイメージ(文脈や状況に左右されない、単語の中核的な意味)が細かく書いてあるので、自分で進めやすい。例えば、現在形や現在完了など、各文法事項の最初のページにコアイメージが図やイラストで分かりやすく解説されているため、最初に文法に取り組む際に生徒一人でも理解がしやすい。不定詞と動名詞の違いが詳しく解説されているなど、ただの暗記に終わらず理解を助けてくれる点も良い。自分で学ぶときに使える教材だと思った。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
教科書の最後に文法の授業動画のQRコードはあるが内容が簡易なので、参考書くらい詳しい内容の文法解説動画があると、一人で読むだけでは分からない生徒でも家で予習しやすいと思う。
また、教科書本文の音声があったら助かる。数研出版の教材は、授業で教員が使うパワーポイントが充実しており、本文の音声もそこから手軽に再生可能。ただ、生徒が復習として教科書の音声を聞くことはできない。コミュニケーション英語の教科書には本文音声があるため教科の特性に合わせているのかもしれず、たしかに論理表現では難しい単語はあまり出てこないが、生徒が自分で書いた英文内の単語の発音が分からない状況はよくあるので。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
2022年4月から導入。啓林館『Vision Quest』を使っていたが、新課程に変わるタイミングで教材を変えてみようと英語科全体で決めた。変更後の影響として、「論理表現」ではアウトプットが強化されるため、文法を授業で扱う時間が減り、放課後のゼミの時間でしか扱えなくなった。生徒が文法を自分で予習してくる必要性も高まり、短時間でも文法事項を習得しやすく、自学もしやすい教材を求めていた。状況(クラスの人数やレベル):
高1の特進コース1クラス、19人のみで使用。ほとんどの生徒が英検3級は取得済みで、準2級に挑戦できれば望ましいというレベル。他の類似教材ではなくなぜこれか:
新課程への変更で生徒の予習がより必要になったことから、教科書と同じシリーズで分かりやすい総合参考書という点が決め手となり、求めていた用途で一番使いやすそうだと判断した。教科書(EARTHRISE English Logic and ExpressionⅠ)、参考書(本教材)、Workbook(Standard ワークブックⅠ)の3冊セットで使うため、教科書が良かった点も理由の1つ。話すことを中心にした2ページ → 書くことを中心にした2ページ → 自分の考えを書く1ページ、という構成でバランスが良い。話す活動から始め、教科書のトピックに基づいた各活動があり、最後に少し長い文章で自分の意見を書く、というステップが整っていて使いやすいと思った。
Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
教科書は、全部で15レッスン(高2用のⅡも同等)。参考書(本教材)と文法配列・例文がそろっていて、連動した学習が可能。
参考書には、高1~2の教科書で扱う文法事項が入っているので、教科書より奥深い内容。以下目次のようにUNITは全部で22個あり、各UNITは、導入(見開き1ページ)、よく使う文法を中心に使用レベルで分けたFirst StageとSecond Stage(各見開き2ページ)という〈2-STAGE〉構成。
Workbookには、本教材のUnit1に対して2~4レッスン分の問題がある。
はじめに
UNIT1 文の組み立て方
UNIT2 動詞と時の表し方①
UNIT3 動詞と時の表し方②一完了形
UNIT4 助動詞
UNIT5 受動態
UNIT6 不定詞
UNIT7 動名詞
UNIT8 分詞
UNIT9 関係詞
UNIT10 比較
UNIT11 仮定法
UNIT12 話法
UNIT13 否定
UNIT14 さまざまな表現
UNIT15 接続詞
UNIT16 前置詞
UNIT17 疑問詞
UNIT18 名詞
UNIT19 冠詞
UNIT20 代名詞
UNIT21 形容詞
UNIT22 副詞文法事項索引
英語索引
日本語表現索引Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):週2回の「論理表現」の授業では基本的に教科書を扱い、本教材を使うのは、月曜の放課後に1時間ある「ゼミ」の時間。教科書だけでは文法事項が全部扱えないため、ゼミで「論理表現」の延長戦として、参考書(本教材)とWorkbookを併用して文法を補完している。
宿題として参考書を見ながらWorkbookを解かせておき、ゼミではWorkbookに沿って、答え合わせと、つまずいたところを細かく解説する。生徒が板書する時間はないので答えは言わせて、全体で答え合わせ。参考書を自分で使って解けると1番良いが、見てこない生徒もいるため、参考書の掲載ページ数を教える場合も。解説方法は、板書や余裕があるときはロイロノートで問題をPDFにしたものに書き込んでいく形式にすることもある。
生徒がつまずいたところ=解説する個所は、生徒の様子で大体分かるので、生徒の顔色をうかがいながら判断している。以前はWorkbookを回収して全員分チェックしていたが、慌ただしい時は回収しないままということも最近は増えてきた。
進めるペースは、教科書を扱う「論理表現」の授業と基本的には同じで、行事で遅れることもあるが基本的には1か月に教科書2レッスン分。つまり教科書1レッスンは2週間(「論理表現」授業4回、「ゼミ」2回)で終わり、教科書1レッスン分のWorkbookは4ページほどなので、「ゼミ」1回でWorkbook2ページ分くらい進む。12月中旬現在、教科書のレッスン11まで終わっていて、3月までに残り4レッスン、予定通り終わる見込み。
指導する上での工夫:
文法は今までの長い間、最初に説明をしてから問題を解いてという授業形式だったが、時間がかかると自分で学ばなくなってしまうことを課題に感じていた。文法は詳しく丁寧に教えるより、自分で調べながら理解してほしいという考えがある。新課程で「論理表現」に変わったためでもあり1年目で実験的な面もあるが、現在は文法事項について「論理表現」の授業では詳しい説明はせず、「ゼミ」では宿題で解いてある程度分かっている前提で解説している。
「ゼミ」で文法説明の補完をしつつ、「論理表現」の授業は、自分の考えを発信していけるようにという目的で、やり取りや作文を書かせたりをメインにしている。Workbookにも最後に英作文はあるが、あまりやっていない。表現活動は教科書で、Workbookでは知識をしっかりと入れるという切り分けにしている。
ゼミと授業で進度を合わせているが、教科書を使う授業では、ノーベル賞受賞者の話で山中博士が出てきた際にインタビュー動画を見せるなど深めることを優先して、進度が遅れることもある。でも3学期は飛ばす部分があっても活動を優先していて、大事な部分だけ抑えれば良いという方針。
Q. 使ってみた結果
昨年まで使用していた別教材も、教科書と参考書、Workbookの3冊セットで使っていた点は同じだが、文法の主要なイメージが細かく書かれているので、本教材の方が生徒が自分で勉強を進めやすく、予習してきている印象はある。
週1時間なのであまり深く掘り下げて解説することはできず、なかにはついてくるのが難しい生徒もいるが、自分で復習して習得していってほしいと思っている。
Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
偏差値50前後くらいの中堅レベル。ただ、本教材を使うゼミは人数は問わないが、教科書を使う授業の方は、40人くらいの大人数の場合は難しいかもしれない。授業内で週1回やっている、自分の考えを英作文させての添削やグループ/ペアワークは比較的少人数クラスなのでやりやすいが、多いと全体が見れずに対応しきれないと思うので。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
ある程度自分で勉強できることを前提にしているボリュームのある教材なので、大学受験を目指さない場合は、ここまでやる必要はないと思う。
また、進むペースが速いためそのペースについてこれない場合はおすすめしない。授業時間数が2時間(教科書)+1時間(参考書を使ってWorkbook)で少なく、生徒の理解度によっては計画通りに進めない場合もあるため。
- 東間 裕人
- 茂原北陵高等学校