さまざまな参考書のいいとこどり!豊富な挿絵と分かりやすい解説で自学も捗る「読める」参考書
最終更新日:2023年4月3日
- おすすめしたプロフェッショナル
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村上 友和 / 大手前高松中学・高等学校
Vision Quest総合英語 2nd Edition
啓林館
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
挿絵が多く、例文の質や構成も良く、さまざまな参考書のいいとこどり。例えば、和文英訳で間違えやすいポイントを解説した「英作文のコツ」のセクションなど、大切な点が囲みで掲載されている箇所が多いので情報の整理がしやすい。色や太字も適度、囲みも至るところにあり、一つの知識にたいして関連した情報も整理されている。そのため、合わせて押さえたいポイントが一目で入ってくる。メリハリがあって何度もスパイラルに見返すことができる教材である。教員視点で「載せてくれてありがとう!」と思う点が多く含まれている。
1冊にアナログにまとまっているのでページが抜けてしまうこともなく、書き込んで生徒がカスタマイズできる。また、巻末の復習問題には、問題が解けなかったときにどこのページを見れば良いかが書いてある。Q. 困ったところや改善してほしいところ
練習問題が巻末にまとまっているが、各章の間に章末問題が入っているとより良い。(『Ultimate』はそのような構成になっているので、新しい学年ではそちらを使用している)
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
問題/課題:
新課程になる前の平成27年度頃から導入して、今年で7~8年は経つ。以前は数研出版の『Dual Scope 総合英語』を使っていたが、分厚くて難しく、取っ付きやすさにおいて少し問題があった。生徒が参考書を授業に持ってくる率も低かった。参考書は開かないと意味がないので、生徒が親しみやすい教材を探していた。状況(クラスの人数やレベル):
高校1年時から学年全体で使っている。今年度の私の担当は高校2年生の普通科「栄冠進学SSコース」(30名×3クラス)で、偏差値68、英検準1級~2級レベル。東大~関西圏の国公立や難関私大を目指す生徒たち。他の類似教材ではなくなぜこれか:
文法項目は多岐にわたる複雑なイメージがあるが、本書は豊富なイラストや、例文の載せ方がとても分かりやすい。例えば、英熟語を挿絵と一緒にイメージを分かりやすく解説してくれているので、ビジュアルで「あのページにあの絵があったな」と思い出しやすい。また、文法項目を囲みで整理して載せているなど、シンプルにして覚えることを少なく感じさせる工夫があり、親しみやすい。辞書的に使うことができる総合英語の教材は多くあるが、この教材は文法カタログのように「読むこと」ができる教材。また、本書で扱われている項目は、大学入試の過去問で実際に出題された内容も多く、入試対策としてもかゆいところに手が届く教材である。Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
全24章まであり、各章は見開き5~10ページくらい。基本例文、解説、英作文のコツ、かつてのセンター試験で実際に出題された過去問など知的好奇心をかき立てる構成になっている。章ごとに「基本編」と「発展編」が8:2くらいの割合で構成されている。
さらに深堀りした内容が随所にあるので、どのレベルの生徒も自分にあわせて情報をチョイスしながら読み進めることができる。音読に関しては、例文を別冊にしてくれている薄い「基本例文集」という冊子がある。Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
1年の入学時より、コミュニケーション英語・英語表現ともに、辞書的なツールとして教科書と併用している。
私が担当する2年のコミュニケーション英語(週4単位)の授業では、この時期(1月)は入試長文を扱っているが、分からない点があるときに「この本の何ページを見てね」という形で、参考書として使用している。ただ生徒各自で見るだけでなく、教室のスクリーンに教員のiPadから紙面と同じページを映し出して、解説説明ができるようにしている。
巻末の復習問題は授業内では扱わず、自学自習の中で行わせている。この部分から定期考査に出題するときもある。指導する上での工夫:
できるだけ多くの回数、本書に触れてもらうため、本書に愛着を持ってほしいと思っている。そのため、気付いた点に関しては、紙面にイラストを描いたり、思いついた図(例:時制の数直線図など)などを書き入れていくよう指導して、自分なりのカスタマイズをしてもらう。『Good notes』というアプリを使って、出版社のPDFを取り込んで、教員の手書きの書き込みも映し出して参考にしてもらっている。愛着を持ってくれれば、より習得しやすくなると思う。Q. 使ってみた結果
参考書の「ここを開いてね」と言っても以前はあまり開かない生徒もいたが、本書にしてから生徒が開く率が上がった。取っ付きやすさが上がった分、生徒と教材との距離が近くなった。
模試の過去問などを解いているときに、過去に学んだ点を反復しやすい教材。反復した結果正答率が高くなり、1年時から使ってきて書き込みが増えてきたこの2年生の時期に、基礎が役立つという実感が湧いている。
生徒の気持ちになってみると、遠い存在だった英語を近くに感じる助けになっていると感じる。「英語学習はワクワクするよ」ということを伝えるための非常に重宝するツールである。Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
基本編、発展編に分かれているので、どのレベルでも使える。英語が難しいと思って入学してくる生徒が増えているが、それを簡単なように見せてくれる教材。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
超進学校などで、「文字だけでも良い」や「もっと分厚い参考書が良い」という学校には少し物足りないと思う。
- 村上 友和
- 大手前高松中学・高等学校
プロフィール
1998年 神戸大学経営学部を卒業後,同年~Truman State University (米国)を経て,2000年 Western Michigan University (米国)卒業 New Yorkでの実務経験を経て帰国,会社員,予備校講師を経験し,2…