読解のヒントとなる「背景知識ページ」が嬉しい!幅広いテーマの文章を読み解く力を養う入試演習教材
最終更新日:2023年5月30日
- おすすめしたプロフェッショナル
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古川 貴士 / 藤村女子中学・高等学校 英語科教諭
アップリフト 英語長文読解
Z会
- おすすめのポイント
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Q. 良かったところ
入試問題に特化した教材なので、検定教科書で漫然と英文を読んで訳していく形式とは異なり、解答時間を意識して一つの長文問題に取り組むことができる。実際に出題された大学名が掲載されているので、入試問題に集中して演習させることができる。ひととおり問題を扱った後は、生徒は自分のレベルや希望大学に合わせて、自らの進路に関連のある問題を選択し、再度解答することができる。幅広いテーマが扱われているので、背景知識を身に付けるのにも役立つ。
Q. 困ったところや改善してほしいところ
解説書において、各文のSVが振っていないため、「それがあればもっと分かりやすいな」と言っている生徒もいた。また、教材に音声のQRコードはついていない(別売りのCDのみ)ため、本書内でリスニングやスピーキング対策もできればさらに良い教材になるであろう。
Q. 導入の経緯や、本教材採用の意図と狙い
状況(クラスの人数やレベル):
高校3年生の特選コースで使用。今年度は5人のみ。英検2級~準1級レベル。問題/課題:今年(令和4年度)から導入。今までは教科書メインで行っていたが、私が担当する特選コースでは、5人の生徒のうち3人が英検2級を2年生が終わる時点で取得していた。すでにかなり高い英語力を身に付けている生徒たちなので、教科書を使用した通常の授業よりも、一般入試に直結した演習問題を扱った方が良いと思った。
他の類似教材ではなくなぜこれか:
ジャンルごとに文章が分かれており、各ジャンルの最初に、そのテーマについて背景知識をまとめたページがある。例えば「地球環境」であれば、「Resource」「 Water shortage」と言ったキーワードになる英単語や、地球環境に関する日本語のコラムなど、読解のヒントになる情報が1ページにまとまっている。このレベルの長文になると、単語や文法・読解の知識だけでは解けないような問題も出て来るので、このような各テーマごとの背景知識が載せられている教材はとても役立つと思った。また、レベルもシリーズで段階的に設定されているので、上のレベルに進もうと思えば進めるのも良い。Q. 教材の構成(全体構成、単元ごとページ構成)
7つのジャンル(地球環境/文化・人間/自然・科学/言語・コミュニケーション/情報・科学技術/社会・経済/医療・健康)に分かれ、各ジャンルごとに2題~4題の長文がある。全部で20題。長文の長さは290語~480語程度。長文1題につき見開き1ページの構成で、左側に長文、右側に設問が数題ずつ載せられている。
Q. 実際の使い方 (どこを、どの程度のペースで等)
進め方(年/学期単位、授業単位):
週5コマあるコミュニケーション英語のうち、2コマは他の教材を使って文法やリスニングなどを扱っており、3コマで本教材を使い長文読解を行っている。
1つの長文(見開き1ページ)を2回の授業で扱う。
1コマ目は、問題を解かせる。時間内に問題を解き終えた場合は、通常2コマ目で扱う答え合わせを各自で先に進めておく。解答解説編を見て、なぜ間違えたのかを考え、全訳の日本語を全部きちんと読んで、文章の論理的構造を理解するよう指導している。分からない点があれば自分で次の授業までに調べて来るように指示している。
2コマ目は、最初の10分程度を用い、各自で解答をチェックする。段落ごとの構成でどんなことが書いてあるのか、自分の理解が解答の日本語訳と合っているのかをしっかり確認させる。その上で、生徒から質問のあった箇所や間違いの多い箇所、また入試で重要なポイントの解説を行う。
2学期の初め頃には20題を扱い終えるので、その後は、生徒各自の希望大学レベルに合わせた過去問を解かせる。扱う問題集は生徒により異なるので、分からない点はそれぞれ個々に教える感じになるが、今年度は5人だけなので個人指導が可能だった。指導する上での工夫:
本教材では内容理解の問題に加え、文法や語彙に関する問題がそれぞれあるので、プラスで何かをすることはしていない。ただ頻出の文法問題に関しては、過去問などから類似問題を付け加えて提示している。くり返し行うことにより定着を図る。また、しっかり訳を読み、日本語もきちんと理解できるようにしている。一文一文の訳に加え、パラグラフそして文章全体としての訳をすることにより、論理構造を把握する。この力は、英語の長文読解だけでなく、現代文の問題を解く際にも通ずる部分が大きい。社会や医療など、英語の知識だけでなく一般知識も身に付けてほしいと思っている。
本書はコミュニカティブな教材ではないので、アウトプットの機会を作るため、各長文の2コマ目の最後には、本文のCDを通しで流してOverlappingで音読も行っている。Q. 使ってみた結果
通常の教科書を使用する授業と比較して、意図をもって読むことができた。教科書をただ漫然と読んで訳して行く時と比べて、入試に向けての意識づけになったと思う。生徒が「入試というのはこういうものなんだ」というのが理解できた。定期考査で初見の問題を出しても、だいぶ読めるようになっている生徒もいる。ただ日本語での基礎知識がないと長文を読み解くのは難しいので、その能力を付けていく必要はあると思う。
「英語を読んでいる」というのではなく、「あるテーマの文章を英語で読んでいる」という感覚を身に付けてほしい。Q. 利用が向いていると思われる学校・クラス・生徒
難関大学を目指す生徒。入試に焦点を合わせて長文読解演習を行いたい生徒。
Q. 個人的にあまり合わないと思う学校・クラス・生徒
ある程度の長さがある長文なので、20分~30分の集中力が続かないレベルには厳しいと思う。
英検3級~準2級レベルの生徒にはなかなか難しい。また、進学目的ではなく、コミュニカティブな英語を学びたい生徒には向かない。
- 古川 貴士
- 藤村女子中学・高等学校 英語科教諭