「教育は楽しい!かっこいい!」 新しい学びを見せる教育研究フェス・Tokyo Education Show イベントレポート

最終更新日:2024年11月29日

2024年10月12日・13日に、東京学芸大学で開催されたTokyo Education Show。全国から教員や教育クリエーター、学生が集まり、さまざまなプログラムが展開されました。85もの団体が集まる中、国際教育ナビもメディアパートナーとして参加。教育に関心のあるすべての人にとって、学びの新たな可能性を発見する貴重な場となりました。

Tokyo Education Showとは?

Tokyo Education Showとは、教育の未来を共創する熱気に満ちた教育研究フェスです。「教育は楽しい!かっこいい!」を合言葉に、新しい教育の魅力を追求し、多様な世代が教育の未来について共に考え、行動を起こすためのきっかけを提供しようという目的で開催されました。

2日間にわたるフェスでは、3つのカテゴリーで構成された、さまざまなプログラムが開催されました。

あたらしい公開研究会:教育現場の最前線で活躍する教員や、新たな教育の形を提案する教育クリエーターによる授業
教育サミット:教育業界のさまざまな立場の人々が集まり、教育の未来について議論を交わすトークセッション
教育若者会議:未来の教育を担う若者たちが中心となり、自由な発想で教育の在り方について考え、発信する場

その他にも、教育系パーソナリティによるVoicyの公開収録や教育への取り組みを紹介する展示会、東京学芸大学による展示やキャンパスツアー・進路相談会など、多彩なコンテンツが来場者を楽しませました。

国際教育ナビが取材したプログラムを紹介

今回、国際教育ナビでは、4つのプログラムを取材しました。それぞれ趣向の異なるプログラムの内容を紹介します。

いロイロ教育サミット2024「大人も子どもも一緒に教育について考えよう」

日本の多くの学校で導入されている学習支援アプリ「ロイロノート・スクール」を通じ、学校教育の現在と未来について、多様な参加者とともに考えるプログラムです。ロイロノートの活用に関するパネルディスカッションから始まり、そこで提起されたテーマを基に、EdCamp形式のグループディスカッションが展開されました。

たとえば、「授業へのロイロノートの活用法」というテーマでディスカッションをしていたグループには、現役の教員のほか、大学の教員や高校生などが参加。それぞれの立場から、ロイロノートを活用した経験や、導入の効果や授業への生かし方などについて活発な意見が交わされていました。

「ロイロノートによって発言のハードルが下がり、内気な生徒も意見を表明しやすくなりました。普段あまりコミュニケーションを取らない人の意見も見られるので、こういう考え方をするんだなということがわかりますし、自分の意見と似ている人と話が広がることもあります。英語のレポートを提出するときにも便利です」(私立高校3年生)

「英語のスピーチの評価などにおいても、ICTツールを活用すると時間効率の向上につながりますね」(高等学校教員)

「多様な解釈が求められる文学作品において、学生たちの思考力や判断力を深める効果が期待できそうです」(大学の国語科教員)

教員向けキャリアカウンセリング体験 ~自己理解を深める対話の時間~

NPO法人xTReeE(クロスツリー)によって主催された、キャリアカウンセリングの体験会。NPO法人xTReeEは、小学校・中学校向けキャリア教育プログラムを提供している団体です。キャリアコンサルタントとの1対1の対話によって、児童や生徒にさまざまな気付きを促す活動に取り組んでいます。この日は、学生のほかに、働き方や生徒との向き合い方に悩む現役の教員にもカウンセリングを体験してもらい、自身の強みや価値観を再発見する場としていました。

<カウンセリングを体験した人の感想>

小学校教員
「転職を考えているわけではありませんが、自分の中でやりたいことがあり、それをどう実現できるかを相談していました。相談したことで、何をやるべきかが少し明確になった気がします」

高校2年生
「将来、教育関係の仕事に就きたいと考えています。カウンセリングを受ける前は、自分一人で考えていて少し落ち込むこともありました。でも、話を聞いてもらったら、頭の中がスッキリして自己肯定感やモチベーションも上がったような気がします。カウンセラーが親身になって話を聞いてくれたことで、『自分の悩みってこんなに単純なことだったんだ』と思えるようになりました」

教育若者大交流会

教員・学生など、さまざまな立場や世代が集まり、教育への思いや意見を交わし合う交流会です。取材をした私も、参加者の何人かに声をかけてみることに。その中で、茨城県立鉾田第一高等学校2年生の伊藤悠希(はるき)さんと荒木田航さんにお話を聞くことができました。

実は、伊藤さんと荒木田さんも、当日「鉾田第一高校GSNP(学校の先生になろうプロジェクト)発表会」というプログラムで、課外活動としての取り組み内容を発表していたとのこと。GSNPは、7年前から同校で行われている取り組みで、教員志望の2・3年生の生徒が20人ほど集まり、学校環境の改善などをテーマにさまざまな課外活動を行っているそうです。

お2人に、発表を終えた後の感想を聞いてみました。

「自分たちでスライドを作って発表しました。発表を聞いてくれた人から、内容が素晴らしいという言葉をたくさんもらったのがうれしかったです。県の教育委員会で発表したらどうですか、と言ってくれた人もいました」(伊藤さん・荒木田さん)

GSNPの活動を担当している、国語科の市毛孝史先生にもお話を伺いました。

「この活動は、『地元を支える子どもたちをどう育てるか』を考える取り組みの一環として始まりました。たとえば、小学校から大学まで地元の学校に進学し、卒業後地域に貢献する人材を育てることも教育の役割だと考えています。そこで、教員を目指す生徒たちが教育学部への進学に興味や関心を持てるよう、この活動が行われるようになりました。実際、GSNPの一期生の中には、今年から地元の学校で教員として働いている人もいます」(市毛先生)

GSNPでは、生徒が先生やスクールカウンセラーにネット上で相談できる「ecoroke(エコロケ)」というアプリを開発しているそうです。

「アプリの開発は、本校がDXハイスクールの採択校になったのを受けて、高校1年生と2年生の総合的な探求の授業で始めたのがきっかけです。企業にも協力していただき、プログラミングの指導を受けながら、MIT App Inventorを使って作っています。その流れで、GSNPの活動にも協力してもらい『ekoroke』を開発しました。まだ実用にはいたっていませんが、どこかで実証実験しながら活用できたらおもしろいと思います」(市毛先生)

デジタル時代の学びとその支援

このプログラムでは、デジタル時代における教育の在り方について議論が交わされました。登壇者は、東京学芸大学教職大学院教授・学長特別補佐 堀田龍也氏のほか、教育系YouTuber 葉一氏・カシオ計算機株式会社 上嶋氏・株式会社Libry 後藤氏・株式会社内田洋行 小森氏の計5名。それぞれの立場からデジタルツール活用の現状と課題、未来への展望について意見を述べました。

 

モデレーターを務めた堀田氏は、GIGAスクール構想による1人1台端末普及の現状と課題や、家庭学習の可能性について言及。続くパネルディスカッションでは、教員の多忙感・テクノロジーに対する意識の差・効果的な活用方法の模索・教育における「平等」の定義など、さまざまな課題が浮き彫りになりました。その上で、「デジタルツールは目的を持って使いこなすもの」「使う側の意識改革が必要」「今は変革期であり、課題を解決しながら使い続けることが大切」などの見解が出されました。

プログラムの最後には、参加者からの質疑応答のコーナーも。「デジタル化によって教育がどのように変化し進んでいくのか」「未来の教育を考える子どもたちにとってどのような学びが必要なのか」など、さまざまな意見が集まりました。

<プログラムに参加した人の感想>

「紙とデジタルのどちらか一方だけを採らなければいけないわけではないと思います。うまく活用しなければただの『鉄板』になるパソコンを、教育現場にどう導入するのかという議論は、学生としてもとても興味深い話でした」(通信制高校3年生)

取材後記

大学のキャンパスで開催されたこともあり、幅広い世代が集まる「学園祭」のような雰囲気もあったTokyo Education Show。どのプログラムでも、ディスカッションや意見交換が活発に行われており、教育や学びに興味のある人にとっては良い刺激となるイベントだったのではないかと思います。次回開催された際には、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

 

取材:大久保さやか・白根理恵/構成・記事作成:白根理恵/編集:大久保さやか

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